金融庁・森長官の続投と日本の投資環境への提言

2017年は日本に金融庁が誕生して20年の節目。

その節目に省庁では異例の3年目続投が決まった森信親金融庁長官が辣腕を振るっています。

以前、金融庁20年の歩みと森長官の官僚として生きてきた時代を紹介してきました。

FP Voice「停滞する日本の金融業界を変えるリーダーシップ、森長官続投か?」

森長官が進める金融改革は多面にわたりますが、我々個人にとってもっとも大きいのは

フィデュ―シャリ―デューティー(FD)による金融機関への顧客重視のサービス・商品提供への指導です。

これによって銀行・証券会社・保険会社などの金融機関は、戦後最大の変革期を迎えています。

 

地方銀行の再編、銀行窓販における手数料開示、

証券業界における不適切販売への指導と投資を後押しする税制優遇政策、

保険業界における代理店への規制・保険会社の在り方への指導…

 

これまでのように儲かれば良いというのは認めない。

顧客の立場に立った本質的なサービスを提供したうえで利益を上げてくださいと強力なメッセージ性を発しています。

 

森長官の強いメッセージが込められたのが2017年4月7日に証券業界に向けたアナウンスでした。

「日本の資産運用業界への期待」

日本証券アナリスト協会が主催した「第8回国際セミナー」での基調講演内容が上記リンク先に公開されています。

リンク先は金融庁のWebページです。

このアナウンスの内容だけで投資の教科書になりえるものだと私は感じました。

代表的な部分を紹介します。

 

私は、ここ数年、金融機関に対し「顧客本位の業務運営」をしてくださいと一貫して申し上げてきました。企業が顧客のニーズに応える良質な商品・サービスを提供し続けることが、信頼に基づく顧客基盤を強固なものにし、供給者である企業の価値向上につながることは、金融機関のみならず、およそ全ての企業に当てはまる原則だと思います。

資産運用の分野でも、お金を預けてくれた人の資産形成に役立つ金融商品・サービスを提供し、顧客に成功体験を与え続けることが、商品・サービスの提供者たる金融機関の評価を高め、その中長期的な発展につながることは当然のことです。

マイケル・ポーターは、これを「共通価値の創造」と呼びましたが、金融機関による共通価値の創造は、顧客と金融機関の価値創造に留まらず、経済や市場の発展にもつながるものと考えます。しかしながら、現実を見ると、顧客である消費者の真の利益をかえりみない、生産者の論理が横行しています。特に資産運用の世界においては、そうした傾向が顕著に見受けられます。

本年2月の我が国における純資産上位10本の投信をみると、これらの販売手数料の平均は3.1%、信託報酬の平均は1.5%となっています。世界的な低金利の中、こうした高いコストを上回るリターンをあげることは容易ではありません。日本の家計金融資産全体の運用による増加分が、過去20年間でプラス19%と、米国のプラス132%と比べてはるかに小さいことは、こうした投信の組成・販売のやり方も一因となっているのではないでしょうか。

毎月分配型の投信は、引き続き多く販売されていますが、毎月分配型では複利のメリットが享受できないことをお客様に理解してもらった上で投信判断していただくのが「顧客本位」ではないでしょうか同様に、過去数年間、高い値上がり率を示している投信も人気ですが、こうした投信の販売にあたっては、高値掴みの危険性についても言及するのが「顧客本位」だと思います。さらに重要なことは、商品に係る販売手数料、信託報酬などのコストをお客様に理解していただくことです。こうしたコストについては、単にパーセンテージで示すのではなく、例えば10万円投資した場合のコストを実額で示す方が「顧客本位」だと思います。

こうした話をすると、お客様が正しいことを知れば、現在作っている商品が売れなくなり、ビジネスモデルが成り立たなくなると心配される金融機関の方がおられるかもしれません。しかし、皆さん、考えてみてください。正しい金融知識を持った顧客には売りづらい商品を作って一般顧客に売るビジネス、手数料獲得が優先され顧客の利益が軽視される結果、顧客の資産を増やすことが出来ないビジネスは、そもそも社会的に続ける価値があるものですか?こうした商品を組成し、販売している金融機関の経営者は、社員に本当に仕事のやりがいを与えることが出来ているでしょうか?また、こうしたビジネスモデルは、果たして金融機関・金融グループの中長期的な価値向上につながっているのでしょうか?

 

 

日本の金融行政のトップが、資産形成・資産運用を担う証券業界に向けて

このような辛辣なメッセージを公の場で発したのは異例中の異例です。

日本の資産形成・資産運用を取り巻く環境が顧客本位に立っていないという事実が白日の下にさらされました。

 

金融機関で働く方の中には森長官の発言を戦々恐々と聴いている方がいるようですが、

如何に顧客本位で普段の業務をしていないかが分かる反応と言えます。

 

私は金融機関として当たり前のことを、当たり前に実現しようとしているのが

森長官のしようとしていることだと感じています。

むしろこの当たり前が当たり前でない金融機関の状態が異常であると当事者たちが

気づいていないことの方がマズいと考えています。

金融機関で働いている人間が最も金融リテラシーが低いとさえ言えるモラルの低さを感じています。

 

ちなみにこのアナウンスは2018年1月から始まる新しい投資の優遇制度『積立NISA』公表の場でもありました。

日本の投資、証券業界の中心は現在のNISAからこの積立NISAへ移行します。

次回はこの森長官のアナウンスから積立NISAと日本のこれまでの投資の違いをお伝えしたいと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA