つみたてNISA誕生秘話、まるでトクホのような危険性もある制度

先日、つみたてNISAが誕生するまでの金融庁の有識者会議やワーキンググループでの資料を振り返っていてつみたてNISAがどのような背景から誕生したのかを改めて振り返る機会がありました。

時系列順に見ていきたいと思います。

 

2016年8月31日、平成29年度税制改正要望項目での「積立NISA」草案

平成29年度税制改正要望項目として「積立NISA」について草案が出されています。

ここで既に現行一般NISAとの併用制か選択制、そして現行NISAのロールオーバーの上限撤廃、積立NISA対象商品のスクリーニングが行われることが明記されています。

また投資上限がつみたてNISAで実際に行われた年40万×20年ではなく、年60万円×20年であったことなどは興味深い点です。

 

また平成35年(2023年)までにNISAの恒久化について話し合うということも書かれています。

 

2016年12月8日、自民党・公明党「平成29年税制改正大綱」

平成29年度税制改正大綱」のP4~P7の金融・証券税制の中の[延長・拡充]において積立NISAの制度新設が盛り込まれました。

この際に積立NISAの商品選定の基本要件、積立NISAと一般NISAとの併用ではなく選択制、一般NISAのロールオーバーも上限を撤廃することなどが定められています。

2016年12月22日、積立NISA拠出枠が40万円に変更

年の瀬も迫った2016年12月22日、平成29年度税制改正の金融庁管轄の変更点としての資料には平成30年1月~積立NISAの導入を検討している旨が記載されています。

そして拠出額は年40万円となっています。(一体、何があったのでしょうか?)

 

2017年2月24日、WGでの提示

平成29年2月24日、金融庁が「長期・積立・分散投資に資する投資信託に関するワーキング・グループ」を開催しました。

これまでの提言に出てきた資料が再び登場します。

ワーキング・グループ(WG)で使用された資料では米国・英国・日本の金融資産の現状を振り返り、日本が先進国の中で投資・資産形成において大きく出遅れていることを確認しました。

金融資産のうち52%が現預金、投資性の資産が圧倒的に少ない現状は株式や投資信託などの直接投資だけでなく、各国中央銀行の公表している数時~米国で普及している確定拠出年金(401k/IRA)や英国で普及している変額保険(ユニット・リンク保険)などの間接投資を含んでの比較がされました。

投資による資産形成の定着には米国での確定拠出型年金(IRA)や英国でのISA(日本のNISAの原形)など政策的な後押しが必要であることが提言されています。

積立投資による長期投資、分散投資の考え方を根本に積立NISAの創設を掲げています。

その中で現行NISAの課題も指摘しています。

平成28年度9月末時点でNISA口座の総口座数1,049万口座、

買付額も順調に増えていると評価している一方で、積立投資に利用されているのは1割程度の117万口座。

 

口座を開設しただけで投資を一度もしていない非稼働口座が53.5%(528万口座)もあり、積立投資についての認知が進んでいないことが指摘されています。

平成29年3月30日、WG報告書より

 

 

ワーキンググループの報告書によると積立NISAで考えられる資産形成は次のような前提があるそうです。

 

必ずしも積立NISAで保有する商品のみで分散効果の実現を考えるのではなく、個々の家計の金融資産のポートフォリオ(預金を含む)を全体として見た際に実質的に分散が図られていることが重要と考えられる。

現預金を十分に持っている家庭においては株式のみを投資先とする投資信託を持つことで投資のバランス(ポートフォリオ)を考える必要があるとしています。

また地域分散の観点からも「国内資産」だけでなく、「海外資産のみ」の投資信託が組み入れられている理由にも触れられています。

 

家計金融資産には強い円バイアス*1がかかっていることを踏まえれば、「海外資産のみ」に投資をする投資信託を対象に含めることには合理性が認められる。

*1 バイアス=偏り

日本人は円に偏って資産を保有しているため、分散投資という観点から海外資産への投資をもっとした方が良いのではないかということです。

多様な投資に対する価値観があるので「国内外の資産を組み込んだパッケージ型」(バランス型、2~8指数などの複合型)だけでなく、「国内資産のみ」「海外資産のみ」を組み合わせられるようにするとしています。

 

2017年4月7日、森金融庁長官の講演(森レポート)

森金融庁長官のこのレポートは日本の金融行政において大変意義のあるレポートです。

何故なら金融庁長官が自ら金融庁のこれまでの活動の非を認め、また日本の金融業界の課題を指摘して、変わらなければいけないと明言したためです。

指摘されている内容は実に多岐にわたります。

 

・日本にまともに資産を増やせる投資信託が殆どない、

・積立NISAの条件に現状で当てはまるのはインデックス型、アクティブ型合わせて約50本、全体の1%だけ。

・販売会社の系列会社の商品を82%が販売し、売れやすくかつ手数料を稼ぎやすい商品を作っている現状は「顧客本位」と言えるのだろうか?

・テーマ型投信、毎月分配型投資信託、販売手数料や信託報酬などの見えにくい手数料稼ぎ(利益相反)が横行していないだろうか。

 

FPの意見

 

投資哲学がインデックス型投信に偏っているのは投資の専門家ではないためやむを得ないとしても20年遅れているとされていた日本の投資に対する意識をアメリカにおけるブリンソン・シンガー・ビーボワー氏が『Determinants Of Portfolio Performance』Financial Analysts Journal(May 1991)を発表した頃まで少なくとも針を勧めてくれたことは事実です。

最も世界では既にインデックス型に投資をしておけば良いは過去のものとなっています。リーマン・ショックによってその投資方法ではリスク回避として十分ではないと証明されたからです。

そうして再び脚光を浴びているのがアクティブ型投資信託なのですから、なんとも皮肉なものです。

 

今回、つみたてNISAの変遷を振り返って改めて感じたことは国としての金融政策の中で「つみたてNISA」が大変重要な位置づけで始まった事実だけが先行して、実際の投資初心者には「つみたてNISAは良い制度」、資産形成にとりあえずやっておけば良い制度、金融庁が認定した商品だから安心といった誤認がずいぶんにあるのではないかという懸念です。

 

特に平成29年3月30日WG報告書にあるように「必ずしも積立NISAで保有する商品のみで分散効果の実現を考えるのではなく」という部分は投資の基本的な考え方としてもっと周知される事実であり、制度が始まってからの半年間を振り返ってもこの点について十分に議論又はアナウンスがされているのかといえば決してそうではないと感じるところがあります。

金融庁が認めた金融商品という言い方も語弊を招きかねません。

たとえば皆さんがスーパーやドラッグストア、コンビニエンスストアの飲み物のコーナーでこんなパッケージの商品を見かけたとします。

 

<乱立する特定保健用食品トクホ認定の商品>

消費者庁が認めた商品なんだから「体脂肪を減らす」とか「血糖値を下げる」など健康診断などで指摘を受けた方からすれば如何にも効果がありそうと感じるのかもしれません。

しかしこれらの効果を発揮するのは健康な人であって、持病や既に体に何らかの疾患を持っている人や予備軍にはその効果は殆どないか、あってもごくわずかだとされています。

パッケージは小さくこんな事が書かれています。

つみたてNISAの届出一覧対象商品も同様と私は考えています。

トクホのコーラとかお茶ばかりを飲んでも健康にはなりません。

つみたてNISA対象の商品だけに投資をしていても資産は十分に増やせるという訳でも、資産を守れるという訳でもありません。

あくまでも皆さんが持っている金融資産の一部としてどう活用するのか。

その一部として一般NISAやつみたてNISA・iDeCoがあると考えれば、

つみたてNISAだけに投資をするということが、

「トクホの商品だから飲んでさえいれば大丈夫」という人の行動と変わらないことに気づくでしょう。

 

いやいや、食事や運動など他の部分もっと大事にしようよっていう話です。

もっともでは、その残りの部分や全体の金融資産のバランスを見れるIFAやFPが世の中にどれだけ存在するのかといえば殆どいません。

IFAだけをやっている人は証券の手数料ビジネスですから結局のところ証券外務員と扱えるラインナップが増えただけです。

FPだけをやっている人は資産バランスは把握できている場合が多いでしょう。しかし投資経験があまりになさすぎる…。

しかし両方をやっていて私は感じます。

相談をボランティア(無償)でやるのは流石に難しいです。

証券(IFA)だけ、保険(FP)だけでも難しいのに…国がお給料出してくれるなら意味あるのですがどうして「金融資産全体のバランスが大切ですよ。つみたてNISAだけでなく他の証券投資や保険を活用したバランスの良い投資をしましょう」って金融庁から言わないのでしょうか?

 

子どもには「お肉だけじゃなく、野菜も食べなさい」って言えるのに、

制度を始めたら「つみたてNISAが良い制度ですよ、始めた方がいいですよ」という宣伝ばかりでその根本はどこへ消えてしまったのでしょうか?

これは金融庁と資産運用業界、証券業界の大きな功罪だと私は思います。

 

 

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