早期解約に対する契約者の権利と担当者のペナルティ

社会人の基本であるホウレンソウ。

これは何も社内や取引先などに限った話ではありません。

人と人がコミュニケーションを円滑に進めるために省略してはならないものです。

先日久しぶりに保険契約の早期解約がありました。私は契約者に貯蓄・資産形成の保険商品は絶対に5年から10年は払い続けることを確認をして契約を取り次ぎます。キャッシュフロー分析をして、継続可能な無理のない保険料で契約をしてもらいます。

ライフスタイルの変化というのは早々急激には起こりません。転職をした、役職が変わった、転勤をしたなどの不測の事態にも耐えられる支払可能額を設定します。

厳密な分析と預貯金などの蓄えの状況から将来資金として必要な資金を確保するために保険や証券を組み合わせたりするなどの提案を行います。

 

 

私が厳密な分析と契約の継続を契約時に約束もらうのは早期解約が契約者にとっての不利益であり、また私たち保険募集人にとっても大きなペナルティを課せられるためでもあります。

解約は保険契約者の権利ですから保険募集人には解約を止める権限はありません。

しかしそれによって被る保険募集人の損失については話が別ということを今回は書きたいと思います。

実はこの記事を書くにあたってネットで保険の早期解約についての記事を調べたところ古い情報しか載っておらず見当違いな投稿も散見されましたのでこれについても触れたいと思います。

また過去にもこの件については記事を書いていますので併せて読んでいただければと思います。

 

お金の使い方に課題のある家計のコンサルティング

 

老後資金の問題は特に切実で、多くの方に取ってそれをどう解決するかは悩ましいものです。

夫婦共働き、それも夫の収入だけで生活を切り盛りしていて、奥様の収入はほぼまるまる蓄えられている家庭のようなケースでは課題を見つけやすく、提案もスムーズにできます。

しかし片働きだったり家計簿をつけられていない、収支感覚が麻痺している方などの場合にはたとえ収入があったとしても、将来必要となる資金を十分に確保することはかなり困難です。

ヒアリングした内容を預かって分析をして、継続可能な積立額や預貯金を考慮して、かつ将来資金を確保できる運用を考える…人によっては億単位の老後資金が必要となることもあります。

生活の質を落とすことは容易ではありません。老後に収入が途絶え、貯蓄を取り崩していくだけではもはや一般の方でさえ大変な時代に支出の多い家庭では尚のこと生活の質を落とす、支出を減らすことは大変なストレスになってしまいます。将来資金の確保を早いタイミングから備えていくことが求められます。

 

数日かけて分析をして、預貯金などからの移し替えを含めて継続可能なプランを設計します。

そこまで厳密に分析を行なっても年に2〜3人くらいは解約をされる方がいるのですが、代理店に出てからの約2年、早期解約をされる方の100%がお金の使い方に課題のある人でした。

お金の使い方に課題があるとは借金があって返済に追われていたり、浪費グセが抜けない人だったり、目先のことしか考えずにお金を使ってしまう方々です。

 

周囲の人に相談をしてそんなにみんな入っていないと担当者へ相談せず保険解約

 

今回の解約をされる方も支出が多く、また解約に至るまでのホウレンソウがありませんでした。

このホウレンソウは顧客と保険募集人の上下関係ではなく、人と人とのコミュニケーションの話です。

支出が相談された当時よりも更に増え、カード決済が家計を圧迫して奥様に怒られたというのです。

そのような事もあろうかと一つの契約ではなく複数に分けて契約をしていました。しかし保険契約の一部が失効しました。

連絡を取り復活の手続きを含め契約内容を見直したいとの確認を取ったのですが、日程の返事を待っている数日の間に、分けていた別な保険会社の契約の解約について保険会社のカスタマーセンターへ入りました。

連絡がいつまでも来ず、相談日程が決まる前に残りの契約も解約されて、その後でこの日が良いという日程の連絡が来ました。

 

“私はあなたの担当を続けたくありません。”

 

明確にこの方に私の意思を伝えました。

契約者はビックリされていましたが、当然です。

ホウレンソウがありません。

相談の前に解約をされているのですから、解約が何を意味しているのか理解されていません。

 

契約者は職場など周囲の人に相談をして、そんなに保険に入っている人は誰もいないことを理由に、また支出が増えてしまい契約内容を見直しする理由で解約手続きを担当者を経由しないで行いました。

これは顧客と保険募集人との関係性において関係性を破綻させます。

第一に保険というのは非常にパーソナルな要素が多いものです。年収も年齢も家族構成も生活水準も異なれば、信条や価値観も嗜好も将来に対するお金に対する考え方も一人として同じ人はいません。他の人がこうだから自分も…とはならないものです。

第二に掛け捨ての保険と貯蓄・資産形成の保険は保険料が全く異なります。金額だけで比べれば掛け捨てだけに加入している同じような家族構成や貯蓄・年収の人でも何倍にも保険料の差は広がります。

ましてや老後資金の積立投資、子どもの進学時期までに備える計画を希望した訳ですから月々の収入からだけでなく預貯金から少しずつ保険料ときて移し替えて払っていくことも組み合わせてやっていくのです。

支出が多いからこそ早くに手を打たなければならないのですから、また保険料を貯蓄から移し替えていくのですから他の人との比較に意味がないことを当人が理解していません。

第三にヒアリングから分析・提案、契約に至るまでに契約者と保険募集人としてお互いに確認をしながら進めてきたプランを上記のような保険に詳しくない人の意見を尊重するということは、保険と資産形成の担当者は私ではなくて良い、他の人の意見に賛成だ、私の提案(契約内容)に不満である、私には相談をしたくないと言っていることと同義になります。

私たち保険募集人には早期解約によるペナルティが課せられる

 

早期で解約をすると貯蓄性・資産性の保険とは言え契約から1年未満では契約者が返戻金を全く受け取れません。

契約者からすれば自分が損をするだけ、という感覚での解約だったのでしょう。

また加入し直す時に相談をすれば良い。

 

インターネット上には早期解約による保険募集人へのペナルティについて保険会社から支払われた報酬の戻入があるだけだから気にせず解約をすれば良いと勧める書き込みもあります。

驚くべきことに最後のは保険代理店に所属していると名乗る方からの投稿ですが、本当に保険代理店の方なのでしょうか?

だとしたら来店型(保険ショップ)や固定給制の代理店の方かもしれません。またはコンサルティングや分析などせずに保険提案をしている人かもしれません。FPや保険募集人の仕事を誤解している人かもしれません。なりすましかもしれません。

 

保険代理店による委託契約(契約があった時だけ報酬を支払う)が禁止されましたが、保険募集は原則として現在もフルコミッションの業界です。

自分の収入は自分で稼ぐ…顧客のニーズに合った提案をすることは当たり前です。

ヒアリング、リスク分析に始まり、顧客が継続を出来る保険料への調整、ライフプランの分析、家計の見直し…これらは全て無償でしょうか?

一人の顧客に初回面談からヒアリングで2時間、持ち帰って分析に3時間、リスクに応じた保険設計に2時間、提案に2時間、手続きに1時間、契約内容をまとめ証券ケースを用意するのに1時間…これらが全て無償で顧客は受けているというのはあり得るでしょうか?

保険契約は契約者とその受取人のためのものです。

しかし保険募集人はその提案のために時間を割き、手続きをして得る対価としての保険料からの報酬を通常は3年から5年かけてストック収入(毎月少しずつ入ってくる収入)として回収します。

これが契約者の事情によって失効・早期解約をされると何が起きるでしょうか?

保険会社によっては毎月の保険料から少しずつ支払われて来た報酬を、全額一度に返金させられます。

入ってきた時のように毎月少しずつ差し引かれていくのであれば保険募集人は他の報酬と相殺をしながら顧客に新たな提案を行っていけます。

ところが戻入というのは一括で報酬を返すことになるため、数ヶ月分の報酬が100%戻入されるというのは金額にも保険内容にもよりますが月々2万円の保険料で10ヶ月継続だと戻入はパートタイムの方の月収規模月々4万円なら若いサラリーマンの1ヶ月分の給与に相当する額になります。

これがフルコミッションの保険募集人に戻入されると仮に30万円の報酬(最低賃金+業績給)をもらっている場合、給与はマイナスになります

12ヶ月経過していれば良いのかといえばそうではありません。

会社によっては1年以上経過をしていても報酬の80%以上払い戻しをさせる保険会社はかなりあります。ということは20%受け取れるのではなく、80%を一括でマイナス報酬として差し引かれるわけですから明確なペナルティと言えます。

36ヶ月でも会社によっては50%戻入などが課せられます。

もし保険料が更に大きいとすればその負担は更に大きくなります

フルコミッションの保険募集人の場合には最低賃金を含めて自分で稼いで会社経由で自分で受け取っているだけですから、支払われた報酬(最低賃金+業績給)から戻入額が引かれます。

しかも戻入は会社に入れた保険代理店の分もマイナスになりますから保険募集人に身入りしていないマイナスまで保険代理店の報酬体系によっては保険募集人の支払後報酬から引かれます

そしてここまで話してきたように相談・分析・提案・契約・保全…

失効直前の契約の場合には未納連絡や払込確認などの作業に費やしてきた時間も対価も全てマイナスされます。

受け取った報酬から払い戻されるだけ?

いえ、その考え方は明確に誤りがあります。

 

保険募集人は契約までに背負っている負担を受け取る権利があります。

契約者はその契約をしたということは間接的に保険募集人に保険料から相談料を支払うことに同意したといえます。

それを契約者が契約者自身の都合のために解約するのは契約者の権利ですが、早期解約をすると、その担当をした保険募集人はその顧客のために行ってきた様々な全てを一方的に何の通知も予告もなく無報酬にされ、契約時から全額一括で保険会社に吸い上げられます

時間は戻ってきません。これを強制的に、一方的に今月の報酬はありませんと何の通知もなく告げられる。これが契約者が担当者を介さずに解約を行った際に受ける戻入というペナルティです。

保険業界の悪しき習慣であり、本質的には契約者が支払うべき相談料・提案料・顧問料・締結に対する対価を支払っていないのに「保険契約は契約者のもの」という過剰な顧客本位主義(聖域)によって保険募集人に押し付けられている問題です。

保険会社が戻入を請求すべきは本来的には契約者自身であり、解約をした契約者にそんなことは課さないというのであれば契約者に課さないものを保険募集人に課すというのは保険会社の横暴です。

保険代理店というビジネスは慈善事業ではありません。また保険募集人もボランティアでお金の相談をしているわけではありません。

お金が稼げるから仕事をするのではなく、顧客のニーズに合った提案をでき、顧客に喜ばれたその先に報酬をもらえるから辛いことがあっても頑張って働くのです。

インターネット上の書き込みのように戻入は受け取った報酬から払い戻されるだけだと言えるのでしょうか。

既に書いたようにヒアリング・分析〜契約・保全などの対価はどうなるのでしょうか?

顧客の意向が契約後に変わった、私の提案が顧客に合わないものだったとしてもこの対価は支払われるべきです。

つまり戻入される金額は契約者の一方的な解約によって保険募集人が受けた損害として賠償請求することが可能な問題だと考えています。

当然、裁判を通してやるほどの事ではない少額な話でしょう。拒まれれば話は別ですが。

 

何故、インターネット上では早期解約は戻入されるだけと軽く扱われるのか?

 

日常的に保険募集人は手数料を沢山もらっている、貰いすぎていると考えている多くの人たちがいます。

しかし私はその考え方も違うと思うのです。

保険募集人はフルコミッションで、個人事業主です。事務所代(座席料)、コンピュータ代、通信費、印刷コスト、郵送コスト、交通費にお土産、お茶代、契約に至るまでにサラリーマンには想像もつかないようなコストを背負っています。

契約が預かれなければ報酬は数ヶ月無報酬、契約成立の翌々月下旬にやっと受け取り始められるのです。

保険会社や商品にもよりますが仮に契約者が保険料を1万円支払ったとして報酬(コミッション率)初年度50%、2〜5年目は10%の保険商品を契約したとすると年間では初年度6万円(月5,000円)、次年度は年12,000円、月1,000円の報酬が入ってきます。

月5,000円の報酬のためだけに顧客のコンサルティングを行う保険募集人はいません。

少しずつしか報酬は入ってこないので保険の仕事で収入を得ることはこれが月収に匹敵する収入になるまでの労力がかかることは想像できるでしょう。

 

また初年度の報酬が大きいのは新契約に最も労力とコストがかかるためです。言い換えれば保険募集人は初年度の報酬を契約後のアフターフォローのためにある程度残しておかなければなりません。

多くの保険募集人は先に挙げた様々な立て替えている様々なコストや顧客と出会うまでの労力をかけて得る報酬が月割で入ってくる時間と労力を要する仕組みで働いています。

これをサラリーマンの給与と並べて比べることに日本人のお金に対する浅はかさを感じます。

というよりもこれがどれだけ大変で、出ていくお金のコントロールをしながら保険募集人が働いているか想像もしていません。

そんなお金がかかっていることを理解していないで金額や率だけを見て言っている者までいるのです。

保険代理店(所属会社)に支払われる分や諸経費を考えれば働く時間の自由と固定給ではない頑張ったら頑張った分だけ青天井が魅力な仕事です。

ストック収入を積み重ねていき、長くFPとして働くためにはこの資金を出来るだけ積み上げていく必要があります。

 

ピカソの40年と30秒、時間の重み

 

相談やコンサルティングなどなく報酬がこっちの方が高いからと保険を勧めているのであれば、また顧客がそれに応じるのであれば保険募集人の報酬はもっと少なくて良いでしょう。しかし提案の根拠となるヒアリング・分析などを経た場合には専門職としての知識と経験が求められます。

画家のピカソが有名になった後でカフェで大ファンだという女性に求められて紙ナプキンに絵を描きました。

30秒ほどで描いきあげたピカソに対して女性は絵のお礼として代金を支払おうとしました。

ピカソが提示した金額は100万ドル(約1億円)だったと言います。

女性は高額すぎる金額の提示に抗議したそうです。

たった30秒ほどで紙ナプキンに描いた絵が100万ドルだなんてあり得ないと。

しかしピカソは「この絵は私の40年の画家人生を経て描かれるようになった絵ですからそれくらいの価値はある」と語ったそうです。

 

コンサルティング料は解約したら払わなくてよいのか?

 

顧客からの依頼に基づきコンサルティング・分析・提案を行うのは無償でしょうか。

契約者が継続できるように、何時間もキャッシュフロー表とにらめっこしながらさまざまな数字に頭をねじり、将来も安心してもらえるようにあれこれ親身になって考えた募集人はどうでしょうか。

顧客と笑って迎える未来を一緒に話し合って提案をした募集人が相談日程の返信を待っている最中に、解約通知を受け取る保険募集人の顧客に対する気持ちを理解できるでしょうか。

資金の問題もそうですが、虚しさと憤りと、顧客へのホウレンソウのないことへの嘆きと…顧客からハシゴを無為に外される気持ちが分かるでしょうか。

知らなかったの一言ではすみません。

誰がなんと言おうと保険会社への戻入は明確なペナルティです。

単に報酬の戻しという意味にとどまりません。所属する代理店へもこの募集人は早期失効させたクォリティが低い募集人だと評価されます。

継続できるように考え、契約者と合意した内容なのにこの募集人の提案が悪かったとされます。事情書の提出を求められます。

 

保険募集人の提案が悪かったのでしょうか?

保険募集人の世界、FPの世界は実力主義です。

契約件数や契約高、継続率などの結果でしか語られません。

世の中の多くの保険募集人はきっと自分が泣きを見るだけだとこの戻入を自分の身銭を切って補填します。

それは保険募集人としてのプライドが低いからです。

大した分析もコンサルティングもしていないか、提案や契約に対するコストもかかっていないか。

仕方ないと泣き寝入りをしているにすぎません。

しかし善意の保険募集人が今日も全国で智慧のない便所の落書きのような知恵袋などを鵜呑みに早期解約の煽りを受け、

仕事を無報酬にされるのは到底納得できるものではないでしょう。

 

手数料は悪でしょうか?

この戻入によって保険会社に支払われる賠償請求は強制徴収です。

この契約者が負担をしないとしたらこの煽りを受けるのは私個人です。

そしてそんなことを私は絶対にしませんが、これを穴埋めするために他の相談者に報酬の多い商品を提案せざるを得なくなる保険募集人さえいるのです。

こうして顧客本位という名の宝刀が振り回され、本当の顧客本位からかけ離れていくのではないでしょうか。

私がそうならないのは顧客本位の提案をしているからです。

本当の顧客本位を求めるのであれば、契約者が保険募集人に生じさせた損失を、保険募集人個人が契約者に賠償請求させることも含まれるのではないでしょうか?

顧客保護と顧客本位は別物です。今の日本の綺麗事だけのは顧客保護主義であり、顧客本位ではありません

保険募集人に押し付けられている戻入、金融庁は明確に保険会社に指針を出すべきです。

私はホウレンソウが人と人とのコミュニケーションにおいて何よりも大切だと考えています。

早期解約であっても事前に報告・連絡・相談をして、解約に至る顧客とはその後も親しくお付き合いをさせていただいていますが、

順番をすっ飛ばして損害を与えた方とは賠償請求を行い、支払って貰い、今後の担当を引き受けないと考えています。

損失は顧客に埋めて貰います。

私は顧客の払うべき負担をただ請求するだけです。

顧客保護ではなく、顧客本位とはそれによって支えられている保険募集人個人の財産を侵して良い理由にはなりません。

 

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