つみたてNISAのウソ。森金融庁前長官のその後とスルガ銀行融資問題

金融庁の鳴り物入りで始まった「つみたてNISA」は森信親前金融庁長官が在任中に

日本の金融業界への警鐘と、資産運用業界への”いくつかの狙い”があって2018年1月より導入されました。

金融庁長官は通常2年の任期で、森長官は金融庁20年の歴史の中で例外的に3年目の続投を任された3人目の長官でした。

「最”恐”で最”強”の長官」とも呼ばれた空気を読まない、忖度をしない森長官は銀行改革(特に地銀)にも積極的で、

これまで日本では長らく続いてきた銀行の融資(貸し倒れの少ない相手先へ融資)に一石を投じ、バッサリ。

積極的に融資をするスルガ銀行のビジネスモデルを絶賛していました。

世界一の仮想通貨取引所を日本に設け、フィンテックで世界の先進国をけん引する金融立国へ。

証券業界の回転売買や資産形成に相応しくないとされる商品ジャンルの露骨な否定、保険業界における手数料開示や金融業界全体に求めたフィデュ―シャリ―・デューティー(FD)宣言などわずか3年の間に尋常ではないペースで改革を断行しました。

仮想通貨への規制などを世界で最初に取り入れ、改正資金決済法の改革、株式などの伝統的な投資対象で欧米の後塵を拝す状況からの大逆転を狙いました。

ところが2018年にスルガ銀行の融資先であるシェアハウス「かぼちゃの馬車」の破綻に伴って、

他行を含むサブリース融資のための審査で預金残高の偽装など組織ぐるみの作為的なことがあちこちで

行われていたことが指摘されると貸し倒れのリスクが高い融資者に金利の高いローンを

積極的に貸し出していたスルガ銀行の在り方に批判が集中し、それを持ち上げて煽ったのは金融庁であると掌を返して批判を始めました。(後にレオパレスなどのサブリース、一括借り上げ契約の家賃保証にまで飛び火)

また仮想通貨の度重なる流出事件もあり、内閣府・財務省などからの信頼は失墜。

結果、3年の満了をもって金融庁長官を退任をしました。

(別に金融機関や業者がやったことが悪で森前長官が悪いわけではないのですが)

「最強」と謳われた森信親・金融庁長官の「悲しき最後」

 

後任に遠藤監督局長(当時)が現在は長官を務めています。

森前長官の退任は任期満了の体裁を取りつつ事実上のスルガ銀行不正融資問題、仮想通貨バブルに対する取引所規制への引責であり、金融行政の指導の杜撰さが露呈した形になります。

遠藤長官は森前長官の改革の流れを踏襲しつつも、目立った大きな改革については事実上の財務大臣(麻生太郎副総理)の傀儡となっています。

 

つみたてNISAの理念”森レポート”の功罪

つみたてNISAを創設すると発表した2017年4月の講演の内容が金融庁Webページに今でも公開されています。

日本の資産運用業界への期待』(通称:森レポート)

この中で森長官は次のように触れてインデックス型の投資信託を中心とした積立投資非課税制度として発表をしました。

”米国では、企業のファンダメンタル価値を評価する投資家の層が厚いため、市場の効率化が進み、インデックス戦略が有効に機能していると言われていますが(中略)インデックス投信が一般的にアクティブ型投信に比べリターンが高いとのマルキールとエリスの主張は、日本株投信についても当てはまるように思えます。”

まぁ、不正解です。きちんとした投資を理解しているIFAや証券外務員は誰でも理解しています。

“米国では、企業のファンダメンタル価値を評価する投資家の層が厚いため”と前置きをしていますが、日本で企業のファンダメンタル価値を評価している投資家なんて厚くないのだから機能しないのは自明の理です。

株ファンダメンタルズ分析とは

というか”思えます”だから個人の意見を主張しているだけですが、まぁ嘘ですよ。

森長官は投資のプロではありませんし、経済学者でもなければ、この時点ではただの官僚です。

世の中の大部分の人は”官僚”などの人を頭の良い人と思いたいのでしょうけれど彼らは教科書的なお勉強は得意でしたが、記憶力や答えのある問題を解く能力と答えのない社会的問題を解く社会人に求められる能力は全くの別物です。

学生の頃に比べられる知識や記憶力、思考能力、論理的頭脳と運動能力や筋力、瞬発力、直感力が別物であるように社会では答えのない問題を解く力が求められます。資産形成に求められているものも学力とは全くの別物です。

優秀な人たちが相談して出した結論なんてロクなもんじゃないことしかないと言っても過言ではありません。

机上の空論で資産形成はできません。

森長官の語っていた”インデックス型投信がアクティブ型投信に比べてリターンが高い”は”過去のデータからみる”投資市場の分析と”ファンダメンタル投資が機能しているアメリカの株式市場”においては有効です。(これも過去の話になりつつあるけれど)

 

多くのIFAや証券外務員は日々の投資信託の運用状況を見ていますので、データ化される前にインデックスよりアクティブの方が結果を出すことが増えていることを感じ始めています。

データとして確立され公表される頃にはデータは次の状況になっている事も少なくありません。どのアクティブ型でも良いわけではありませんが、きちんとしたファンドの組み合わせを考慮していればアクティブ型投信は非常に有効な投資対象です。

インデックスよりアクティブの方がパフォーマンスが高い日本株式市場の何故?

インデックス型投資信託がアクティブ型よりも高いパフォーマンスを発揮するために必要な市場環境に日本の株式市場はありません。

(繰り返しますが海外のインデックスも状況がずいぶん昔に変わりつつある)

短期投資(10年未満)は需給バランスやトレード要素での高度な分析とハイリスクな取引によって行われますが、国の経済成長などを要因とする長期保有(10年以上)が前提の資産形成商品である投資信託において10年超でアクティブ型の方がパフォーマンスが良いという実績がQUICK資産運用研究所によって発表され公表されています。(短期10年未満で手放すとマイナス運用リスクが拡大する)

またこの原因になっているのがここ数年、何度か取り上げられている東京証券取引所の再編です。

東証一部・二部・マザーズ・ジャスダックという4市場と、札幌・東京(大阪は合併済)・名古屋・福岡の4つの取引所。

99%が東京証券取引所には約3,600社以上が上場しています。

時価総額250億円以上で上場できる東証一部、20億以上で上場できる東証2部…

同じ東証一部でも大きな隔たりがあり、250億円超〜500億円までの企業(ここまでで約1600社)、500億円超〜1000億円までの企業約300社、1000億円超の企業約700社…これが同じ市場というアンバランスが生じています。

加えて立て続けに起こっている大企業の不祥事、粉飾決算、法令違反など企業ガバナンス、コンプライアンス違反、社会的モラルの欠如。

東証に上場しているだけでインデックスやETFで黙っていても資金が流入してくる投資環境…健全と呼べるでしょうか。

東証プレミアム市場の誕生と再編案が本格化

これらの市場の健全化のために日本証券取引所(JPX)は東京証券取引所一部、二部、ジャスダック、マザーズの再編を目指しています。

東証一部を除く新興市場の統合、そして一部の上位銘柄をプレミアム市場と位置付けるという構想はJPX日経インデックス400という新しい指標が作られた頃から度々取り上げられてきました。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42019200U9A300C1DTA000/

私はインデックス投資はある面で間違っていると考えています。コストの低いインデックス型投信であれば少しのリターンでも投資家のリターンになりやすいというのは机上の空論であると考えているからです。

日本の証券取引所の区分再編で議論されているように日本の多くの企業は上場がゴールとなってしまい、上場後に長期的に成長を続けていると感じる企業は殆どありません。

これは株式投資の原則である「企業の成長力」への投資を否定することになります。

私に言わせれば企業が上場時をピークに成長しなくなる原因を作っているのがインデックス投資です。

日銀やGPIFなどが公的資金をTOPIXなどのインデックス型投信やETFを通じて買い支えています。

インデックス型に投資をするということはその指標に含まれている企業に満遍なく投資をすることに他なりません。

株式投資で資金流入があれば、企業はその資金を経営のために活用できます。

東証一部に上場しているだけで資金の集まる成長していない企業に投資をする必然性がありません。

「株式投資はその企業の成長へ投資をする」が目的であり、王道だからです。

東証一部上場企業は”サラリーマン企業”と私は呼んでいます。

サラリーマンの経営者が事なかれ主義で空気を読んで出世して、自分のポストを守ることだけに保身して経営されている企業に価値など1円もないからです。

経済アナリストたちはドヤ顔で「PBR1.0倍を割り込んでいる日本株は割安だ」と宣っていますが、私に言わせればPER1.0倍を下回っているのは日本企業が割安なのではなく、1円で買っても0.9円の価値しかないからです。

誰が解散価値で投資をしても損をすると分かっている企業の株など買うものでしょうか。

割安を既に通り越しているのです。1.0倍の価値に長い間回復できない、する見込みがないと市場に判断されているのです。

日本企業のごくごく一部を除けば投資価値などありません。だからプレミアム市場という発想はあながち間違いではありません。しかし本来は全く逆であるべきだと考えています。

時価総額はともかく、新興企業ほど成長力に期待ができ、小回りが利き、経営判断もスムーズにできます。また資金を必要としています。

日本企業の99%は中小企業と考えれば店頭非公開企業は別として、中小型企業にこそ投資資金は投資信託の仕組みを活用して投資が活性化されるべきです。

これらをインデックスなど作ろうものなら潰れそうな企業まで含んでしまいますので、選抜が必要です。

だからファンドマネージャーの目利きが必要で、だからこそ信託報酬が高くともきちんと目利きをしてくれるアクティブ型投信が求められていると私は考えています。

停滞し始めた”つみたてNISA”は新陳代謝できるか

2019年3月27日時点でつみたてNISA対象商品は162本ですが、そのうち142本はインデックス型投資信託です。

(アクティブ型17本、ETF3本)

最初は毎月次々と認定をしていた金融庁でしたが、2018年10月31日以降に金融庁はつみたてNISA対象商品の発表を保留しています。

販売手数料ゼロ、信託期間が20年以上または無期限、信託報酬が一定率以下などの諸条件さえ満たせば新設商品でさえ対象商品として登録される形骸化している制度の商品なんて怖くて私は選ばないですけど、

世の中のつみたてNISAを申し込む人は「金融庁が認めた手数料が安くて優良な商品」に投資をしていると認識している人も少なくありません。

(そんなわけないでしょうに)

つみたてNISAは制度開始から約1年が経過して100万口座の利用者がいます。

多いでしょうか?

私は少なすぎると考えています。

2014年に先行してスタートした一般NISAは5年で1100万口座、年間200〜300万口座の開設ペースでした。

2002〜2016年末までに個人型確定拠出年金に加入した人は30.6万口座でした。2017年に対象者を大幅に拡大してiDeCoとなって3年目に入りましたが1月時点で110万口座です。これも少な過ぎます。

まぁ、冷静に考えれば所得が800万以上とか1000万以上の人以外はあまりやる価値さえない制度とも解釈できる制度なのでこんなもんだろうというのが実態ですが。

新規受付を見送っているのは大幅な制度改正のための布石でしょうか?

私にはお役所の「俺たち世の中を変える仕事をしてやったぜ、ヒャッハー!!」という自己満足で、立案者の森長官も退官されて既にどうでも良い制度に成り下がったのではないかと心配しています。

そもそもプレミアム市場が誕生して、東証一部が現在の基準から変わればTOPIXなどの指標も見直されます。

そうすればその指標と連動するインデックス型は繰り上げ償還される憂き目に遭うファンドも出てきます。買い直しを禁止しているNISAや特定のファンドのみに限定して、買い直しを禁止しているつみたてNISAなど怖くて手が出せません。

森前長官の退任後のお仕事は?

森前長官は退任後、コロンビア大学国際公共政策大学院の非常勤講師となりました。

https://sipa.columbia.edu/faculty-research/faculty-directory/nobuchika-mori

紹介文の中では経歴やジャンルとして金融庁時代に銀行改革や日本の金融改革を行ったことが書かれていますが…別に森さんが悪いわけじゃないけど、日本の金融業界での失敗を欧米諸国がどう捉えるのでしょうか。

コロンビア大学は外国からの留学生が多く、またアメリカや国連の要職に就いた人も大勢います。

例えば卒業生の中にはセオドア・ルーズベルト大統領(日露戦争終結)、フランクリン・ルーズベルト大統領(ニューディール政策)、アル・ゴア副大統領(インターネット普及のきっかけを作った情報スーパーハイウェイ構想を提唱、ナノテクノロジーの開発を指導)、オバマ大統領(初のアフリカ系大統領、オバマ・ケア、核なき世界)、コフィ・アナン国連事務局長、アラン・グリーンスパンFRB議長など錚々たる面子です。(日本人だと湯川秀樹氏や中退したけれど宇多田ヒカルなどもここの学生でした)

ちなみに学生として留学するためにはTOEFL(PBT)で600点ないし、TOEFL(iBT)100点(TOEICで880点相当)、IELTSで7.5点と非常に高いレベルの英語力が求められます。

加えて入学の難易度は合格率6.89%、世界の大学ベスト11位にランクインしている大学です。

(1位ハーバード大学、2位ケンブリッジ大学、3位イェール大学…16位スタンフォード大学…22位東京大学…)

http://www.visualecture.com/wordpress/?page_id=410

寮費・食費で年間140万円、加えて年間550万円ほどの学費がかかるそうです。森前長官は非常勤講師として行っているわけですから学費はかかりませんが。

個人的に森前長官は学者肌の人だと思っています。今後の日本経済を官僚としてではなく、学者の立場から分析をしてどのように今後の政策立案や方向性への提言を示してくれるのかに期待したいと思っています。

まぁ、退官したのだから何もしなくても誰も何にも言わんでしょうけれど、退職した後の公務員ってはっきり言ってダサい人が多いので、森前長官には日本の経済と資産運用業界にいつまでも忖度のない、バッサリとした切れ味で物申してほしいですね。

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