保険の歴史1〜損害保険から始まったリスクを予め分け合う知恵と生命保険誕生

 

保険(Insurance)という考え方は15世紀ころ、大航海時代に積み荷や奴隷を船で運搬・運送する際に難破や脱走などに際して船乗りたちが掛け金を出し合って大きなお財布を作り、予め約束した損害が生じた際にそこから損失を補填するという商習慣が起源とされています。

起きるか起こらないか分からないが、起きた際には手に負えない損失リスクを予め加入者同士で分け合う

これが保険の根源にある考え方です。

 

その後時代は進み、産業革命によって都市化が進んでいたイギリスのロンドンで1666年9月2日に火事が発生しました。

パン屋の小さな出火は風に煽られ、ローマ人から守るための壁に囲まれた現在のシティ一帯を燃やし続けました。

4日間に渡り燃え続けた火災は、ロンドン都市部の85%を焼く大災害となり現在もロンドン市街地にその記念塔(モニュメント)が建っています。

1678年に大火を忘れる事がないようにと建てられた塔は、ヨーロッパ最大の金融街シティに今も残り、イングランド銀行の最寄駅バンク駅とモニュメント駅(日本における永田町駅・赤坂見附駅みたいな関係?)からほど近い場所にあります。

 

イギリスではこのロンドン大火を契機に火災保険が誕生しました。ロンドンと言えば1686年に誕生したロイズ保険が有名ですが、こちらは世の中の保険会社がこの大火を契機に誕生した火災保険に軸足を移した中で海上保険を独占的に扱い財を成した会社となります。

損害保険会社の社名に「○○海上火災保険」となっているのはこの誕生した順番になっている名残と言えます。

 

その後更に時代は進み、ギルドや教会などの特定の職業組合が死亡時における経済的損失を予め負担する掛け金に応じて約束する仕組みとして”生命保険”(Life Insurance)が誕生します。

しかしこの誕生したばかりの保険は葬儀費用のためなどの現在における葬儀会社の互助会や共済のような仕組みで、高齢の者も若い者も一律の掛け金を負担する仕組みだったために若者たちから不満が募り、短期間のうちに次々と潰れてしまいました。

1693年、後に彗星に名前が付くことになるエドモンド・ハレー(英国ケンブリッジ大学卒の超絶エリート)は現在のポーランドで5年間にわたって記録された住民の詳細な死亡率を基に、統計学的に成立可能な終身年金の論文を発表します。

イギリス政府はこれを基礎とした存命中ずっと受け取れる公的年金制度の確立をします。

またこの死亡率という考え方(大数の法則)を基礎として、ジェームス・ドドソンという数学者が18世紀に、誕生日を数日過ぎただけで生命保険に加入できないという事態に会い、こんな根拠のない年齢制限で入れないのはおかしいとしてロンドン中の墓をひっくり返して性別、死亡年齢、死亡原因をまとめ上げ、自国民の数学的根拠を元に自分は加入できると当時の保険会社に突きつけたことがきっかけとなり1762年に世界で初めて生命表による生命保険会社が誕生することになります。

今で言えばクレーマー扱いとなる所ですが(苦笑)

またドドソンはこの生命保険の保険料にまで手を加え、それまでの年齢が高くなるにつれて保険料がどんどん高くなっていく仕組みから平準払と呼ばれる一度加入年齢を若く加入した人はそのままの保険料を支払うことで保障が得られる仕組みまで生み出してしまう天才数学者でした。

しかし、1757年に偉大なるドドソンはこの仕組みの生命保険会社「エクイタブル生命保険」の誕生を待たずに亡くなってしまいました。

このエドモンド・ハレーとジェイムズ・ドドソンによって作られた時代の生命保険を”近世生命保険”と呼び、多くの日本人が今尚、認識している生命保険といえばこの時代のイメージのままということが往々にしてあります。

あえて”近代”と分けて呼ぶ点に今の生命保険とは異なることがそれとなく強調されていますね。

 

またこの時代の死亡率に基づく統計学の確立が年金と生命保険という現在の生命保険会社が扱う主要な二つの役割を包含している点も忘れてはいけません。

社会保障への不安が高まる中で、民間の保険会社の提供する補完的役割の重要性は年々高まっていますが、正しくその機能と役割を自分の人生に取り込んでいきたいものですね。

生命保険(Life Insurance)とは、人生の経済的なリスクを分け合うものなのですから。

 

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