つみたてNISAのココが致命的にダメ。下落時に取り返しがつかない危険性も。

私がIFAとして、つみたてNISAを推奨しない理由は山ほどありますが、その中で制度設計上の致命的欠陥とも言えるのが「再投資」「繰り上げ償還」と「受取間際の下落」です。

今回は時間をかけて投資をしたのに無駄になってしまうことがないようにこの3つのリスクについて解説していきます。

 

つみたてNISAから排除された毎月分配型投資信託とは

投資信託(ファンド)は企業と同じく決算をします。年一回のファンドもあれば、年4回や年12回と頻度高く決算を行うファンドもあります。

つみたてNISAという制度を立ち上げる際に金融庁が「資産形成に向かない」と槍玉に挙げていた毎月分配型投資信託という商品があります。

決算頻度が年12回と多い上に分配金を毎回出す設定がされているファンドの事ですが、分配金が頻度高く出る投資信託が別に悪い商品でもなければ、資産形成に向かないファンドでもありません。

分配金とは株式における配当のように決算時に投資割合に応じて分配されるお金のことです。

株式における配当との混同を避けるため投資信託では分配金と呼びます。

投資成果に応じて増えた資金(純利益)から分配される分配金を普通分配、投資の原資を取り崩して分配されるものを特別分配と呼びます。

日本では二つの分配方法を十分に説明をせずに毎月、分配金が受け取れる儲かる投資信託として投資成果に対しての保証があるように誤認させての販売が横行していました。

国内で年間に購入される投資信託の70%(2014年)を占めていたと言いますので、いかにこの状態が異常だったのかが分かります。

つみたてNISAの対象商品の選定ルールでは分配型投資信託の特別分配という仕組みの一点だけを取り出し分配頻度の多い投資信託を対象商品から排除しましたが、この点は根本的な問題を見ていないとして投資経験のある個人投資家のつみたてNISA離れを加速させる結果となりました。

話題となった事から毎月分配型投資信託への風当たりは強く、2017年には毎月分配型投資信託は販売シェアを50%まで減らし、国内で最も資金を集めていた投資信託である「新光・US-REIT・オープン」「フィデリティ・USリート・ファンド毎月分配型」は反転、2016年には1兆円超の資産を誇っていましたが1年で36%資産が流出。

ファンドとして決して悪くはなかった運用実績を誇っていたはずなのに、

今や後発の投資信託にどんどん追い抜かれていかれている状況です。

普通分配は配当に類似した投資成果に応じ支払われる運用益の再分配です。

分配が行われると投資信託における株価である基準価格は下がります。

図は年一回2月頃に分配金が出る投資信託の基準価格のグラフです。

分配金が出たタイミングを緑色の吹き出しがついています。

分配金を再投資(青い線)した場合と、再投資しなかった場合(オレンジ色の線)の

基準価格の差です。

分配金が出るたびに基準価格が下落することが分かります。

 

基準価格が下がるということは投資をした際に購入できる口数が多く買えるので積立投資においては本来有利な仕組みです。

ここで分配された分配金を同じ投資信託に再投資すればいわゆる複利効果で雪だるま式に資産を増やせるサイクルが生み出せます。

 

2017年4月7日に高らかに宣言されたつみたてNISAの概要に触れた森金融庁長官のスピーチでも「個人が投資で資産を増やすための秘訣」と挙げた中で「再投資(複利)にあること」と明言しています。

しかし実際には問題の根本にあった特別分配の投資信託を対象から除外するのではなく、毎月分配型投信という大きなカテゴリーの投資信託全てを除外しました。

結果としてつみたてNISA対象商品には基準価格が高い投資信託、どんどん高くなる投資信託が増え、基準価格が上がれば上がるほど積立投資で買い込める口数は少なくなる環境が作られてしまいました。

 

確かに分配金を出さない投資信託はそれだけでも複利効果があると言うこともできます。しかし投資成果は「口数×基準価格」によって資産評価額は計算される原則を考えれば積立投資では分配金を出す事で基準価格を下げてくれた方が口数は多く購入でき、長期保有でこそ効果を発揮すると言えます。

私が問題だと感じているのはこの分配金再投資という複利効果を国が肝入であるつみたてNISAにおいて認めなかった背景が気になります。

もし机上の空論で安易に分配型投資信託を排して、コストの低い投資信託で長期投資をしさえすれば資産が増えるなどと投資初心者を騙すようなことをあえてやっているとしたらその罪は重いと思います。

尚、現在のつみたてNISAではこのような分配金を再投資するという場合は再投資をした年のつみたてNISAの枠(40万円)を消費します。つみたてNISA口座以外で受け取ると20.315%の所得税がかかります。この時点で制度としての欠陥が明確となっています。

分配金は決算後の純利益に法人税を支払ってかつ残ったお金ですから、投資信託で一度支払ったのに受け取り時に投資家に再び課税をかけるという二重課税を国はしていると言えます。

アメリカではDRIPと呼ばれ再投資される分配金には課税がされない仕組みがあります。

本来であれば何年間非課税というような制度よりも再投資される分配金や株式の配当に税金を課さないという制度を確立する方が投資家にとって資産形成は有利なのですが、何故あえて分配金による再投資(複利)をあえて否定するような方法を取っているのでしょうか。

iDeCoや変額保険の特別勘定では無条件で複利運用がされているだけにつみたてNISAがこの点を揃えずにいる点に不審さを感じます。

 

コストが安すぎて投資信託が潰れる?株価の下落より怖い「繰り上げ償還」

 

繰り上げ償還とは、企業でいえば倒産ということになります。投資信託が決算をするとお伝えしましたが、赤字続きだったり預かり資産が少なくなると投資信託は運用を打ち切りにします。

そして投資信託を解散して、解散した日の基準価格で強制的にその投資信託は売却されます。これが何よりも怖い「繰り上げ償還」です。

モーニングスターでは繰り上げ償還が過去にどれくらいの確率で発生したか、その時の純資産総額がどれくらいだったかを特集しています。

まずは青い棒グラフが新設された投資信託の数です。

赤い棒グラフが繰り上げ償還された投資信託の数です。

緑の線で表されているように投資信託全体の数は増えていますが、2014年以降は繰り上げ償還される投資信託が増えていることがわかります。

繰り上げ償還された投資信託の区分はインデックス型で3.7%、アクティブ型で6.5%とモーニングスターの図ではアクティブ型の投資信託の方が繰り上げ償還されている数が多いように感じられます。

モーニングスターが分母を公表していないので正確なことが言えないのですが森金融庁長官の2017年4月のスピーチではインデックス型はわずが381本ほどですからそのまま分母に数字を入れれば25/381となり、6.56%と実態はもっと増えている可能性が考えられます。指標と連動させるだけの低コストなインデックス型が何故、解散するのでしょうか?

またアクティブ型で同様の計算をすると284/2707本ですから10.49%、繰り上げ償還されるファンドはやはり一定数あり、それはアクティブ型に倍近く多いことは事実として受け入れる必要があります。つみたてNISA対象商品となったアクティブ型に運用実績を求めた点は評価するべきだと思います。

 

また繰り上げ償還された投資信託のうち、預かり資産総額は3億円未満、3〜10億円が最も多いことがわかります。

インデックス型は一般的に低コストで信託報酬が安い傾向にあります。

つみたてNISA対象商品の中での最安値は信託報酬0.16%です。

10億円の資産を集めてもファンドとして使えるお金がわずが160万円(純利益ではなくキャッシュフロー)という事ですから事務所代や人件費、コンピュータなど様々な経費をどのようにして捻出するのか。果たして長期で本当に資産運用をしてくれるのか疑問が残ります。

もし投資信託が途中で繰り上げ償還されてしまった場合、投資家はその時点でその投資信託は売却したものとして扱われます。

それが株価の低調な時期や下落後で評価額が積立総額に満たないとしても強制売却されることになるため、低コストを重視し過ぎると繰り上げ償還リスクをかえって高めることになりかねず、本当に長期投資を前提とするなら低コストすぎるファンドには危機感を感じるくらいが丁度良いでしょう。

信託報酬はインデックスの国内株式なら0.5%以下、海外株式なら0.75%以下…金融庁の定めたインデックス型のつみたてNISAに金融庁が設けた基準です。

十分に安い水準ではありますが、0.3%以下は明らかにやり過ぎと言える水準ではないでしょうか。

また預かり資産が30億超、100億超あっても繰り上げ償還されるという事実はいつでも繰り上げ償還は起こり得ることを投資家は覚悟する必要があることを示唆しています。

 

受け取り間際になってからの下落に対処する方法がつみたてNISAにはない

積立投資(ドルコスト平均法)は負けない投資方法だと誤認している人が少なくないようですが受け取り間際になって株価が大きく下落した時には繰り上げ償還と同じく積立投資でも損失が確定します。

特定口座での投資であれば3年の損益通算が認められますが、つみたてNISA・一般NISAは損益通算を認めていません。

この点に関してiDeCoも理想的とはいえませんが、つみたてNISAよりはかなりマシです。

しかしはっきり申し上げて受取時までのリスク回避を考えれば、実績を考えても変額保険が最強と私は断言します。

 

iDeCoや変額保険に出来て、つみたてNISAに出来ないのが利益確定とリスク回避です。

iDeCoの場合は年金口座内で、変額保険の場合には特別勘定の中で投資信託を売り買いする事が自由に出来ます。

これまで積立投資をして来たものを売却して、その資金を他の投資信託を買い直すのに充てるスイッチングや投資先の比率が崩れていく際にリバランスをする事で資産のメンテナンスが可能です。

例えば受取時期が近づいてきた際に、リスクを抑えて元本確保型(短期金融市場型)に資産を預け替える。

または株式より相対的にリスクが低いとされている世界債券などに資産をスイッチングする事で受取間際になっての下落という損失確定を回避する事が可能です。

またiDeCoは60〜70歳の間に受け取らなければなりませんが、変額保険での運用の場合には契約時に任意の年齢を選択可能です。

途中で絶対に何があっても引き出せないiDeCoではなく、契約者貸付制度や払済保険への変更などが任意で出来る生命保険の柔軟性は長い人生の資産設計をしていく上でかなり重宝します。

万能の資産形成手段は存在しない

尤も変額保険は最初5年くらい、出来れば解約返戻金がある程度貯まる10年内までの期間は我慢の期間です。この短期だけで比べると投資信託への投資の方が資金の流動性(換金性)や利益確定は強いといえ、変額保険が劣る部分です。

そうした中でつみたてNISAの良い点は運用実績があり、かつ販売手数料や信託報酬が低コストのアクティブ型投資信託にスポットライトを当てたことと積立投資という投資の考え方を世の中に広めた点に尽きます。

しかし蓋を開けてみれば複利運用の否定積立投資に不利な運用商品、インデックス型では手数料の安さだけが基準となり、本当に国民の資産を増やそうとしていないことがよく伝わってきます。

投資経験が長ければ長いほどこれらのリスクの危険性を理解しているはずですが、なぜか投資について取り上げているサイトでは「つみたてNISAが良い制度だ」という意見になっています。

本当につみたてNISAが良い制度かは5年後、10年後、20年後にならなければ分かりませんが少なくとも投資の多様性を否定した点でこのめまだと5年も経てば私が今指摘しているような点での問題が浮き彫りになり、制度が廃れていくか改革のメスが入れられるか、新しい制度を再び作ったりして誤魔化そうとすることでしょう。

証券投資のアドバイスをしているから分かるのですが、日本人は与えられることに慣れすぎていて、自分で投資や運用をする事がどういうことか理解していません。

残念ながら日本人でまともに証券を利用して資産を増やせるのはごく一部の人だけでアメリカのように投資リスクを自分ごととして捉えるのには証券の世界のモラルとビジネスモデルが大きく転換しない限りは不可能に思えます。

尤も日本人の気質からすれば与えられた仕組みを活用することには先進国随一の柔軟性がありますので、仕組みを提供できる業界(保険業界)が結局はますます強くなる、ただそれだけのことですが。

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