森レポートが提言する「積立NISA」と長期投資と日本の資産運用業界の実態

金融行政の監督省庁のトップである森長官が2017年4月に金融機関向けに発したスピーチは、

現在も金融庁のWebページで公開されています。

戦後最大の挑戦、金融機関向けのメッセージはこれから資産を育てていきたいと考えている

個人の方へも現状の日本の投資環境が如何に販売側の理論に偏っているかを教えてくれています。

 

以下はそのメッセージ(以下、森レポート)からの抜粋を紹介します。

(共通価値の創造)

私は、ここ数年、金融機関に対し「顧客本位の業務運営」をしてくださいと一貫して申し 上げてきました。企業が顧客のニーズに応える良質な商品・サービスを提供し続けること が、信頼に基づく顧客基盤を強固なものにし、供給者である企業の価値向上につながる ことは、金融機関のみならず、およそ全ての企業に当てはまる原則だと思います。 資産運用の分野でも、お金を預けてくれた人の資産形成に役立つ金融商品・サービス を提供し、顧客に成功体験を与え続けることが、商品・サービスの提供者たる金融機関の 評価を高め、その中長期的な発展につながることは当然のことです。 マイケル・ポーターは、これを Creating Shared Value(共通価値の創造)と呼びましたが、 金融機関による共通価値の創造は、顧客と金融機関の価値創造に留まらず、経済や市 場の発展にもつながるものと考えます。

しかしながら、現実を見ると、顧客である消費者の真の利益をかえりみない、生産者の 論理が横行しています。特に資産運用の世界においては、そうした傾向が顕著に見受けられます。 資産運用の世界を代表する思想家であるバートン・マルキールとチャールズ・エリスは、 その共著1の中で、個人が投資で成功するための秘訣として

・ゆっくりと、しかし確実にお金を貯める秘訣は再投資(複利)にあることを認識すること、

・市場の値上がり、値下がりを気にかけず、一定額をこつこつと投資すること、

・資産タイプの分散を出来るだけ図ること、

・市場全体に投資するコストの低い「インデックスファンド」を選ぶこと、 を勧めています。

 

1 “The Elements of Investing: Easy Lessons for Every Investor” by Burton G. Malkiel and Charles D. Ellis(「投資の大原則-人生を豊かにするためのヒント」鹿毛雄二・鹿毛房子訳、2010、日本経済 新聞出版社) 1

 

(積立 NISA の対象投信)

来年 1 月から開始される積立 NISA は、こうしたマルキールとエリスの考えにも沿った、個人の資産形成を支援するための税制上の優遇措置です積立 NISA の投資対象にな りうる投信についても、同様の思想により、資産運用の専門家からなるワーキング・グル ープを立ち上げ、検証していただいたところ、以下のような結果になりました。 日本で売られている公募株式投信は 5406 本ありますが、そのうちインデックス型株式 投信は 381 本です。これから、毎月分配型の投信、レバレッジのかかった投信、信託期間 が短く長期投資を前提としていない投信を除き、ノーロードで信託報酬が一定率以下のも のに限ると、積立 NISA の対象として残ったものは 50 本弱でした。

マルキールとエリスは、インデックス投信は、一般的に、アクティブ型投信よりもリターン は高いと指摘しています。

米国では、企業のファンダメンタル価値を評価する投資家の層が厚いため、市場の高律化が進み、インデックス戦略が有効に機能していると言われていますが10 年以上存 続している日本の株式アクティブ型投信 281 本の過去 10 年間の平均リターンは信託報酬 控除後で年率 1.4%であり、全体の約三分の一が信託報酬控除後のリターンがマイナス となっていました

ちなみに、この 10 年間で日経平均株価は年率約3%上昇しており、イ ンデックス投信が一般的にアクティブ型投信に比べリターンが高いとのマルキールとエリ スの主張は、日本株投信についても当てはまるように思えます

そこで、2707 本ある日本のアクティブ型投信について設定以来、三分の二以上の期 間において資金流入超となっており、ノーロードで信託報酬が一定率以下であることなど を要件としたところ、これを満たすものは、5本でした。日本においても、企業のファンダメ ンタルな価値を適切に評価する投資家の層が厚みを増し、質の高い、長期投資に資する アクティブ型投信が増えることが望まれます

この結果、積立 NISA の対象となりうる投信は、インデックス投信とアクティブ型投信あ わせて約 50 本と、公募株式投信 5406 本の1%以下となりました。 ところが、同じ基準を米国に当てはめてみると、全く異なる結果となります。米国で残高 の大きい株式投信については、上位 10 本のうち8本がこの積立 NISA の基準を満たして います。一方、我が国の残高上位 30 本の株式投信の中で、この基準を満たしているのは 29 位に一本あるだけです。

 

  • 重要な意味が含まれている部分を太字
  • 日本の投資信託における指摘がされている部分が赤字
  • 青字はバートン・マルキールとチャールズ・エリスの投資哲学におけるインデックス(パッシブ)型投信の提言(積立NISAの基準)を示しています
  • アンダーラインは森長官の所感部分です。

 

金融庁のトップが自ら監督する証券業界(資産運用に関わる業界)の惨状について壮絶にダメ出しをしています。

仮つまむと・・・

・日経平均が10年で年率約3%上昇している

・なのに日本の投資信託の大部分を占めるアクティブ型は年率1.4%しかパフォーマンスを出せていない。

・長期存続のアクティブ型の三分の一に至ってはマイナス運用。

 

・長期的にはパフォーマンスが劣るアクティブ型ばかり日本では販売しているのは手数料で儲けたいからで顧客本位ではない。

・長期でコツコツと積立投資をし、資産形成をしていく積立NISAの考え方に殆どのアクティブ型は沿っていない。

・日本でも優良なアクティブ型ファンドがもっと増えることを希望する

 

これを読むともはや日本の投資信託は金融庁的には

約5,400商品のうち「やっても資産は増えません」と宣言されたようなものです。

(1%、わずか50商品だけが優良商品と呼べる)

 

そして2018年1月から始まる積立NISAはこれらの商品を排除して、厳選したインデックス型投資信託をメインで扱いますというメッセージが読み取れます。

同時に、インデックス型=手数料が安い=証券会社はこのままだと今までの様には儲からない、ということも読み取れます。

 

レポートから森長官はインデックス型投資信託をかなりお勧めしていらっしゃるようです。

事実、インデックス型投資信託は低コストで、確かに多くの場合に過去アクティブ型よりも好成績を出してきました。

また日本の投資信託が証券会社が儲かるための手数料を稼ぐための仕組みとしてアクティブ型を積極的に販売してきました。

よって日本の資産形成を担う積立NISAは、ほぼインデックス型で占められてスタートせざるを得ません。

証券業界のあくどさを一掃したきちんとした制度として成り立たせるためにはそうせざるを得なかったとも言えます。

 

その一方で、このレポートを「インデックス型最強論」や

インデックス型無敵論」とすることはできないことを我々は忘れてはいけません。

 

それは何故、アクティブ型を積立NISAから完全に排除しなかったのか?です。

投資はこれだけ金融庁がインデックス型を推奨したとしても、自己責任です。

そしてその中にアクティブ型を厳選して選定しているのは何故なのか?

それはインデックス型とアクティブ型ではその目標と役割が異なるためです。

 

私も素人のフリをして、様々なマネーセミナーへ参加して素知らぬ顔で講師に質問をしたりしています。

「パッシブ(インデックス)型」で「ドル・コスト平均法」(長期・分散・コツコツ)を

することをまるで負けない投資方法のように勧めているFPがたくさんいます。

投資に対する考え方は人それぞれですが、私は危険だなと感じています。

アクティブ型の意味と役割を全く誤解している、

インデックス型が何故好成績だったのかの前提を見落としているのです。

次回はその点についてご紹介したいと思います。

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