健康保険における自由診療とは何か

日本の健康保険制度は世界でも類を見ない制度です。

先進国の多くは少子高齢社会を迎え、医療と介護などの社会福祉をどのようにしていくのか議論がつきません。

先進諸国の中で最も高齢化が進む日本では国民の誰もが『健康保険』に加入しています。

この事を国民皆保険と呼びますが、世界でもこの国民皆保険を実現できている国は殆どありません。

国民が疾病によって生活を脅かされることがないように始まった健康保険制度。

日本が太平洋戦争後の成長モデルとしてきたアメリカでは健康保険に加入できない人が多すぎて、オバマ前大統領はこの救済制度を創ろうとしましたが様々な方面からの反対を受け、トランプ大統領はこの医療制度(オバマケア)を廃止へと追い込みました。

救急車は有料、盲腸による手術は256万円(ホノルルの場合)など治療によって破産をする人も少なくありません。

この差が健康保険制度の違いであり、自由診療という考え方の根底にあります。

1:日本の健康保険制度

日本では健康保険制度のお陰で国民の誰もがどこに住んでいても均質な医療を、少ない自己負担で受けることができます。

現役世代であれば治療費の3割または高額療養費による上限(一般所得の方の場合)9万円前後までの自己負担です。

その一方で健康保険適用の治療として認められるまでのハードルが高く、諸外国では既に認可されている治療や投薬であっても認可されていない場合には健康保険との併用が認められていません。

診察・検査・治療これらの全てが自己負担となります。

2:自由診療の治療の代表例

自由診療で最も身近な治療は次の3種類です。

  1. 歯科治療
  2. 出産
  3. がん治療

Ⅰ.歯科治療

たとえば虫歯にかかったとして歯の治療をしようと考えた時に

健康保険適用と適用外だとどのような違いがあるのでしょうか?

こちらの歯科医院のWebページが分かりやすかったので参考に見てみました。

健康保険適用の治療であればおよそ9,000円、硬質レジンを使用します。

少ない治療費で治せますが見た目や変色のしにくさ、摩耗のしにくさ、人体との相性などを考慮したものを

使って治療しようとすると健康保険適用外となり

ハイブリットセラミック66,000円。

摩耗のしにくさなどを使うとなるとオールセラミック140,000円と治療費が高くなっていきます。

Ⅱ.出産

出産は疾病ではないというのが日本の現在の健康保険制度の基本的な考え方です。

一方で出産を補助する様々な社会保障や福祉として、雇用保険(産休・育休制度)や健康保険(出産一時金)などがあります。

また異常分娩や妊娠糖尿病(中毒症)などは健康保険による3割負担または高額療養費制度で治療を受けることができます。

一般的な医療保険の場合、普通分娩では入院給付金を受け取ることはできません。一方で健康保険と連動するように異常分娩等による治療は給付対象となっている場合が殆どです。近年では普通分娩でも給付が受けられる少額短期保険や、加入から所定期間が過ぎたのちに特定不妊治療を受けると給付が受け取れる民間の医療保険も登場するなど出産に関わる様々なニーズに応える保障も登場しています。

Ⅲ.がん治療

日本人の二人に一人が罹患する「がん」。この治療も健康保険が適用できます。

かつて不治の病と言われたがんも、早期発見や医療の進歩によって助かる人も増えています。

その一方で上記2つの治療と異なり、生命に関わる可能性が最も高い疾病であるがんは経済的な負担が

他の疾病と異なる面もあります。

医師によるアンケートでは

「患者の経済的事情により、がん診療計画の変更・見直しを行ったことがある」と答える医師は70%を超えるという統計があります。

これは経済的な負担に耐えられないために自由診療を含めた治療を断念する人が少なくないことを表しています。

一方で経済的な備えの有無によって半数以上の医師が自由診療を治療手段として考慮するという統計、

患者から最新の自由診療について相談を受けるという医師は7割を超えています。

がんの治療は大きく次の三種類と言われています。

  1. 手術
  2. 放射線治療
  3. 抗がん剤治療

ⅰ.手術

多くの手術は健康保険適用ですが、近年科学技術の発達により外科医のサポートをロボットがするなどの手術も登場しています。

京都大学医学部付属病院、東京大学医学部附属病院などを筆頭に内視鏡手術支援ロボット(ダビンチ)による治療は2009年に厚生労働省の薬事承認を取得しました。高解像度の3D画像モニターを射ながらアームを操り、幹部の複雑な剥離や切開、再建術などを内視鏡を使い行います。

従来の手術と比べ患者の身体に負担が少ないこれらの手術は健康保険が一部適用となりますが次のように費用も高額となります。

子宮がん(子宮悪性腫瘍手術) 費用153万円

食道がん(食堂悪性腫瘍手術) 費用341万円

ⅱ.放射線治療

放射線治療の発展形と期待されている陽子線治療や重粒子線治療。

従来の放射線治療では標的とするがん細胞の周囲の細胞にまでダメージを与えることがあり、患者の負担も少なくありませんでした。

アメリカで開発がされ普及している陽子線治療は従来の欠点をカバーし、ピンポイントでがん細胞に放射線を照射する高度な医療です。

また群馬大学が国際的な先頭に立ち臨床を勧めている重粒子線治療。

同じく放射線治療の発展形で、がんの種類や部位によっても異なりますが、陽子線治療よりもがん細胞への殺傷力を高めた性能を誇っているとされ、陽子線治療と併せて混合医療が認められている『先進医療』として認可されています。

しかしいずれもまだ治療を受けられる拠点も限られており、その費用負担も少なくありません。

年間実施件数 一件あたり平均費用
陽子線治療 2,916件 263万円
重粒子線治療 1,639件 308万円

ⅲ.抗がん剤治療

国内未承認の抗がん剤治療。時折ニュースなどで取り上げられますがその費用は決して安くはありません。

たとえば度々取り上げられたがん免疫治療薬『オプジーボ』(ニボルマブ)は2017年4月から頸部がんの一部治療に使う場合には健康保険適用となりました。

これまでも他のがん治療で使う分には健康保険適用が認められているが、その他のがん治療などで使用する場合には適用外となる薬剤を「適応外薬」と呼び、オプジーボもその一つでした。(悪性黒色腫では認められていた)

がんの抗がん剤治療は1サイクル(クール)単位で行われることが一般的です。

投与する週2週の場合、休養する週を1週設けて3~4週で1クールと考えます。

オプジーボの参考価格は健康保険適用前は40㎎/4ml 1瓶で216,000円

1サイクルあたり1,309,520円

またそもそも国内の健康保険では承認されていない薬剤を「未承認薬」と呼びます。

欧米では同じく悪性黒色腫に効果が期待できるとされている「ペンブロリズマブ」は100㎎/4ml 1瓶1,150,000円

1サイクル2,516,960円

3:混合医療

健康保険と自由診療を併用する治療を混合医療と呼びますが、この混合医療の中で診察や検査などの部分だけを健康保険適用とし、治療そのものは自由診療とする特別な認可を受けたものを『先進医療』と呼びます。

また患者が医療機関に申し出を行うことで、国の迅速な審査で健康保険が適用されない治療でも保険診療と併用できる『患者申出療養』が2016年4月から始まり、国内未承認の抗がん剤などの保険外診療の治療でも保険診療を併用できるようになるなど今後ますます治療の質や効果を健康保険が認める以外に求めることは進んでいくと考えられます。

まとめ

健康保険制度は最低限の医療を、国民の誰もが受けられるように創られた制度です。

利用者が3割負担ということは7割は国が負担をしているということを意味します。

ここに加えて高額療養費制度、後期高齢者医療制度(75歳以上自己負担1割負担)など国が負担している医療費の割合は莫大な金額に及びます。

画像は国の医療費の総額です。

このうちの約3割を利用者が、約7割を加入者が支払う保険料と足りない部分は国が国債を発行して補っています。

日本の税収は約42兆円。このうち26兆円以上を国が健康保険のためだけに負担しているのです。

2025年には団塊の世代が75歳以上を迎え、国の医療費負担は税収を上回ります。

治療を受ける患者からすれば、どんな治療でも健康保険が適用であってほしいと感じる部分もあるかもしれませんが、

国の財源には限界があることを考えるとそれ以上の治療は自助努力で補う必要があることを我々は理解する必要があります。

日本の国債(借金)の総額は国民が求めるがまま、その財源の裏付けがないままに拡大し続けた社会保障費によるツケが積もり積もったために起きた問題です。

→「NHKスペシャル 862兆円借金はこうして膨らんだ

来週は今回取り上げた先進医療について掘り下げていきたいと思います。

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