誰も教えてくれない、つみたてNISA6つのダウト

先日、第1回の『つみたてNISA』を中心としたじぶん年金セミナーを開催しました。

メリットが偏って強調されていますが、金融庁という国の機関が作る制度ですから、

流石というか宣伝に嘘はないけれどそれってつまりデメリットを隠してますよね、

という事をご紹介させていただきました。

参加者の方から確かにそうだよねと感想を頂いた中で最も反響があったのがデメリットのお話です。

 

【定期開催中!】つみたてNISAをはじめとした各種制度・商品について比べて学ぶセミナーです。

 

 

つみたてNISAの制度上の問題点

①信託報酬(コスト)の安いインデックス型で長期分散投資→ダウト

②非課税制度だからお得→ダウト

③一般・特定口座への移管ができる→ダウト

④スイッチングが可能→ダウト

⑤金融庁が認めたファンドである安心感→ダウト

 

これだけで相当なヒントですが、この根幹にある最大のダウトは森レポートのダウトです。

 

森レポートのダウト

 

森金融庁長官が4月に証券業界に向けて発したメッセージ、

森レポートと私は勝手に呼んでいますが、大変素晴らしいものでした。

金融庁のWeb上にも公開され、現在でも誰でも見ることが出来ます。

私はこのレポートが、そのまま『投資の教科書』と呼べる水準のものであると考えています。

大変よく勉強されていて、関心をしたどころか勉強をさせていただきました。

森長官の大改革に私は基本的な方向性で大賛成です。

その一方で誤解、または誤認をさせる投資の基本を理解されていない発言は

やはり官僚という机上の理論で考えているなとも感じます。

 

投資理論の大家バートン・マルキール&チャールズ・エリスの理論

森長官のレポートではP1からアメリカで資産形成思想の大家バートン・マルキールとチャールズ・エリスの

『多くの投資はインデックス(ダウ工業株30種平均やS&P500の指標)に長期では勝てない』という

インデックスの優位性を示す発表をした思想を紹介しています。

 

マルキールがこの理論を最初に発表した作品は『ウォール街のランダム・ウォーク』(1973年刊行)でした。

「それならインデックスへ直接出来ないか」というインタビュアーに「そのうちできるさ」と答えています。

その後マルキールの予言の通り1975年、バンガード社が世界で初めてインデックスに連動する投資信託を販売。

その後、世界的にインデックス型投信が普及していくことになりました。

 

 

そもそも投資というのは、リターンを追求して行うものですから

相場よりも基準価格が値上がりしていくのを目指すのが本来的な行動です。

しかし株式に投資をしようとしても、その株が値上がりするかわからないために、

リスク分散を兼ねてファンドマネージャーへ投資を任せるのが投資信託の基本的な考え方です。

この投資して資産を増やそうという行動のダイナミズム

現在でこそアクティブ型と呼ばれていますが、マルキールが『多くの投資』と呼んだ

投資信託の原点であり基礎でもあります。

 

マルキールのこの考え方(ランダムウォーク理論)の根底にはアメリカという国の投資環境が多分に影響しています。

下記は1980年から2017年までのダウ工業平均ですが、ご覧の通り見事なまでの右肩上がりの相場です。

これは1900年までさかのぼっても基本的に変わっていません。

ブラックマンデーやリーマンショックがあっても、結果的に長期ではずっと右肩上がりの相場です。

リーマンショックでの下落でさえ、米国株式市場は5年で元の株価を取り戻し、再び上昇基調へと伸び続けています。

このためアメリカでは長期投資はインデックスに連動する投資が強いと考えることができます。

 

 

この事実に早くに気づいた一人が世界一の投資家と言われるウォーレン・バフェット氏です。

彼は11歳の時に初めて株式を購入し、下落に耐えられず損切りをしました。

売却をした後にその企業の株価は上昇をし、自分の当初の買値よりも高い値をつけた経験から

投資には忍耐(時間)が必要」というご自身の理論を身に着けたと言います。

 

森長官がつみたてNISAの根底に据えている[個人の資産形成には長期分散投資]という理論は

このアメリカでの理論をそのまま日本に当てはめようとした考え方です。

 

森レポートの中で

「アメリカでは、企業のファンダメンタル価値を評価する投資家層が厚いため

市場の効率化が進み、インデックス戦略が有効に機能している」という文面から始まる一文があります。

ファンダメンタルとは株式などの投資においてその国の経済や企業の株価などが中長期的には

どの方向へ進むかという考え方です。

ここで示しているのは先に挙げた[ダウ平均は中長期的にはずっと右肩上がり]がこの考え方です。

 

アメリカではこの「インデックス(指標)は中長期的には右肩上がりだから、

(ダウ平均を指標とする)インデックス型に投資をしていれば中長期的には資産は増える」という

マルキールの理論を多くの方が実践をしている人たちが大勢いるということを示しています。

 

森レポートのダウトとは

アメリカではインデックス型への投資が中長期的には資産を増やすのに、

非常に有利な戦略であることを認識し、支持している人が多いことに続いて森長官は次のように発言しています。

「10年以上存続している、日本の株式アクティブ型投信281本の過去10年間の平均リターンは

信託報酬控除後で年率1.4%であり、全体の約三分の一が信託報酬のリターンがマイナスとなっていました。

ちなみに、この10年間で日本平均株価は年率約3%上昇しており、

インデックス投信が一般的にアクティブ型投信に比べリターンが高いとのマルキールとエリスの主張は、

日本株投信についても当てはまるように思えます。」

 

日本のアクティブ型投資信託が手数料をたくさん取っているのに、

手数料に見合ったパフォーマンス(運用結果)が出ていないことを問題にしています。

手数料を差し引くと実質的に日経平均(日経225)を下回ってしまうなんて、なんのために投資をしているのかの

根源にかかわる問題ですから、よくぞ暴露してくれたと思いますし、

それを改革しようとメスを入れたことは大賛成な点です。

 

納得できるパフォーマンスさえきちんと出してくれるなら、信託報酬(手数料)高いのは容認できますけどね。

結果を出せていないのに手数料が高いことが、日本の投資信託の根本的な問題です。

 

そし三分の一がマイナス運用となっているということがさも問題のように指摘していますが、

言い換えれば三分の二はプラス運用であったことを意味しています。

投資においてそれはかなりの勝率と言えないでしょうか。

 

では森レポートのダウトとは何でしょうか?

繰り返しになりますが、この部分です。

「この10年間で日本平均株価は年率約3%上昇しており、

インデックス投信が一般的にアクティブ型投信に比べリターンが高いとのマルキールとエリスの主張は、

日本株投信についても当てはまるように思えます。」

 

日経平均がこの10年で年率3%で上昇をしている…

10年前の日本は就職超氷河期と言われた時代です。

いわば日本経済がバブル崩壊後の株価が底を打ったのが2002年でした。

そこから少し盛り返したいざなみ景気(2002年2月から2007年10月)がこの指摘している10年前です。

(私はこの当時、就活生~社会人3年目でした)

株価はそこからサブプライムローン問題、リーマンショックをきっかけに再び下落しました。

再び底値を迎えたのが2008年、盛り返そうという微増の中で起きたのが2011年の東日本大震災で

日経平均は3度目の底値を経験しています。

現在はそこから再びの上昇基調の流れの中にいます。

グラフにすると1980年~2017年は次のようになります。

底値からの回復ですので年率3%の上昇はウソではありません。

ですが中長期的には右肩上がりで成長していくというマルキールの理論の前提はグラフに線を引くとこうなります。

これは前提としている環境が同じと言えるでしょうか。

またこれをもって『インデックス型がアクティブ型よりも中長期的に有利である』という理論は乱暴です。

日本のアクティブ型投信の手数料とパフォーマンスの問題はその通りですが、

ここでもし「インデックス型の方がアクティブ型よりも中長期的には有利」ということを示そうとするなら

日本のインデックス型投信、特に金融庁が示している信託報酬が一定以下の商品のパフォーマンスと、

アクティブ型投信の金融庁が推奨する信託報酬が一定以下の商品のパフォーマンスを同一期間で平均利回りが何%だったのか、

数字で証明しなければいけないところです。

三分の二のアクティブ型のリターンと三分の一のマイナス運用の損失を含めた数字と

インデックス型投信全体または日経平均の10年で年率3%という数字の比較がされていません。

 

アメリカでの「アクティブ型はインデックス型に中長期的に上回ることは稀」という理論が

日本にも当てはまるというのも微妙です。

日経平均は20,000円~23,000円を境目に一つの天井(分厚い雲)をもっている様に

バブル崩壊以降は一度もこの天井を抜けてきていません。

日本の株価が上昇基調だった戦後1945年~1989年の絶頂期に日本では何が起きていたのかといえば

高度経済成長と人口ボーナスです。

生産年齢人口と呼ばれる就業人口が日本で最も多い時期に日本は株価がピークを迎えています。

このグラフから分かるように1985年~1990年が最も働く人が多かった時代です。

(全体の人口ピークは2004年)

一方で生産年齢人口が減少を始めてからはどうでしょうか?

株価がバブルのピークを回復をすることのないまま下落し、少し持ち直し、再び下落して、

また少し持ち直して、また下落して…一向に回復していません。

バブル期のピークからおよそ50%、経過年数28年というのが現在の日経平均です。

1980年の株価から比べればそれでも2.7倍と読み取ることもできますが、そこまでにかかった年数は37年です。

 

アメリカの人口は下記のようにまだまだ増えています。

しかも全体の人口だけでなく、生産年齢人口も増えています。

 

株価、特に日経平均やダウ工業平均、S&P500などの指標(インデックス)はその国の経済状況を表します。

そしてそれは世界でも同様です。

世界的な株価の指標の一つである

MSCI World Index(日本ではMSCIコクサイインデックスと呼ばれることも多い)なども

世界の人口が増えていれば、その増えている地域の株価が上昇し、

世界全体の株価指数も上昇するのは経済の道理であり、大原則です。

世界の人口は現在約74億人です。

2050年までに90億人を超え、2100年には112億人という統計があります。

人口統計は世界で最もブレの少ない統計ですので、大災害や疫病・飢饉などの

世界的な事態が起きない限り「増えていく」ことが変わりません。

 

中長期で世界の株式に投資をするのにインデックス型投資信託という選択肢はかなり賢明で堅実な選択肢です。

一方で「アクティブ型はインデックス型に中長期では勝てない」とマルキールは一言も言っていません。

「多くの投資は、インデックスを上回るパフォーマンスを出せない」と発言しています。

多くの投資=アクティブ型ではないですし、多くの投資なので一部の優良ファンドは

それを上回るパフォーマンスを事実出していることを認めています。

またインデックス型投信ではなく、インデックス(指標)としています。

インデックス型投資信託はインデックスと連動する値動きを目指すもので、

完全に連動するものと、類似した動きをするものなどさらに細かく分類されます。

 

マルキールの理論はアメリカのダウ平均だからこそ成り立つ発言であり、非常に重要な考え方ですが、

日本が『貯蓄から投資へ』を実現するために生産年齢人口の世代が資産を形成していくためには

資産配分(アセットアロケーション)の重要性であるブリンソン氏の『アセットアロケーション』という考え方など

様々な理論の日本という投資環境に合致した考え方やローカライズも、もっと取り入れていくべきだと思います。

何でも欧米の猿マネではチョコレートのキットカットでさえ、あんなにヒットはしませんでした。

大切なのはその国の習慣や考え方に合わせてローカライズすることです。

 

販売手数料の高コストは是正されるべき問題でしたし、良い契機になったと思います。

その一方で銀行窓販などでの手数料開示などは明らかにやりすぎです。

それはバックドアなどの次年度や別名目のフィーを新たに生むイタチごっこしか生みませんし、

そもそもどんな業界に販売している商品の原価や利益率をオープンにしている会社があるでしょうか。

「FD(フィデュ―シャリーデューティー)」、『顧客本位』の旗印のもとに、

金融業界に自己改善と自己反省を促して、金融処分庁から金融育成庁へ舵を切ったのは良いとしても

本当に日本の投資環境において顧客、投資家の資産形成を促そうとするには

つみたてNISAという制度はあまりに稚拙な落とし穴だらけです。

 

投資には損失はつきものである、という投資の根幹にもフォーカスして

制度のさらなる改善を希望します。

(ですが、森長官の大改革には基本的には私は大賛成です。応援しています!)

 

繰り返しになりますが、きちんとした資産形成をしようと思ったら

ご自身の頭でメリットとデメリットを比べてみてください。

つみたてNISAは一つの手段であり、きっかけであり、選択肢にすぎません。

皆さんのセミナーへのご参加もお待ちしております。

 

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