確定拠出年金を検討する上で考えて欲しい5つのこと

2017年も早いもので2ヶ月が過ぎ、あっという間に3月ですね。

個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)が1月に大幅な制度改革で対象者を拡大したのを筆頭に、

今年はこれからの日本を形成する大きな変化が目白押しです。

これらの変化と確定拠出年金の制度改正はどのようにつながっているのでしょうか?

本コラムでは確定拠出年金が誕生した背景と、日本での確定拠出年金を検討する上で

考えておいて欲しい5つのことについて書いていきます。

 

1-1:確定拠出年金が始まった背景

1-2:日本での確定拠出年金制度の始まり

1-3:財政逼迫の”その先”に備えるのに適切か?

2:投資環境として日本の投資信託は適切か?

3:参加者を増やしたい国の思惑と中途引き出しできない怖さ

4:投資初心者をカモにする金融教育のない証券会社

5:手数料合戦による本当のコスト目隠しへのリスク

 

1-1:確定拠出年金が始まった背景

1つ目は何故、確定拠出年金が始まったのかです。

確定拠出年金は米国で1970年代に始まったと言われています。

この当時のアメリカは戦争に明け暮れていました。

冷戦の代理戦争とも言われていたベトナム戦争は諸説ありますが1955年に始まったとされ、

1970年代に入ってもまだ戦争を続けていました。

長引く戦争とソ連との緊張状態が続き、軍事費が膨大となったアメリカでは

債務が積み上がり国家破綻の危機を迎えつつありました。

下記はベトナム戦争と太平洋戦争で投下されたアメリカ軍の出撃機数と爆弾投下量と爆撃密度です。

出撃機数 爆弾投下量 爆撃密度
対日 3万機 16万㌧ 0.4㌧/㎞2
対ベトナム 19万機 200万㌧ 13.0㌧/㎞2

出撃機数で太平洋戦争時の約6倍以上、爆弾投下量で約12.5倍

開戦時0歳だった子どもが高校生になっても続いていたと聴けば、

それがどれだけ凄まじいものだったか想像に難くありません。

米国では国の運用管理によって支給される公的年金が

もらえない可能性が極めて高くなったため、

将来の年金積立・運用は国任せではなく自分たちで行うという方法に切り替えました。

これが確定拠出年金(DC,401k)の始まりです。

1-2:日本での確定拠出年金制度の始まり

日本ではバブル崩壊前までは勤め先の企業と金融機関が企業年金(退職金)として

確定給付年金(DB)という年金受取額を約束してくれる年金制度がかつてありました。

しかしバブル崩壊後、長期の見通しが立たなく将来の大きな負担を回避したい企業と金融機関は

確定給付年金(DC)を策定しました。

拠出額(積立額)を確定(固定)した年金制度ですので、受取額は約束されていません。

自己責任での運用を大前提としています。

第一次金融ビックバンと呼ばれる金融改革の一環として、

企業勤めの方の退職金は自分で運用をしていく時代(2001年〜)となりました。

この当時の確定拠出年金は個人型の対象者は原則個人事業主だけで、

個人事業主にとってはそれまでの国民年金基金で積み立てるだけだった選択肢が、

確定拠出年金で投資運用を出来るように広がった画期的な制度誕生でした。

また企業型(無印)も導入企業が掛け金を拠出してくれるため、

従業員にとっては自己負担がなく運用結果だけが自己責任でした。

しかし投資・運用について殆どの会社勤めの方が慣れていなかったために、

多くの加入者が元本確保型の定期預金などに積み立てているだけに留まっていました。

(日経スタイルより抜粋)

※サラリーマンの確定拠出年金は配分比率を6割の方が元本確保型に指定。

運用資産全体での利回りは0~1%に留まっている方が40%

洋服ショップGAPを展開するギャップ・ジャパンは2008年より確定拠出年金を導入。

投資信託を積極的に活用し6年間の平均運用利回りは約8%だったと紹介されています。

2014年に再び改正された企業型確定拠出年金はマッチング拠出、選択型の2種類が追加されました。

従来のものと合わせて企業型は現在3種類存在します。

ネット証券、そしてNISAなどが普及・浸透する中で投資に積極的な若い世代を中心に

企業・従業員双方にとって税控除、社会保険料の負担軽減がある選択型が広まりつつあります

そして2017年、確定拠出年金制度の改正は個人型にもようやく及びました。

20歳以上59歳までの働くほぼ全ての人を対象にしました。

また既に勤務先で確定拠出年金をされている場合でも、個人型にも拠出が出来る事になりました。

(拠出上限は少ないですが)

制度が使いやすく、そして身近になることは国民として大いに喜ばしいことだと感じています。

その一方で様々な社会保障の負担増、そして実に分かりやすいメリットを前面に出した改革は、

国の財政への危機的状況がいよいよ

待った無しの所まで来ていることの現れと感じる部分もあります。

何故ならば、確定拠出年金とは国の財政が危惧される状況の中で始められる制度だからです。

1-3:財政逼迫の”その先”に備えるのに適切か?

国の年金制度や、財政が果たして本当にどうなるのかは誰も断言できないでしょう。

しかし事実、アメリカをはじめとした先進諸国では軒並み同じような財政逼迫の中から確定拠出年金制度が誕生しています。

また財政危機という点でその先を予測しようとするとソ連からロシアへの移行期に

ロシアの通貨ルーブルは紙切れになった事例から私たちは学ぶ事ができます。

社会主義国家破綻の煽りを最も受けたのは公務員と都市部に住む人たちで、

最も影響を受けなかったのは郊外で暮らす農家の人たちだったと言います。

通貨の分散で資産の一部を米ドルで保有していた人たちはその後ロシアの新富裕層(ニューロシアン)となり、

2000年代に新時代を築き上げる層となりました。

老後のための資金準備という方法として、様々な選択肢がある中で確定拠出年金は一つの手段です。

しかし国が破綻やそれに類する状況になった時にどの程度、

その国の通貨そのものに価値が残るかは十分に考える必要があります。

多くの方は既に知らない・覚えていない話ですが、日本でも戦争終了直後に戦時国債のデフォルト。

債務不履行と新円への切り替えを行っています。

またその時期にはハイパーインフレが起こり、経済が数カ月にわたり麻痺した経験もあります。

大正生まれ・昭和初期生まれの祖父母から新円切り替え時の旧札に印紙を貼って代わりにしていた話や、

それでは経済が回らずチケットが配られ配給で米や味噌を買った話を聴いた事がある人も中にはいるのではないでしょうか。

債務を圧縮するためにデノミネーション(例えば100円→1円に桁を落とし切り替えると国の債務も1/100に圧縮される)や

ハイパーインフレ(実質的価値の目減り)を起こすかどうかは

誰にも分かりませんが、そのような可能性さえない訳ではないということは

頭の片隅に入れておく必要があるでしょう。

その上で確定拠出年金が多くの方の老後資金の準備手段として活用されるのであれば、

そのメリットは最大限に活かすべきだと思います。

個人型確定拠出年金の主なメリット

  1. 拠出額の全額所得控除
  2. 運用益の非課税
  3. 受取時の税制優遇

2-1:投資環境として日本の投資信託は適切か?

そして考えて欲しいこと2点目は投資環境として果たして本当に良いのか?

どんなに制度がよくても、投資環境が良い状態でなければ老後資金の準備としては銀行預金の方が

まだマシだったになってしまいます。

何しろ60歳まで引き出せないという制約を受ける制度ですので、

その制約を受ける以上はそれ以上のメリットがなければ投資する意味がありません。

そこで考えなくてはならないのがアベノミクスによる経済政策の効果が十分に成果を挙げられていない点です。

第二次安倍政権が発足した時の勢いは何処へやら。

最近では公言していた期間を過ぎても2%インフレどころかインフレ率はマイナスに逆戻り、

もはや言葉にさえ出さなくなってきました。

禁じ手とされている日銀による国債買い入れやマイナス金利発動。

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)による運用方針の変更や損益の状況をメディアは

度々ニュースで取り上げられましたが、結果的にはアメリカ経済が株高になれば日本株も上がる。

自国で何か政策を打ったから経済が回復するのではなく、

アメリカの経済に依存している構造である事が露呈している状況とも取れる状況を

どう捉えれることが出来るのか。

実体経済を反映しづらい投資市場の状況、

我々は果たしてこのような市場に投資をして本当に良いのだろうかという点です。

経済が成長するというのは基本的には人口などが増え、経済が活性化することの数値化の現れでもあります。

人口減少社会である日本において経済の活性化は待望ですが、

それを下支えしているものは何でしょうか?

もしそれが何かよく分からないものだとしたら、過去の反省を思い出し

バブル」という単語を忘れないように我々は刻む必要があります。

人口が増えている状態は上りエスカレーター、人口が減っていく状態は下りエスカレーター。

投資で資産を増やすためには上のフロアに登っていくことになります。

下りエスカレーターに乗って、上のフロアを目指す事がどれくらい大変か。

子供の頃に逆走したことがある方は体験的に理解できるのではないでしょうか。

3:参加者を増やしたい国の思惑と中途引き出しできない怖さ

3点目は確定拠出年金の対象を広げる事で、国は国内の投資運用を活性化したいという思惑です。

株式市場は参加者が多いほど活性化します。十分に株価上昇をしてくれない日本の株式市場に、餌(メリット)をぶら下げて、

お金を投資してくれる人が増えることで株価の底上げをしたいのではないかという懸念。

前述の下支えがないので、個人の投資を持ってそれを作ろうとしているのではないかという懸念です。

参加者が増えるほどこの思惑はうまくいくでしょう。

何しろ60歳まで途中退場が許されないのですから、これほど確実に資金を貯めておける政策は類を見ません。

かつての「貯金は美徳である」の発想※と非常によく似た構造です。

※戦後日本において貯蓄を推奨する文化が広まったのは銀行や郵便貯金を介して集めた預貯金を、

銀行経由で国債購入の費用として充てて配当含む利益を得ていた間接金融の仕組みのこと。

日本では戦後長くこの状態が続き、新幹線や高速道路、発電所やダムなどの社会的インフラの整備は

この施策によって下支えされてきました。

4:投資初心者をカモにする金融教育のない証券会社

4点目は投資経験の乏しい人が始めるにはあまりに確定拠出年金および投資について教育をする場がなさすぎるという点。

企業型確定拠出年金は導入時教育の義務と、継続教育の努力義務がありますが個人型にも導入するべきだと考えています。

どのような運用方針で行うとどのような効果が期待できるのか、確定拠出年金のデメリットは何か、

自分にとって確定拠出年金は合っているのか。

これらは確定拠出年金だけの話ではなくライフプランを通して考えなくては成り立ちません

しかしライフプランを立てましょうと説明する確定拠出年金の宣伝を見かけることは殆どありません。

5:手数料合戦による本当のコスト目隠しへのリスク

5点目は手数料合戦への疑問です。

確定拠出年金を宣伝しているネット証券会社が特に顕著ですが、

手数料が安いところで始めるべきだという宣伝です。

投資信託について調べ、またきちんと運用をしている人は手数料が運用効率を下げるものであることは当然理解している点です。

なので手数料が安い方が良いは確かにその通りです。

しかしその手数料は多くのところが宣伝している運用管理手数料だけではなく信託報酬という手数料も含んでの話です。

しかし宣伝されているのはほとんどが運用管理手数料の部分だけで各種手数料のうち最も安い部分

主に宣伝していることは問題ではないでしょうか。

手数料の多少は確かに投資をする側にとって比較する要素の一つですが、

金融機関や商品のパフォーマンス選びはそれ以上に重要な要素ではないでしょうか。

どこの会社が提供しているのかが金融機関選びですが、

取り扱っている会社によってサポート体制にかなりの温度差があります。

投資相談について、運用方針についての相談ができる窓口やコールセンターが充実しているか

平日働いて土日が休みという方であれば平日夜遅くまたは土日も窓口やコールセンターが営業している事は必須条件です。

何しろその時々で基準価格が異なるのですから運用比率の調整や売却などは相談しよう、変更しようと思った時、

柔軟に変更できなければ大変です。

あくまで投資経験の少ない方向けの話ですので、慣れている方にとっては大差ない部分ですが初心者には重要な点です。

そしてパフォーマンス(効果)です。管理手数料、信託報酬など実に様々な手数料を支払っていることを考えると

その利回りは少なくとも最低3%以上出せなければ実質的にマイナスと言えるでしょう。

またそこに加えて60歳まで引き出せないことをどう考えるかも懸念材料です。

(引き出せないことによるメリットもあります)

毎月積み立ての投資ですので資産評価額は基本的に毎月積み上がっていきます。

しかし運用益がそれに準じて増えているか、利回りを計算して効率が低い部分は見直しをしていく必要があります。

投資経験の少ない方にそれらが全て果たしてできるのか。継続的にできるのか。

金融機関はその体制が整っているのか。そのためのアドバイザーや情報をシェアできる仲間がいるのか。

これから確定拠出年金を検討されている方は自分の頭で考える必要があると思います。

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