法人保険の脱税行為に金融庁と国税庁が動き出した?フェニックスの業火に焼かれて退場するのはあの会社?

金融庁が企業の決算対策として保険料の全額または半額を経費参入として認めている商品に対して警鐘を鳴らしているらしいです。

ここ数日、当ブログの法人保険の決算対策についての過去の記事のアクセス数が増えたので改めて法人保険の何が問題になっているのか改めて話題の”プラチナ系”の現状と歴史を振り返ってみたいと思います。

 

朝日新聞の記事の引用

 

「節税保険」実態解明へ 金融庁、商品設計を問題視(朝日新聞デジタル)

 

生命保険各社が「節税」をアピールして中小企業経営者に売り込む保険について、金融庁が商品の設計などを問題視し、実態調査に乗り出した。保険料支払いで課税所得を減らし、将来解約すれば保険料の多くが戻って節税効果を上げる商品。最近は保険会社の営業が過熱しており、金融庁は保険の趣旨を逸脱するおそれがないかも調べる。

大手生保がメリットを競って売り込み…「節税保険」のしくみ

問題になっているのは、「法人向け定期保険」。主に中小企業が契約し、経営者や役員の死亡の際に保険金が支払われる。いくつかの条件を満たせば、保険料は全額経費扱いになる。

企業は保険料支払いで利益を圧縮し、法人税支払いを減らせる。加入後10年程度で解約すれば、支払った保険料の多くが「解約返戻金」として戻る。利益を上げて税金を払うより、保険に入って返戻金を受け取った方が手元にお金が残る。返戻金は課税されないように、役員退職金などの経費に充てる。

日本生命保険が昨年4月に発売した「プラチナフェニックス」の場合、60歳で契約し、保険料を10年間支払った後解約すると、当時の基準で支払った保険料の約85%が手元に残る。

これに対し、通常通りに法人税を払うと、利益のうち手元に残るのは約66%だ。保険に入った方が、手元に残るお金は3割近くも多くなる。

生保各社は同様の商品を相次いで投入しており、第一生命保険が今年3月発売した商品では、手元に残るお金が、法人税を払った場合より4割超も多いケースがあった。

ただ節税のために中途解約を推奨する商品は、死亡時の保障という本来の趣旨からは逸脱しかねない。営業現場では「節税PR」も横行。返戻金を引き上げるために不自然な設定をしている商品まで登場したことで、金融庁は脱法的な行為になりかねないと判断している模様だ。

同庁は今月、生保各社に対し、法人向け定期保険の実態を問うアンケートを送った。今後個別に聞き取りをすすめ、年度内に必要な行政措置を判断する。

生保業界では以前も同様の保険販売が過熱。2008年には国税庁が通達で、保険料の一部を経費に算入できなくするなど厳格化してきた。最近は商品内容を変え、通達の「抜け穴」を突いているとみられる。(柴田秀並)

 

そもそも保険商品への認可を与えている金融庁が自ら認可している保険商品の経理処理に対してこのような行動を取るのでしょうか?

 

2018年3月までに立て続けに各社がプラチナ系を発売開始

 

日本生命が発売したプラチナフェニックス(以下プラチナ系)と呼ばれる商品には次のような特徴があります。

保険期間を第一保険期間、第二保険期間に分けて設計されている。

第一保険期間は「傷害保険」、第二保険期間は「長期平準定期保険」または「定期保険」と異なる保険商品の設計になっている。

 

前者は損害保険ですし、後者は生命保険です。

キメラのような異なる保険商品が保険契約中に切り替わる…なんとも不思議な設計です。

しかし保険契約には元々「変換」と呼ばれ、契約途中で保障額の範囲内なら他の保険に変更ができる仕組みや「転換」と呼ばれる解約返戻金相当で他の保険に切り替える仕組みがあります。

プラチナ系で問題になるのは異なる二種類の保険を組み合わせた場合に経理処理がどのように扱われるのかといった国税庁の通達がまだ及んでいない商品設計という点です。

 

日本生命のプラチナフェニックス発売以来、多くの保険会社が類似商品を立て続けに出しました。

 

保険会社名 商品名(ペットネーム) 発売日 告知
日本生命 ニッセイ傷害保障重点期間設定型長期定期保険

(プラチナフェニックス)

2017年4月2日 簡易告知

3項目

東京海上日動

あんしん生命

災害保障期間付定期保険 2017年10月17日 告知
エヌエヌ生命 無解約返戻金型災害・

重度疾病定期保険

(エマージンシープラス)

2017年12月2日 簡易告知

3項目

明治安田生命 生活障害保障定期保険 2018年2月2日 簡易告知
5項目
朝日生命 5年ごと利差配当付

災害死亡重点保障型

定期保険

(グランドステージ)

2018年2月9日 簡易告知

3項目

アクサ生命 災害保障重点期間設定型

定期保険

(フォローアップライフ)

2018年2月19日 簡易告知

3項目

ネオファースト

生命

(第一生命グループ)

一定期間災害保障重視型

定期保険

(ネオdeきぎょう2018)

2018年3月12日 簡易告知

4項目

三井住友海上

あいおい生命

災害保障期間設定型

定期保険 無配当

2018年7月2日 簡易告知

4項目

全く同じ保険商品の認可が下りないという原則に従い各社取り扱いを微妙に変えていますが、矢継ぎ早に商品を出している点に大きな疑問を感じます。

特に2018年3月決算に合わせて2月、3月の発売ペースは異様とも言えます。

国税庁とイタチごっこの保険業界の節税保険開発競争

 

保険業界の国税庁とのいたちごっこは日本に限った話ではありません。MDRTと呼ばれる世界中の保険募集人が契約高、保険料収入を競うオリンピックのような組織がありますが、そこの世界大会では各国の税制ルールの違いについて触れられることがあります。

しかし肝心なのはそのルールに則って、想像力を働かせることです。

何故なら税制というルールは必ず後からついてくるものだからです。

例えば法人税基本通達9-3-5という法人保険の経理処理に関する通達があります。

この(1)を準用して生命保険の法人契約の経理処理が適法解釈されています。(あくまでも解釈です。)

解約返戻金は将来の保険金支払いのための原資であり、契約期間が長期の場合には相応の解約返戻金が積み上げられていることになります。

しかし保険金受取人が契約者と同じ法人であることだけがルールだと解約返戻金がある保険契約まで全額損金として計上されてしまいます。

長期平準定期保険が全損扱いということに対して「脱税行為である」と危惧した国税庁が昭和62年6月16日直法2-2で長期平準定期保険の契約についての通達を出します。

既に終身保険は実質的に長期の養老保険であるという通達がありましたが、保障期間が長期にわたる長期平準定期保険についての規定がありませんでした。

この通達によって長期平準定期保険に105ルールが適用されることになりました。

 

その後、外資系生命保険会社が長期傷害保険を積極的に発売。

法人税法基本通達9-3-6(2)を準用して傷害保険の特約保険料は経費算入が認められることを根拠として、全額損金での経理処理を広めました。

 

しかしこの通達は主契約に付加した傷害特約についてのものであり、また解約返戻金があることは前提としておらず、かつ保険料の前払に該当するものがないという前提で設定されていました。

しかも経理処理ができるとは書いていますが、全額損金で処理ができるとは明記していません。

この部分を拡大解釈して全額損金の経理処理としての販売が横行。問題視した国税庁は2006年4月28日付けて長期傷害保険(終身タイプ)の経理処理を3/4資産計上とする回答を出しました。

また同時に過去の経理処理についても遡及することを発表しています。

 

その後も逓増定期保険の名義変更プラン、終身がん保険などの全損処理が度々問題となりましたが、その都度通達が出るたびに取扱が見直しされてくるいたちごっこを繰り返しています。

 

プラチナ系の何が問題になっているのか

あからさまな節税提案を危惧している金融庁ですが、今回のニッセイに端を発したプラチナフェニックスの発売は日本の低金利・マイナス金利政策による予定利率の歴史上最低水準が影響しています。

ニッセイという業界の盟主、最も影響力のある会社が脱法的なことをするはずがないという信頼(金融庁のグリップ力)があだとなり、低金利によって追い詰められた金融機関が牙をむいた…

 

しかもニッセイのこのプラチナフェニックスは正式名を「ニッセイ傷害保障重点期間設定型長期定期保険」と言います。

過去の長期傷害保険の経理で問題になったのが保障期間が終身であるという点を逆手に、経理処理が既に決まっている長期定期保険で再販したという点に嫌らしさがあります。

国税庁は終身がん保険の全損処理などの既にあるルールに新たな通達を出す際には前後で経理処理を分ける傾向にありますが、

長期傷害保険など全くルールがなかった時には、過去にまで経理処理を遡及することがあります。

今回は果たしてどちらと解釈されるのでしょうか。

 

保険会社各社が商品パンフレットやWebページで注意事項を表記しています。

過去にこういった事例があったから絶対に過去の経理処理への遡及がないとは言い切れない。そういったことを匂わせる一文が個人・法人の保険契約では記されています。

 

手堅い商品、手堅いことしかやらないと考えられていた業界最大手のニッセイがこんな薄氷の上を歩く危険を冒してまでプラチナフェニックスを導入したということは国税庁がどういう時に突っ込んでくるのかということに探りを入れた行為と言えます。

 

漫画の引用で恐縮ですが漫画『スラムダンンク』の湘北‐陵南戦では陵南のキャプテン魚住という2mを超える大型センターは4ファウルで、あと1つファウルを取られると退場という状況に追い込まれました。

ベンチに引っ込んでゲームをチームメイトに託しますが、相手チームにリードをどんどん許されていきます。

残り時間わずかとなったタイミングでコートに戻った魚住はライバル:赤木に挑みます。

ゲーム再開直後、ゴール下での接触プレイを試みます。

審判は試合をそのまま流しました。

これくらいのあたりならファウルを取らない…

魚住は境界線を理解し、この後のチームの劇的な追い上げに貢献します。

 

ここまでやったらこうしてくる…

それをニッセイは国税庁に対してやっているのではないでしょうか。

(もっともニッセイに仙道のようなスーパースターになる商品が今後発売できるかは別ですが、金融庁や国税との政治力は強そうです)

プラチナ系がヤバいのではない、保険会社の姿勢と対応が争点となる

 

生命保険会社各社の状況を見ていると10年に1度は業務改善命令を受けているあの会社の取扱ルールがマズいと感じています。

金融庁がアンケートを送付…何を馬鹿なこと言っているのでしょうか。アンケートにうちの会社は脱法行為を推奨していると馬鹿正直に回答する保険会社があるでしょうか。

そんなところから問題が分かるはずがありません。

問題なのは商品設計ではなく、取扱規定です。

株主総会議事録や役員名簿の偽造、役員ではない親族を保険加入対象とするなどの危険な取扱をしている保険会社が存在します。

10年前の保険金不払からあの会社は何も反省していません。

保険業界からああいった企業はさっさと退場させるべきではないでしょうか。

 

しかし日本生命も自ら引き金を引きながら、付けた商品名がプラチナ・フェニックスとは恐れ入ります。

フェニックスって不死鳥(火の鳥)ですよね。

死んでもまた蘇る…それがかつての長期傷害保険の販売停止、そして今回の復活を暗示しているのか。

それとも業火によって焼き尽くされた保険会社を取り込み業界を再編するぞという意気込みなのか。

なんとも皮肉めいたペットネームをつけたものです。

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