楽天による朝日火災買収報道に思う損保業界の今後について

週明けの月曜日、大手メディアが第一報で伝えたのは

楽天市場を展開する楽天グループが損害保険の中堅である

朝日火災海上保険株式会社を買収するという報道でした。

 

日経新聞『楽天、成長へ再アクセル 朝日火災買収 客囲い込み』

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朝日火災海上保険って?

 

朝日火災海上保険は、1951年に野村證券や大和銀行(現りそな銀行)、

第一銀行(現みずほ銀行)などの発起により設立。

11年5月から野村ホールディングスの連結子会社となった中堅損害保険の会社です。

引用元ITメディア

 

FPとして火災保険や自動車保険など損害保険のご相談や提案をする際に朝日火災をご案内することもかなりありました。

野村ホールディングスには野村不動産などがあり、火災保険では保険料が大手3グループよりも割安な傾向にあり、新築から5年以内は多くの場合に最安圏内になることの多い商品が特徴でした。

営業社員をほぼ抱えておらず、代理店に出来高払いで支払うため人件費も固定されず経費が少なくて済んでいた身軽さもあり、FP仲間の間でも近年は評判の良い会社でした。

 

損害保険業界はどんな状態?

 

損害保険業界は単独で最大手の東京海上日動火災、

三井住友火災保険やあいおいニッセイ同和損保などのMS&ADグループ、

内外の損害保険会社の合併による損保ジャパン日本興亜(SOMPO)の三大勢力と、

ソニー損保やSBI損保などの新興勢力、

アクサダイレクトやAIG損保(富士火災とAIUが2018年1月に合併)、

中堅の日新火災海上や朝日火災海上保険など

計26社(損保協会登録会社数より)が展開されている認可制の業界です。

 

市場規模は4兆2500億円規模となり、同じ保険でも生命保険業界は

41社で約40兆円規模(生命保険協会発表)ですから

生命保険のおよそ10分の1の規模となります。

 

また近い規模の業界としては国内日帰り旅行が4兆8千億ですから、

小さなマーケットの中に沢山の保険会社が寡占状態となっていることがわかります。

 

監督省庁である金融庁としては市場の競争を促すために今までも段階的に新設保険会社の認可を与えてきましたが、差別化の難しく利益幅の少ない損害保険の市場規模は商品開発も後追いイタチごっこで、ほぼ飽和状態となっていた事が考えられます。

新興勢力のau損保など通信業界からの参入が近年あったばかりですから、顧客の囲い込みを狙うIT系の楽天グループからすれば新規参入は認可が降りづらく、損害保険のノウハウやキャッシュフローをすでに持っている中堅の損害保険会社を買収する事で時間を買うことが出来ると判断したのではないでしょうか。

 

楽天は昨年末に格安SIMのフリーテルを買収(救済)、ドコモなどと同様に第一種通信事業者にも参入をすることを発表しており、つい先日1月26日には米国ウォールマートとの提携も発表しています。

楽天グループの成長を加速させる狙いがあるのでしょう。

 

野村ホールディングスは何故、売ることを判断したか

保険業界は契約者から先に保険料を預かり、積立ながらいざという時に支払うキャッシュフローの良いビジネスです。

一方で野村ホールディングスは野村證券を祖業とする巨大グループです。

→ 野村グループ(野村ホールディングスWebページ)

グループの一覧を見ると投資や資産運用に関する会社が多いことが分かります。

損害保険は金融業ですが、債券などでの長期の資産運用を軸にしています。

一方で証券は短期的な売買によって高い収益性を目指す傾向にあり、

親和性が少ないということが考えられます。

 

グループ企業への貢献度も少なく、人口減少社会である日本での損害保険事業は先細りが考えられます。

良い売却先を探していたというのが実情ではないでしょうか。

 

昨年も野村不動産を日本郵政に売却しようとしていましたが、日本郵政が買収したオーストラリア企業の赤字化に伴い、慎重になって交渉は決裂となりました。

(不動産業界は人口減少社会で不利になるため、建設ラッシュが終わる2019年、東京五輪前に売却を狙ったのではないでしょうか。)

野村ホールディングスとしてはグループのスリム化を目指しているのでしょう。

それは奇しくも隣接金融業界における銀行の大量リストラ計画などと同様にビジネスや社会構造の変化に対応するためかもしれません。

毎日新聞『野村不動産買収へ 不動産事業を収益の柱に』

 

 

楽天グループ参入でどう変わる?

 

楽天グループは既に楽天生命という生命保険会社も経営しています。

しかし損害保険は市場規模の問題だけでなく、前述の通り差別化の難しい業界です。

そして損害保険の業界の最大の課題はコストです。

IT化に最も対応が遅れた業界である保険業界が生命保険だけでなく、

損害保険においても同様です。

 

インターネット通販をはじめ、スマートフォンやタブレット端末などが十分に普及した現代において手続きの中心は未だに対面による募集人を媒介としています。

日本のIT業界の巨人である楽天グループが参入することによってフィンテック(ファイナンス×情報テクノロジー)によるブレイクスルー、そして楽天経済圏による顧客包囲網がどのように展開されていくのか見ものですね。

 

契約は変わらないので、契約者や検討している方は安心して大丈夫

 

今回の買収は朝日火災の親会社が野村ホールディングスから、楽天に変わるだけの変更です。

恐らく楽天損保など社名の変更は近いうちにある可能性が高いですが、

契約に影響はありません。

なので既に朝日火災で契約をしている方、現在検討中の方は安心してよいでしょう。

保険業界の共通ルールとして、契約内容を勝手に保険会社が変更することは原則として認められていません。

(破綻時などは業界による救済措置がある)

気になるのは買収額400~500億円という金額

 

買収を発表した月曜日、楽天と野村ホールディングスは一応、株価を落としています。

情報がまだ正式なものではなく、動揺したのでしょうか。

それとも楽天の急激な提携や買収を市場が警戒したと評価するべきでしょうか。

 

野村ホールディングスが月曜15時に正式に売却することを発表しましたので、

明日以降がどうなるか様子を見守りたいと思います。

朝日火災海上保険株式会社に対する公開買付けへの応募に関するお知らせ

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