チューリッヒ生命のがん治療保険が改訂目前

2014年に発売開始されたチューリッヒ生命の「終身ガン治療保険プレミアム」が4月2日に初の商品改訂を行います。

新商品名は「終身ガン治療保険プレミアムDX」

同社の存在感を世に知らしめたがん治療保険のリニューアルに期待が集まる一方で、保険料値上げと新しい保障の特徴などをみていきましょう。

2018年3月末までの「終身ガン治療保険プレミアム」とは?

がん保険と言えばアフラックが日本ではかつて独占販売をしていて、解禁された1990年代後半になってもガンの治療のために入院をした場合に日額給付金が支払われるタイプがつい数年前までは圧倒的に主流となっていました。

主契約がガンに限定した入院保険。

特約や主契約の中に手術給付金が含まれているものなど派生系はありますが、基本は主契約である入院を前提となっています。

2014年、チューリッヒ生命の名を保険業界に広めた画期的な商品が「終身ガン治療保険プレミアム」です。

入院日数の短期化で入院を前提とした保障では医療の実情に合っていないとして、日本のガン保険では初めて主契約を公的健康保険制度適用の抗がん剤・ホルモン剤、放射線治療をすると給付金が月額で支払われる保険を発売しました。

給付金額が月額10〜60万円(5万円刻み)で設計が出来、しかも支払い回数は無制限。給付金の支払い上限も無しという内容に他社のガン保険から見直しが進められ、インターネットの評判などでも高評価で初めてガン保険に加入する際にはチューリッヒ生命を選ぶ方も少なくありませんでした。

 

入院や通院、ガン診断給付金は全て特約としていて、分かりやすさと保険料のリーズナブルな点も支持されてきました。

 

商品改訂でどう変わるの?

2018年春の保険料改訂の影響を受けて「終身ガン治療保険プレミアム」は販売停止となり、新たに4月2日より「終身ガン治療保険プレミアムDX」が発売となります。

主契約が次のように変更となります。

改訂前 改訂後
抗がん剤・ホルモン剤治療

放射線治療

10〜60万 10〜30万
回数 無制限 上限あり

えっ!?なんと保険料が割高になって上限がありになってしまうなんて…改悪?

その代わりに新しい保障を主契約に追加となるそうです。

「自由診療抗がん剤・ホルモン剤治療給付金」(ダミ声で)

なんとまたしても日本初の保障を登場させてきました。

日本で未承認の抗がん剤だが欧米などでは承認されている場合にその抗がん剤での治療を希望した際には主契約の倍額の給付金が出て最大12回まで(かつ主契約通算2000万円まで)自由診療でも給付金が受け取れるというもの。

世界のガン治療の研究はどんどん進んでいるので、日本の厚労省の認可(平均3年前後)が追いついていないって事態ありますよね。

そんな時にも新しいガン治療保険なら給付金が受け取れる…今までよりも更に治療に踏み込んだ良さそうな内容となります。

 

放射線治療で本当に必要な費用は?

主契約で最大の給付金30万円に設定して、自由診療抗がん剤治療で60万円…これは凄く画期的です。

この三月末までのプランはあくまでも公的健康保険制度適用の抗がん剤・ホルモン剤、放射線治療でしか給付を受けられなかったのですから、自由診療に範囲を広げるのはより選択肢が増えるという点において大きな前進と言えます。

しかし、ガン治療って果たして放射線治療や抗がん剤・ホルモン剤治療にどれだけのお金が必要なのでしょうか?

 

手術・抗がん剤・放射線の3つはガン治療における標準治療と呼ばれ、健康保険制度適用の治療の基本方針となってます。

ガンにはがん治療ガイドラインによってステージ(がんの大きさや多臓器への転移の度合い)や分類(深度、TNM分類)ごとに治療法を分類しています。

ステージが早い段階で見つかった場合には手術で切り取る。

切れないガンには放射線を放つ。

これらで抑え切れないガンがあるかもしれなければ抗がん剤でガン細胞をやっつける(他の細胞もダメージを受ける)

しかし日本には放射線治療の専門医が非常に少なく、抗がん剤の専門医もまだまだ少ないのが実情です。

放射線や抗がん剤でのガン治療が副作用や苦しいというイメージは専門医ではない放射線技師や抗がん剤の調整をする医師ではない医師が兼任でやらざるを得ないほど人手不足に陥っている事も要因にあります。

 

また日本の健康保険制度はこれまでの長い歴史の中で入院(入院中の手術や入院をしながら抗がん剤を使う)を前提とした治療を基本においてきました。

これに合わせるために民間の医療保障やがん保険も入院日額を主契約としてきました。

しかし少子化によって健康保険制度はこれまでと同じ内容をすでに維持できず、早晩制度として欧米のように通院や在宅療養などを前提とした治療へ大きく舵を切らなければなりません。

健康保険制度そのものがなくなることはないと考えられますが、現在はその移行期間と言えます。制度の在り方は大きく変わると考えておいた方が良いと私を含め多くのFPが考えています。

そんな中で放射線治療や抗がん剤・ホルモン剤など通院でも給付金が無制限に出る同社の終身ガン治療保険プレミアムは大変画期的でした。

何しろ回数制限も上限もないのですから。

 

放射線治療は70グレイ(Gy)という放射線の線量を超えて、治療を受けることはできません。

例えば進行性の乳がんの放射線治療は一回の照射が2グレイ、平日5日間の5週間で計50グレイまでと決められています。

放射線は周囲の細胞にもダメージを与えてしまうため、過剰な放射線を浴びると原発事故に類似した被曝をしてしまうためです。

上記の50グレイで25〜30万円(3割負担の場合)の治療費がかかります。

高額療養費制度がありますので、一般所得(ボーナスを除く月収28〜53万)の方であれば約9万円で済みます。

放射線治療であれば通院ということが多いでしょうから交通費やら諸々考えると10万円という各社の医療保険(60日に一度の支払い)でほぼほぼカバーできる計算になります。

健康保険制度上の定義でボーナスを除く月収83万以上の方でも26万の治療費が治療月に支払うことが出来れば上記の放射線治療を受けることが可能です。

つまり多くの保険会社が医療保障で提供している放射線治療給付金(10万)では所得が高い方の治療費は補填し切れないとなります。

ここでチューリッヒ生命の「終身ガン治療保険プレミアム」が真価を発揮します。

ご加入者の所得に応じて10〜60万円と5万円刻みでプラン設計が可能。

30万円以上は現在のところ放射線治療においては完全にオーバースペックな仕様と言えます。

 

抗がん剤・ホルモン剤治療で本当に必要な費用は?

 

抗がん剤は特定の細胞に働きかける毒ガスなどの兵器開発(マスタードガスなど)の研究過程で生まれたものを、戦争以外に転用させることを目的に使い始められたものです。

このためがん細胞をやっつけるために働けば効果的ですが、それ以外の細胞へのダメージも与える副作用も伴います。

人によってはこの反応が大きく3種類に分類されます。

若くして乳がんとなり、約3000万円のお金をかけて様々な治療をしたがその効果が見られなかった故小林麻央さんはトリプルネガティブ(どの抗がん剤も効かない人)だったとする意見もあります。

現在の日本で使用できる抗がん剤は103種類あります。沢山あるように思えますが、部位ごとに健康保険適用か、自由診療かが細かく分類されています。

ガンは毛根以外の全ての人の部位で発生する病気と言われています。

つまり一つの部位で使える抗がん剤は思いのほか少ないこともあり得るということです。

 

健康保険適用なのに健康保険が使えない抗がん剤治療!?

健康保険適用の抗がん剤であれば前述の放射線治療と同様に3割負担や高額療養費制度で自己負担は限定されます。

一方で日本では同じ抗がん剤なのに肺がんでは健康保険適用だが、乳がんには健康保険が使えない抗がん剤があるということが無数にあります。

もし欧米などで既に乳がんでその抗がん剤が効果的であるとされていても、肺がんでなければ使えない。

自由診療として検査も入院も、当然に薬代も100%自己負担となるのが日本の健康保険制度の「混合診療禁止の原則」です。

ここ数年、メディアで度々取り上げられているオプジーボはその代表的な抗がん剤(ガンが免疫を働かせなくするのを阻害するタイプの薬)と言えます。

身長160cm体重60kgの男性に1年間投与した場合の薬代は3,500万円。

健康保険適用のガンであれば3割負担、また高額療養費制度で個人の自己負担は限られていますが、国と健康保険制度が残りを補填するのですがあまりに高額すぎるとして当初は悪性黒色腫だけとされていた健康保険適用を小児がんやその他のガン治療にも徐々に広げてようとしています。(適用されるガンの種類が増えれば薬価は下げられる)

この3月には新たに4種類のガンにも健康保険適用とするように申請が出されたばかりです。

オプジーボ2018年の薬価を値下げ

 

2016年に解禁された患者申出療養は自由診療患者にとって救世主

 

このような混合診療が日本で認められている数少ないケースが「先進医療」や「患者申出療養」です。

先進医療はそれを受けられる施設や病院・症状などが限定されていますが、患者申出療養は検査・入院などは健康保険適用。治療にかかる薬代や手術代は自由診療という新しい制度です。

非常に選択肢が広がる一方で、果たして幾らになるか事前に想定しづらい保障内容の選定に民間の保険でもまだ一部(というかアクサ生命だけ)しか特約での提供を始めていません。

チューリッヒ生命の新商品も患者申出療養制度を利用しようというものではありません。

自由診療で抗がん剤治療は本当に必要か?

チューリッヒ生命の踏み込んだ自由診療は本来は大変意義のある保障です。

しかし残念ながら自由診療は薬代以外にも検査や入院費用も診察も100%自己負担となってしまいます。

この場合、3割負担でもなく、高額療養費制度は当然利用できません。

果たして月額30万円のマックスで保障を組んだとして、60万円の給付金を受け取り治療費が足りるのでしょうか。

 

またパンフレットでは日本で未承認、欧米で承認された抗がん剤治療を給付対象とするとなっています。

実際に発売解禁となり、約款や詳細な給付金請求の流れを確認しなければ断言出来ませんが、①「国内で他の部位では健康保険適用の抗がん剤」は給付対象になるのか?

②患者申出療養制度での自由診療は給付金対象となるのか、確認をしないと本当に良い保障かは断言できないと思います。

パンフレットの評価ではそのどちらも読み取ることが出来ません。

もし①または②の両方が給付対象だとすれば大変素晴らしい保障ですし、どちらか一方でも加入を検討する価値はあります。

しかしもしも両方とも給付対象外だとしたら使い勝手の良くない保障となってしまいます。

 

無制限か自由診療かどっち!?

一応、この三月末までの加入だと放射線・抗がん剤・ホルモン剤治療は上限なしの無制限で加入が可能です。

一方で4月2日以降は新商品でしか加入が出来ず、保障には上限2000万円が付きます。

 

どちらが良いのでしょうか?

2000万円以上使うかもしれないと考える人は三月中にこれまでの「終身ガン治療保険プレミアム」でしょうし、治療の選択肢が広い方が良いと考えるなら新商品の解禁を待つべきだと思います。

私が考えるに残念なのはチューリッヒ生命が現在の既に加入している契約者に対して特約での自由診療中途付加で今回の自由診療を販売しなかった事が大変気がかりです。

少し前ですがAIG富士生命(現FWD富士生命)が「がんベストゴールド」(初代)を販売した際に「上皮内ガン同額保障」回数無制限という素晴らしい保障をガン診断保険で販売をしていました。

契約数が爆発的に伸びて急遽販売停止となりました。

 

今回の「終身ガン治療保険プレミアム」もチューリッヒ生命を知名度、存在感共に押し上げた商品ですが同じ傾向が見え隠れしています。

健康保険適用の抗がん剤・ホルモン剤、放射線治療無制限ってちょっともしかして保障としてやり過ぎちゃったのかもしれません。

 

【蛇足】放射線・抗がん剤治療を併用する場合はどうなのか?

 

二つの治療も高額療養費制度で合算して計算されるので一般所得なら月9万で十分と考えられます。

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