危険!?銀行と保険会社の共倒れリスク

破綻した保険会社

前回まで金融機関として銀行・証券・保険会社がどのような金融事業を行っているのか、

またその収益源についてご紹介してきました。

バブル崩壊後、日本の金融業界は巨額の不良債権問題という大変な時期を

銀行、証券会社、保険会社が次々に統廃合されて乗り越えてきました。

この合併や統廃合のきっかけとなったのがバブル崩壊による不良債権と株価の下落でした。

今回は銀行と保険会社の危険な共倒れリスクについてご紹介します。

 

日本の不良債権問題

 

バブルの頃に株価や地価高騰で融資の際の担保である土地や株価に高い評価を付けていた金融機関でしたが、

バブル崩壊によって地価下落、株価下落によって回収不能な融資が噴出しました。

 

2002年度、発表されている日本国内の不良債権は43兆円と

日本の一年間の税収(歳入/2015年度)42兆円と同じくらいの額に膨れ上がっていました。

当時は具体的な数字は見えていませんでしたがこれが大変な問題と認識され始めたのがバブル崩壊直後の1995年頃でした。

 

メガバンク誕生とその背景

この難局を乗り切るために金融機関は統廃合を進めました。

1996年、三菱銀行と外国為替専門銀行の東京銀行(横浜正金銀行が前身)が合併して三菱東京銀行が誕生。

2001年には三和銀行、東海銀行、東洋信託銀行が合併してUFJホールディングスが誕生。

2005年には両行が合併して三菱東京UFJ銀行が誕生しました。

 

また2000年には第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行とその関連会社が合併し、みずほホールディングスが誕生。

2001年、住友銀行と三井グループのさくら銀行が合併して三井住友銀行が誕生。

同じく2001年12月には旧野村財閥系の大和銀行(野村銀行)、近畿大阪銀行、奈良銀行が合併した大和銀ホールディングスが誕生。

1991年に協和銀行と埼玉銀行が合併した協和埼玉銀行と両行が合併して、2003年にりそなホールディングスへと移行しました。

 

銀行同士が統合されることによって資本力を増強し、また収益力を改善すること。

更に銀行同士の合併に留まらず、同じ金融業界の証券会社も2000年を過ぎた頃を境に次々と統合していきました。

 

不良債権問題が燻っていた1990年代前半から半ばにかけて、銀行の窮地を救ったのが日本の大手生命保険会社でした。

下落する銀行株を買い支え、銀行へ融資(劣後ローン)を行う…

日本生命、第一生命、住友生命、明治安田生命など日本を代表する大手生保の銀行への株・融資は7兆6,000億円。

銀行は生命保険会社の支援があって不良債権問題の序盤を乗り越え、合併・統合へとこぎつけられたのです。

生命保険会社の破綻危機

 

ところが1990年代半ばを過ぎると今度は生命保険会社が経営危機に陥ります。

保険契約は契約時にその保険の運用利率を固定し、長期の契約における割引を行います。

これを予定利率と呼びますが高度経済成長・バブル期に高い予定利率を契約者に約束していたために

金利下落の影響を受けて予定利率よりも実際の運用利率が低くなってしまう逆サヤに陥ってしまいました。

この逆ザヤになった不足部分は保険会社が負担することになります。

予定利率と国債金利のグラフを重ねると次のようになります。

 

このグラフが示しているのは新たな契約に対してだけで、

保険契約は予定利率固定という契約上の約束があるために保険会社は

逆ザヤを抱え続けることになりました。

1999年度時点で国内生命保険会社全46社が抱えた逆ザヤは1兆6,000億円。

この年の業界利益は9,200億円ですから非常に危機的な状況に陥っていたということは想像に難くありません。

 

1997年 日産生命 あおば生命(プルデンシャル生命へ吸収)
1999年 東邦生命 GEエジソン生命→AIGエジソン生命(2012年プルデンシャルグループ・ジブラルタ生命へ吸収)
2000年 第百生命 マニュライフ生命へ移管
2000年 大正生命 あざみ生命→大和生命
2000年 千代田生命 AIGスター生命(2012年ジブラルタ生命へ吸収)
2000年 協栄生命 米国プルデンシャルファイナンシャルが買収→ジブラルタ生命として再建
2001年 東京生命 T&Dフィナンシャル(太陽生命・大同生命)に吸収
2008年 大正生命 PGF生命(2009年ジブラルタ生命、関連子会社へ)

1997年、日産生命が戦後初の破綻をすると立て続けに国内生保が破綻・経営難であることを発表しました。

これまでに8社の保険会社が破綻。

東京生命を引き受けたT&Dフィナンシャルを除くと7社(大正生命・大和生命は元々同じ会社なので実質6社)が外資の手に渡りました。

※AIGエジソン・AIGスター生命の吸収はリーマンショックによる米国の親会社AIG破たんによるもの、またその金融危機によって引き起こされたことを注釈。

 

バブル崩壊後の生命保険業界の逆ザヤは収益構造上の欠点(ALM、資産負債管理の問題)でもありました。

通常10年契約の契約に対しては10年ものの資産で収益を予想するべきですが

10年超の契約が主である生命保険契約において10年超の収益を予測できる資産が限られていたこと。

多くの生命保険契約は国債で資産運用を行っていますが、

当時はまだ20年国債までしか特定投資家(機関投資家)であっても販売されておらず、

20年超でも契約時点の固定予定利率で契約を行ってきたという反省がありました。

この点は今現在、解消されていない生命保険業界の課題となっています。

 

またこの契約時固定という予定利率の問題を解決する画期的な方法として

2000年に明治安田生命がライフアカウント型(L.A.)と呼ばれる利率変動型の

保険商品を日本で初めて発売開始しました。

※外交員の販売能力の問題で、加入してはいけない保険商品として悪評が広まってしまいましたが。

利率変動は良い面で言えば、金利が上昇していく局面では運用利率が高く設定されるという面があります。

一方で金利が下落していく局面では最低保証の利率が適用されます。

ライフアカウント型の最大の特徴はこの利率を保険会社が市況の情勢に合わせて変更できるという条件を織り込んでいる点です。

 

またこのような商品の開発に至らなかった保険会社でも契約内容の転換を外交員によって行いました。

日本の生命保険会社は高度経済成長~バブル経済期にコストと時間のかかる外交員教育にあまり力を入れてきませんでした。

このため保険に関しての知識や税制などを理解していなくても販売できるセット商品を中心に営業をしてきました。

一般的に言われている『定期付終身保険』『定期付養老保険』と呼ばれる商品などです。

契約者にとって有利な予定利率の高い保険契約は転換によって、予定利率の低い商品に次々に置き換えられていきました。

 

加えて金融庁は2003年の改正保険業法によって、保険会社の経営が危ぶまれる際には

契約時の予定利率を見直すことを可能にするという禁じ手を解禁しました。

但し、実際に経営が危ぶまれて保険会社が予定利率の引き下げが行われるとその保険会社の契約は

信用低下によって解約などが発生、新契約の低下するというモラルハザードが起こり得るとして現実的な

選択肢としては活用できないといわれています。

 

このような地道な営業努力や合併などによって経営の立て直しを行った銀行による株式への基金(融資)と

保険会社の劣後債券を買い支えるという持ちつ持たれつの関係によって金融業界の正常化を目指しました。

不良債権問題はひと段落?

 

2013年末迄に国内生命保険会社の逆ザヤはほぼ解消され、

銀行が抱えていた不良債権問題(43兆円)も2005年度末には18兆円、

2007年度末には12兆円と順調に解消していき、

2015年度末には9兆1430億円にまで解消しました。

→ ダイヤモンド『ついに「逆ざや」解消 生保を苦しめ続けた原因と教訓』

→ 日経新聞『銀行の不良債権が10兆円下回る 3月末、99年以降で初

 

一方で銀行と保険会社がお互いに株や債券などを買い支えるということは、

共倒れになる危険性が極めて高いことを示しています。

不良債権問題が解消しつつある現在、役割が異なる金融機関である銀行と保険会社の適切な距離感について

日本では改めて考えなければならない時期に差し掛かっているといえるでしょう。

 

米国ではリーマンショック後、グローバルなシステム上、重要な金融機関については経営危機に陥れば、世界の金融システムに大きな混乱が及ぶ恐れのあるという懸念があるために、通常の金融機関以上に厳しい規制や資本金の積み増しを行うことを策定、G-SIFIs(ジー・シフィーズ)と呼ばれています。

 

次回は生命保険会社が破綻することによって引き起こされる契約者の不利益・リスクについて

実際に破綻した保険会社の事例を参考にしながらご紹介していきます。

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