先進医療を受けたくても受けられない人

2010年前後から生命保険各社が競って『先進医療特約』を宣伝してきました。

月額わずかジュース一本分ほどで通算1,000~2,000万円までの先進医療が受けられると人気を博してきました。

査定が非常に厳しいため、残念ながら付加できなかった方を除けば多くの方が加入している先進医療特約ですが、実態としては『先進医療特約をつけていても先進医療を受けられない』方がいる実態についてお伝えします。

先進医療特約は非常にコストパフォーマンスの良い保障と考えられますが、こと『がん治療』における保障として考えると利用が困難であることを理解しておく必要があると考えています。

 

絶望 先進医療 受けられない

まず日本の医療は健康保険制度を根幹に、『標準治療』と呼ばれるガイドラインに従って検査・治療が行われています。診断されるとベルトコンベア式にこのガイドラインに従った治療を受けるというのが基本です。

『がん治療』の場合には既に標準治療での流れが確立されていて下記のように行われています。

 

がん治療 サイクル

このコラムでも何度となく紹介していますが、日本の健康保険制度は『最低限の医療を国民に廉価で提供する』ことを目指しています。

例えばがんの画期的な治療法として多くの方の期待を集めている陽子線治療や重粒子線治療、先進医療の代名詞とも呼べる治療法ですがこれらをがんの先進医療で受けるためには原則として下記の条件から外れている必要があります。

①消化器系のがんの場合

②転移がある場合

③がんステージⅢ~Ⅳである場合

④過去に同じ部位で放射線治療を受けている場合

これらにいずれも該当しない場合に限り、陽子線治療(重粒子線治療)を先進医療として受けることが原則的に可能とされています。

 

①消化器系

陽子線治療は基本的に頭蓋底腫瘍、頭蓋部がん、眼腫瘍、肺がん、肝がん、骨腫瘍、前立腺がんなどの治療で主に使われています。消化器系のように部位が絶えず動いている部位への照射は目標が定めにくく、出血やその他の放射線の影響を受ける可能性が高く受けられないことが多いためです。

どのがんでも陽子線治療を受けられるわけではないという点を忘れがちなので、注意が必要です。

 

②転移がある場合

③がんステージⅢ~Ⅳである場合

④過去に同じ部位で放射線治療を受けている場合

これらはほぼ同じような理由によって受けれないことが多いのが実態です。

何故、このような制限があるかといえば、『先進医療』の目的は

『将来の健康保険制度適用の治療となるかどうかのデータ収集』だからです。

 

そもそも日本では健康保険における『混合医療』は認められていません。

先進医療は自由診療と健康保険を組み合わせた治療方法であり、費用はあくまで自己負担です。

これが例外的に認められているのは前述の目的があるためです。

 

莫大な費用を必要とする健康保険制度は一定の効果を期待できなければ認可されません。そのために転移があったり、既に放射線治療を受けていると陽子線治療の効果があったかの測定が的確にできません。

そのため様々な条件で厚労省は検査を行い、その条件に当てはまる人だけを先進医療として受けられるようにしています。

言い換えれば様々な症例を集めるため、現在は混合医療(先進医療)で受けられている人と同条件であっても、数年後に受けたいとなっても自由診療扱いでしか受けられなくなっている可能性もあり得るということです。

 

更に困るのは④のように標準治療を既に治療を受けている場合にも受けられなくなることがあるという点です。

手術・放射線・抗がん剤はがんの三大治療(標準治療)です。

これらを受けてみて術後の経過が芳しくなかったとして、陽子線治療を希望しても受けられないことが現実として考えられることを我々は理解しておく必要があるのではないでしょうか。

また多くの医師は標準治療を提案してきます。医師から膨大な費用が自己負担となる「先進医療をしましょう」と勧められることは殆どないということを知っておき、希望する場合には自分から早い段階で受けたい旨を伝えるようにしておくことも大切です。

最後に『先進医療』という言葉の認識について改めて理解して頂きたいと思います。先進医療という名前から最先端の医療技術と誤認されている方が少なくありません。先進医療とは大学病院などで試験段階(臨床)の治療方法でその効果が明確に確立されていない治療方法で、混合診療が認められているものです。

 

そのため健康保険適用外の自由診療扱いとなっていますし、混合診療が認められているのも将来のデータ収集のためです。(一台80億円する陽子線の機械を将来全国で建設して運営することが現実的かはともかくとして)

もしあなたが既に『先進医療特約』の付加されている医療保険に加入中だったとして、がんと診断された場合、陽子線治療を受けたいとした時に必要となってくるのは『お金』と『情報』です。

既に標準治療を受けてしまった後では先進医療(混合診療)で陽子線治療は受けられないか、検査を含めて全額自己負担(この場合は同じ陽子線治療であっても先進医療ではなく全額自己負担、先進医療特約からの給付も受けられない)になってしまうことを理解しておく必要があります。

 

よく先進医療特約が安いのは「受けられる可能性が低いから」と言われています。陽子線治療=先進医療ではなく、健康保険との混合医療で自由診療が受けられるのが先進医療であることを改めて多くの方に理解していただきたいと思います。

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