ネット証券で投資信託を買っている人は実は少数派?歴史から考える日本の投資信託の問題点

投資に関心を持ち始めるとどの投資方法で、

どの資産や商品で資産運用するか、

アレコレと迷うのは楽しいものですが

投資の基本を理解せずにいきなり投資をすることは

何においてもお勧めできません。

投資の基本である株式投資も債券投資も、

それを応用した投資信託もREITもETFも

本来は投資家が資産を増やすためのではなく、

企業が社会から広く資金を集めるための手段です。

投資家はそこに資金を投じて参加しているのであって、

日本では「お金が増える」だけしか目に入らない方が

多いことを非常に日ごろから残念に感じているのですが

悲観ばかりしていても仕方がないので投資信託が世の中のために普及するにはどうしたら良いのか。

投資信託という仕組みの生い立ちと、現状ネット証券で投資信託の販売が伸び悩んでいるという問題について私なりの考察をしてみました。

 

リスク回避のために資産管理を託すという約束から生まれた信託

投資信託は信託法という法律の上に成り立つ資産運用手段ですが、

信託法は最初から投資に対する法律だったわけではありません。

12世紀頃に十字軍遠征の際に戦地へ赴かなければならない兵士などが、

遠征で命を落とすと土地は息子へ相続されます。

その際に多額の相続税を領主に収めなければなりませんでした。

※ヨーロッパのキリスト教徒が聖地エルサレムを奪還しようと出征戦争。

1096年~1272年までの計9回176年に及ぶ遠征が行われた。

 

今であれば相続対策として生命保険を活用するようなシーンですが、

まだ生命保険が誕生するはるか以前の時代です。

戦地に赴く家族を持つ兵士Aはそこで土地をBという土地の管理をしてくれる人に譲渡し、Aの子であるCにその土地から生まれる収益を分配するように約束を交わします。そしてこの約束が確実に履行されるようにユースと呼ばれる信託契約を交わしました。

産をじて依頼した相手をじてす、信託の起源と言われています。

またこの契約を交わした際に契約を依頼されたBは受託者となり、

Aと交わしたCへの利益の分配を履行する義務が発生します。

Cは受益者となり、相続税を納めることなくAの財産からの収益だけを

Bから受け取ることができるようになる。

このBに課せられる義務のことを

受託者責任(フィデュシャリーデューティー)と呼びます。

近年、金融庁が口うるさく行っているアレです。FDというやつの原形です。

 

専門家に資産を託して投資をする仕組みへ発展

時代は進み、イギリスが1600年インドに作った東インド会社※という世界で最初の株式会社が誕生したことを契機に世界中で株式会社が誕生します。

日本で言えば江戸時代が始まったばかりの頃ですから、驚くべきことです。

※冷蔵技術のない時代にアジアで取れる香辛料は食料などの長期保存ができる非常に貴重な資源だった。

加えて西洋では珍しい東洋の陶器や織物などアジアの交易の独占をエリザベス1世に許可されて設立された世界で最初の株式会社が東インド会社。やがて国家的な役割を果たす企業となるが…。

 

会社という資産を株式によって分け合うこの考え方はその後、投資の対象として多額の資金が集まるようになります。しかし多額の資金を一つの会社に投資をすることはリターンも大きい代わりにリスクも大きいものです。

また離れた場所(海外など)の情報はなかなか入手しづらいけれど発展の余地の大きい場所に投資をしたい、高度な知識はないけれど投資をしたいというニーズが高まります。

そこで投資家から資金を預かり、遠方の企業の株式へ投資家に変わって投資をするという投資組合が誕生します。

一見すると合理的とも呼べるこの投資方法はその後、資金を預けた人が資金を持ち逃げしてしまう詐欺が多発したことも問題となり、1868年にアメリカで投資組合は株式会社化。

信託法という法律の下で、資金を預かる資産管理会社(主に銀行や信託銀行)が資金を預かり、運用会社は投資家に代わって売買の指示を行うという現在の形に少しずつ変化をしていきました。

日本では1941年に野村證券が投資信託業務の認可を受けて販売を開始。現在では約6,153本の投資信託、個人・法人併せて投資純資産額111兆7,263億円のお金が運用されています。

→ 数字で見る投資信託

 

また運用会社別の投資信託の預かり資産は大手証券会社の系列運用会社が上位を独占しています。

野村アセットマネジメントの23兆円を筆頭に、大和アセットマネジメント13.8兆円、日興アセットマネジメント7.2兆円と続きます。

また独立系の資産運用会社も数多く設立され、独自の投資理論に基づく投資信託の組成、販売を行うようになりました。

 

投資信託におけるネット証券での購入に課題

2000年代に入りインターネットが普及すると個人投資家と呼ばれる人々による対面販売を介さない株式投資方法が普及を始めました。

株式などの個別銘柄への投資では買付や売却時の手数料の安さなどでネット証券が対面販売での証券会社以上に優位性を発揮している一方で、投資信託のネット証券での販売には課題があるように思います。

上の画像は2010年1月〜12月の一年間における株式と投資信託の市場シェアです。

少し古い数字ですが、ネット証券大手は2011年3月に「株式投資はもはやネット証券の時代だ」と言わんばかりにこの統計を発表しました。

そして「次は投資信託もネットで買う時代になる」と資産倍増プロジェクトをSBI証券、楽天証券、マネックス証券、カブドットコム証券のネット大手4証券が共同で立ち上げるキャンペーンを行いました。

わずか1.6%のシェアだった当時の投信シェアを「3年シェア30%」(マネックス証券松本大社長)と高い目標を掲げて始まりましたが結果として2015年2月にネット証券での投資信託シェアは数%に留まり結果が公には公表されませんでした。(松本大社長のコメントから数%ということで10%の大台にも乗らなかったと推測される。)

都合の良い数字だけは公表をしながら、都合の悪い数字になると結果さえ隠そうとするネット証券の経営姿勢は証券業界そのものの体質を表していないでしょうか。

しかも2015年2月とは2014年にスタートした一般NISAのスタートダッシュ時期を含んでいます。どれだけ株式投資へ資金が持っていかれたのか、正確な数字の公表がされていないのはどういうことでしょうか。(どこかに数字が公開されていたらコメント欄からご連絡ください。)

 

株式投資での販売手数料を実質的にほぼ取っていないネット証券ですから投資信託もネット証券で買ってもらえるようになることで収益性は格段に良くなります。

そもそも証券会社の収益には5つありますが、その内の最も大きなものが手数料収入です。

ネット証券は対面販売の証券会社から株式投資の際の手数料を取らないことで市場シェアを奪っていきました。

しかし株式投資ではわずか10年ほどの間に市場シェアを過半数以上奪って見せたネット証券が投資信託の販売手数料を対面販売よりも大幅に下げて市場を奪うことには苦戦しています。何故でしょうか?

 

私は次の5つだと考えています。

①日本にはまともな投資信託がほぼ存在しない

②ビジネス構造の問題

③商品の比較・検討を嫌がった商慣習

④投資教育を省略した安易な『貯蓄から投資』を促す制度の設立

⑤専門知識を有する投資信託販売に置けるIFA不足

 

FP Voice

①日本にはまともな投資信託がほぼ存在しない

日本には同一投資カテゴリーにおける平均リターン以上のパフォーマンスを出している運用期間18年以上の投資信託はわずか2%です。

投資家の投資信託の平均保有期間は3.2年、投資信託の平均運用期間(設立から償還まで)は7年です。

98%の投資信託は平均リターンを出せませんし、少し利益が出ただけで売却をしてしまう投資家、長く保有しようとしても繰り上げ償還。

こんな状態でまともな投資ができるはずがありません。

銀行窓口で販売された投資信託保有者の運用状況が先日発表されましたが悪意に満ちた結果となっています。

こんな数字は統計をどこからどこで区切るかによって幾らでも報道する側の都合の良いように加工できます。この数字は金融庁が銀行をいじめるために作り出した数字です。

最も多くの銀行が良くない投資信託の販売の仕方をしているのは事実ですが、このやり方は本当に金融庁が投資信託を銀行にある許可を与えていることにこそ問題があるのに、自分で許可を出してあれこれ文句を言っているのですからNHKみたいなものです。ヤクザと一緒です。

 

②ビジネス構造

日本では証券は証券会社経由で買うものであり、金融商品仲介業者は必ずどこかの証券会社と提携をしなければ証券の仲介ができません。

投資信託のラインナップが豊富な証券会社、IPO(新規上場)に強い証券会社など様々です。どこの証券会社を提携先にするかによって提案できるラインナップが変わってきます。

これは保険業界にも言えることですが、多くの保険会社と提携をしている乗合代理店に所属をすれば数の原理で幅広いラインナップ、幅広い選択肢を顧客に提供ができます。

端的に言い換えれば金融業界の仕組みは未だに昔の流通業に置ける卸業と同じ構造をしています。

もし金融庁が本当に投資信託での資産形成・資産運用を国民のためを思っているのであれば証券会社経由での販売というスタイルを廃止して、金融商品仲介業者は金融庁直轄の販売体制に移行するべきです。

海外を見ればイギリスのIFAは国内で販売されていて購入が可能な投資信託を共通して提案することが出来ます。

証券会社を保護する意味があるのでしょうけれど、顧客のための投資信託の販売は既存の証券会社では不可能です。

また販売手数料を廃止して、運用成果に応じてIFAに成果報酬(フィー)を支払うビジネスモデルへ国は舵を切るべきです。

そしてネット証券で投資信託が売れない最大の理由はコストです。

目論見書を見ても、投資信託Aと投資信託Bの違いが多くの人には分からないのです。

違いが分からないものをネットで買っても、対面で買っても販売手数料が原則同じ。

だとしたら、あなたはどちらで投資信託を買いますか?

 

ちなみに私は本当に良いと思っている投資信託について「この投資信託が良い」とは絶対に無料の記事を書きません。

だって良い投資信託にすぐに利益確定のために売却をするような資金の流入をして欲しくないからです。

よくネットで話題だとか人気だとか、記事を書いている人がいますけどそれってどういう意図で執筆者は書いているのでしょうか。

資金が沢山流入すれば喜ぶ人が書いているのではないでしょうか

 

ネット証券が株式投資のように、投資信託で市場シェアを確保できないのはこの販売手数料をカットすることはネット証券の利益の源泉を失うことになります。

自宅や外出先でパソコンやスマートフォンから株式の売買ができるようになったと喜んでいる人はネット証券がどのようにして儲けているのか考えたことがあるでしょうか。

利幅の大きい投資信託を買ってもらえば買ってもらうほど証券会社は儲かります。

何しろ在庫を抱える必要がなく、まるっと販売手数料が収入として入ってくるのですからこんなに証券会社にとって美味しいビジネスはありません。

 

ネット証券は利便性もさることながら手数料の安さで対面証券からシェアを奪ってきました。

手数料が変わらないとしたら顧客がどう行動するのか、想像ができない人はいないでしょう。

 

③商品の比較・検討を嫌がった商慣習

金融業界は類似の問題を抱えています。

その代表的な問題の一つが商品の比較を嫌がるという問題です。

保険商品でも商品の比較販売が原則として禁止されています。

比較販売が禁止の意味が分かるでしょうか?

比べられて困るような商品を販売しているということです。

これは証券でも同様です。

投資信託の運用にしても、複数のファンドをどのようにして比較をすればよいのかの比較方法について殆どの人が教えてくれません。

投資信託で現在行われているのは過去の騰落率や純資産総額の多いもの、資金流入が多いもの、少ないものなどの運用パフォーマンスや運用目的とは関係ない項目でしか比較ができません。

比較ができるような状態で情報が開示されていないのです。

そもそも個人投資家レベルで国内に6,100もある投資信託を全て比較検討することは事実上不可能に近く、金融庁も投資信託協会も複数の投資信託に分散投資をすることは推奨していても、その組み合わせ方について具体的にどのように複数の投資信託を組み合わせればよいのかと言った方法を明示していません。(IFAは分析のためのツールを自前でお金をかけて構築したり購入したりしているが)

 

④投資教育を省略した安易な『貯蓄から投資』を促す制度の設立

一般NISA、そして今年始まったつみたてNISAは投資が20年以上も遅れた日本において早く結果を出さなければいけないという焦りと世の中に対して「私、仕事しています」アピールで生まれた制度です。

結果、特にひどいつみたてNISAは投資家の資産についてどのように資産を守っていくのかを検討せずに見切り発車してしまいました。

せめて確定拠出年金や変額保険のようにスイッチングが出来たり、一般NISAのようなロールオーバーができたりしたら…本当に使える良い制度だったのですがリスクを抑える効果を持っているのはその投資方法(ドルコスト平均法)だけで、受け取り間際になって下落が起きた時には逃げようがない、損益通算もできないという落とし穴だらけの制度を「素晴らしい制度だ」と宣伝して力押しで乗り切ろうとしています。

しかも対象商品の条件がコストが安いだけのインデックス投信ばかりが135本、アクティブ17本、ETF3本ってもうね。

阿呆かと、馬鹿かと、小一時間問い詰めたいですね。

 

⑤専門知識を有する投資信託販売におけるIFA不足

制度を見切り発車する前に何よりも国が率先してやらなければならなかったのが投資家を導くIFAの育成とビジネスモデルの構築でした。

IFAの育成は現在行われていません。証券外務員試験だけです。

証券外務員2級以上の試験に合格して、証券会社と個人または法人で業務提携をすればIFAを名乗れます。

つまりIFAであれば誰でもよいのではなく、きちんと自分に合った資産形成の提案をしてくれるかは全くの別問題ということです。

はっきり言えばIFA一人一人の投資経験とマーケットに対する姿勢、感度、顧客に対する姿勢がそのまま提案内容に影響を与えます。

提案内容に対してIFAが受け取る販売手数料は安すぎます。

IFA事業だけで食べていけるIFAは殆どいないでしょう。

なので私もFP、保険代理店と兼業をしながらその中の一サービスとしてIFAをしています。

しかしそもそもIFA一本で採算が取れないビジネスというのがおかしいと思っています。

これは金融庁がこのIFAというビジネスと日本の投資信託販売についてビジョンを示さなかったがために起きた問題でもあり、ひいては多くの投資家にとっての機会損失を生んでいると考えています。

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