毎月分配型投信は本当に悪なのか?

2018年1月から始まるつみたてNISA。

金融庁の鳴り物入りで始まる同制度は新たな個人投資家からの期待が過熱する一方で、

既に投資をしている個人投資家からは冷ややかな目線で観られる傾向があります。

これはネット証券やマネー関連雑誌などでその制度を推す傾向にあり、

店頭窓口で販売をする大手証券会社や銀行では冷ややかな態度であることと類似の傾向にあります。

 

つみたてNISAは森レポート(2017年4月7日)でも言われているように

「個人の資産形成を支援するための税制上の優遇措置」です。

欧米などの先進国が日本のバブル崩壊後25年でその資産を大きく増やしたのと

対称的に日本では相変わらず預貯金に資産の50%近くを置いたままです。

 

私は個人的にはつみたてNISAは非常に良い制度だと考えていますが、

その一方で金融庁の思惑が滲み出ている制度上の縛りや金融庁談話から

これは何処か疑ってかかる必要がある制度でもあると考えています。

その第一の理由としては常々指摘している「3つの致命的な欠点」がありますが、

今回ご紹介する「毎月分配型投信」の問題についても触れていきたいと思います。

 

毎月分配型投信とは

 

投資信託(投信、ファンド)には一般の企業のように決算が必ず設けられています。

多くの企業の決算が1年に1度であるように、投資信託も最低1年に1回の決算を行い、

投資家(受益者)は決算報告書(ディスクロージャー資料)を受け取る権利があります。

これは一つの例外もなく、もし1年以上投資していても決算報告書が送られてこない場合には

その投資は詐欺である可能性が極めて高いと考えてください。

(決算月は多くの場合、年に一度のため何月が決算か必ず確認してください。

決算から2ヶ月以内に報告書が郵送されるのが基本的なルールです)

 

決算報告書には実に様々なそのファンドの運用方針や、運用実績(ハイライト)が書かれており、

今後の投資の判断をする大変重要なものですが読み方についてはセミナーなど別の機会でご紹介したいと思います。

 

決算は最短1ヶ月単位で行うこともできれば、1年に1度ということもあります。

毎月分配型投信とはこの決算毎月あるタイプの投資信託のことです。

 

決算が毎月あると何がいけない?

 

様々なところで指摘されていますが毎月分配型とは

「毎月必ず配当を運用資産の◯%支払いますよ」という投信のことです。

そもそも株価や為替、金利は日々変動するものですから毎月必ず配当を◯%出すと

確約することは大変難しいということを認識する必要があります。

 

企業の決算と配当について考えてみれば理解しやすいでしょう。

企業の決算において配当とはどのような時に出るでしょうか?

企業の業績が良く、純利益が出た際に配当は出ます。

もし企業業績が悪いのに配当を出す会社があるとしたら

株主はそれについて異議を申し立てることができます。

そうしなければ会社が倒産してしまう危険性が増加してしまうためです。

 

企業における配当は利益の還元という一面があり、また配当を出す量を減らすことで

企業の手元に資金をどれくらい残すのかという経営戦略(ファイナンス・ストラテジー)でもあります。

近年、「内部留保」について課税しようとか話が出ていることがありますが、

企業は倒産をするわけにはいきませんので、内部留保を様々な形で貯えています。

また従業員の賃金引上げなどをする場合も、社会保険料は労使折半のため給与を上げると

従業員の収入を増やす以上に従業員・企業双方で国へ社会保険料を多く支払う必要があります。

これでは企業は従業員への報酬アップという手段は取りにくいと言わざるを得ません。

 

 

投資信託における配当も原則として企業と同様です。

運用益が上がり、それを投資家の出資比率に応じて分配をする配当は出しすぎれば

その投資信託が解散してしまうリスクを増大し、

出さなければ儲かっていない投資信託と視られて

注目や人気が集まりづらいというジレンマを抱えてしまいます。

そこで毎月分配型の投資信託には2種類の配当を設けることが認められました。

普通分配と特別分配という制度です。

 

配当が非課税!?そんなうまい話あるはずがない

 

普通分配とは投資信託が運用益を挙げた際、決算時に分配を行う仕組みのものです。

企業の配当と基本的によく似た性質のものです。

 

 

一方で特別分配という配当があり、投資信託が運用益を挙げられなくても投資家に配当を出す仕組みのものです。

では運用益を挙げていない投資信託がどのようにして配当を出しているのでしょうか?

答えは単純で、自分の運用資産を取り崩して配当を出しているのです。

 

NISAなどの非課税制度を利用している場合を除けば、

配当には20.315%の税金がかかります。

特別配当を「配当に税金がかからない特別な配当」と喜んで誤認をしている個人投資家がいますが、

自分のお金がただ戻ってきただけなので税金を課せられるはずがないのです。

 

毎月分配型が日本では70%を占める

 

しかし毎月分配型の投資信託は日本では約70%を占めている時代もありました。

何故、個人投資家は毎月分配型の投資信託を選ぶのでしょうか?

ここには日本人固有のお金に対する意識(考え方)があります。

 

日本人の個人金融資産約1800兆円の過半数を65歳以上が保有しています。

彼らの多くは退職金の運用を銀行預金では増えないことを認識しており、

また年金だけでは生活をしていくことが困難であることも感じています。

そこで毎月分配型の投資信託にお金を入れて、増えたらラッキー!

増えなくても一定額の収入が毎月入ってくると給与感覚で月々の収支を計算ができるという

「仕組み」として毎月分配型の投資信託を選んでいる方が一定数いるのです。

 

考えてみれば国民年金・厚生年金は偶数月にまとめて2か月分が支払われる

ATMもない時代のままの仕組みが今も引き継がれています。

2か月に一度の収入というのは半分を残し、半分だけで生活をするということになりますが

給与所得者の金銭感覚を38年ないし40年以上過ごしてきた人にとってお金を計画的に使うことは

大変難しいことになってしまっているという現実があるのです。

 

証券業界や資産運用業界はそんな彼らのこれまでのライフスタイル(お金の使い方)についての

ニーズを満たす商品をひたすらに造り続けてきました。

 

個人投資家「○ラえもーん、そんな僕を助けてよ!」

○ラえもん「○び太君は仕方ないなぁ。しょうがない!そんな君には・・・」

 

パパパパーン♪

毎月分配型投資信託♪(ダミ声で)

 

長期で資産を育てるつもりはありません。

何故なら増やすよりも毎月分配される、毎月決算のしやすい商品構成をしているからです。

運用がうまく行かなくても資産を顧客に戻すだけで良いのでリスクを背負わなくてもよいのです。

その時々の話題のテーマに合わせて商品を作り替えていくだけの簡単な作業です。

(投資のプロでなくても大丈夫!初心者歓迎!)

販売手数料がっぽり、信託報酬がっぽり。

数年も経てば資産がどんどん取り崩されて、投資信託は解散になります。

すると次のテーマの毎月分配型投資信託に残ったお金や他の資産を追加してもらい

新たに販売手数料チャリーン♪信託報酬チャリーン♪

それでも成り立つのです。

証券会社や運用会社は顧客のニーズに合った商品を提供しているからです。

 

現役世代で資産を増やそうという方で毎月分配型投資信託を買う人は

無知の方か、資産を増やす気がない投資家くらいです。

一方で老後を迎えた方たちにとってそれは必要な「仕組み」なのです。

 

そして仕組みを提供してもらって手数料を払って、宝くじのように当たれば(増えれば)ラッキー。

誰も悪くないのです。

毎月分配型70%というのは65歳以上の個人投資家の割合とほぼ一致するのです。

失われた20年の犯人づくりに躍起の金融庁

 

その一方で大蔵省から分離して作られた金融行政を監督する金融庁は

バブル崩壊後25年が経ち、一向に上向かない日本の投資環境についての責任を問われています。

 

この25年(1989-2015)で世界の投資環境は資産を6倍に増やしました。

しかし日本は大きくシェアを落とし、額面ではわずかに資産を増やしたにすぎません。

 

金融庁が目を付けたのは「販売手数料・信託報酬」という手数料を

日本の投資信託販売では取りすぎているというプロパガンダ(情報操作)です。

 

森レポートでは国内の人気上位トップ10の投資信託の販売手数料は3.1%、信託報酬1.5%も取っている。

最初からこんなに取られてしまっては世界的な低金利時代に資産を投資した以上に増やすことは困難であるとしています。

 

世界的な低金利…?

何故、投資の話をしているのに株式の利回りではなくて

低金利である銀行預金の金利の話を比較に出しているのでしょうか?

 

ご存知でしょうか?

国内の投資信託の平均利回りは3~4%です。

海外の投資信託の平均利回りは7~8%です。

 

長期で投資をするほど資産の目減りは起こりづらくなり、

投資家は短期ではなく長期の投資という観点で投資を行うべきであるというのは

近代の投資理論において多くの方が認識をしていることですが、

比較するべきは投資での利回りではないでしょうか?

 

証券会社がいけなかったのでしょうか?

投資信託を作る運用会社がいけなかったのでしょうか?

どこの業界に粗利益ゼロで商品を販売する業界があるでしょうか?

販売手数料ゼロというつみたてNISAは商売(投資信託の販売)で利益を上げてはいけませんということを

金融庁が主導で行っていることです。

 

物を売るビジネスをしている方や、経験のある方は分かるでしょう。

明らかにいびつな、現場を知らない理論だけ先行のつみたてNISAは担ぎ手である販売代理店(窓口)が不在なのです。

→ 大手金融機関、つみたてNISAの取扱商品数を発表!

追加型株式投資信託 月次資金流出TOP20の運用実績

 

金融庁の毎月分配型は資産形成にとって悪であるというプロパガンダに、

マネー雑誌やインターネットメディアもこぞって乗っかっています。

理論上、分配金を出すほどに複利の効果が得られないのは事実ですが、

毎月分配型投信に投資をしている人たちは

複利の効果を本当に欲しいと思っている人とはニーズが違うのはここまで話した通りです。

 

しかし声の大きい意見が世の常識となるという現実を前に

日本では毎月分配型投信は今、ものすごい逆風にさらされています。

かつて70%もあったシェアが現在50%近くにまで急落しているのです。

毎月分配型投信の投資家にとってニーズが仕組みから資産を増やすに変わったのであれば、

これは喜ばしいことですが果たして実態はどうでしょうか?

また気になるのは毎月分配型の投資信託の運用実績が本当はどうだったのかです。

 

下記は2017年10月末の国内追加型株式投信 月次資金流出額TOP20です。

ファンド名称 投信分類

(新QUICK)

設定日 為替リスク

(ヘッジ)

決算回数 手数料上限 月次資金流出額

推計値(億円)

累積リターン

1Y(%)

 ヘッジF SMTBセレクション  その他  2017/01/31  一部

あり

 1  0.00  ▲279  N/A
 新光US-REITオープン  海外REIT  2004/09/30 あり  毎月  3.24  ▲269  13.51
 フィデリティ・USリート・ファンドB  海外REIT  2003/12/09  あり  毎月  3.78  ▲247  14.81
 ラサール・グローバル・REIT(毎月分配)  海外REIT  2004/03/26  あり  毎月  3.24  ▲217  10.61
 LM・オーストラリア高配当株ファンド毎月  先進国株式  2011/09/29  あり  毎月  3.78  ▲180  21.66
 インデックスF225  国内株式  1988/06/17  なし  1  2.16  ▲178  27.91
 ドイチェ高配当インフラ関連(米ドル)毎月  先進国株式  2010/10/28  あり(無)  毎月  3.78  ▲174  8.26
 MHAM株式インデックスファンド225  国内株式  1985/10/25  なし  1  2.16  ▲164  27.85
 ブル3倍日本株ポートフォリオⅣ  その他  2015/09/10  なし  1  2.16  ▲143  94.95
10  ダイワ米国リート・ファンド(毎月)為替H無  海外REIT  2004/05/20  あり  毎月  3.24  ▲140  12.83
11  三菱UFJインデックス225オープン  国内株式  1998/11/09  なし  1  0.54  ▲106  28.27
12  ファンド・マネージャー(国内債券)  国内債券  2007/10/31  なし  1  0.00  ▲106  ▲1.62
13  グローバル・ヘルスケア&バイオ・ファンド  先進国株式  2004/02/27  あり  2  3.24  ▲101  21.86
14  グローバル・ソブリンオープン 毎月決算  先進国債券

(投資適格)

 1997/12/18  一部

あり

 毎月  1.62  ▲95  8.46
15  日経225ノーロードオープン  国内株式  1998/08/21 なし  1  0.00  ▲95  27.58
16  ワールド・リート・オープン(毎月決算型)  海外REIT  2004/07/02  あり  毎月  2.70  ▲94  11.19
17  日本企業価値向上ファンド(限定追加型)  国内株式  2015/04/03  なし  1  3.24  ▲87  26.69
18  JPX日経400アクティブ・プレ・OP毎月  国内株式  2015/02/12  あり

(米ドル)

 毎月  3.24  ▲87  26.46
19  マクロ・トータル・リターン・ファンド  その他  2016/06/21 一部あり  2  3.24  ▲78  13.74
20  野村テンプルトン・トータル・リターンD  グローバル債券

(先進・新興複合)

 2011/08/11  あり  毎月  3.24  ▲78  16.58

 

資金流出とは解約をしている人が増えているということです。

何十億円、時に数百億円というお金が解約によって投資信託から出ていっています。

投資信託は預かり資産が一定以下になると解散をすることが義務付けられています。

ところで、本当に毎月分配型は運用出来ていなかったのでしょうか?

流出トップ20の1年間の累積リターン(右端の列)を見るとなんと1年未満のファンドを除けば

マイナス運用はたった1つしかありません。

18/20はプラス運用だったことが分かります。

 

きちんと資産を増やせているのにある意味、風評被害によって解約が相次いでいるなんて、

日本の個人投資家は本当に…。

さてこんな状態で金融庁に踊らされ、こんな状態でマネー雑誌やウェブの風評に流されたままで

つみたてNISAを始めて本当に皆さん大丈夫ですか?

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