子どもが独立をしたら住み替えを検討するシニア世代が急増?シニアシフトの住居実情

憧れのマイホーム、家族と過ごす我が家。

日本では戦後長く続いた“持ち家信仰”が今も多くの人々の心に根付いています。

「一生家賃を払い続けるなんて勿体ない」と言う人もいます。

住宅に関する価値観は人それぞれで良いと思うので干渉する気も議論する気も全くありません。

好きにすれば良いと思いますが、私個人は持ち家信仰なんて最も無意味な刷り込みだと考えています。

 

家の資産価値や土地の値段が右肩上がりの時代ならいざ知らず、

家はローンを払い終える頃にはそれだけ老朽化しています。

幼かった子どもたちはそれぞれ独立をしているであろう年齢ですし、

結婚をしていても何ら不思議な話ではありません。

 

仮に35年ローンを組むというのは、35歳の人なら繰上げ返済をしないとすれば

70歳までローンを支払うということです。

築35年の老朽化した家、年齢70歳であと何年住み続けるつもりでしょうか。

もし60歳ないし65歳で仕事を引退するとするなら多くの人は退職までに貯めた預貯金や退職金で繰上げ返済をすることになります。

十分に資産を積み立てることが出来ているなら兎も角、老後いつまで生きるかもわからない中で、介護や医療など様々なお金が今後どれだけかかるかわからない中で数百万円〜数千万円という現預金を一気に支払ってしまうことは得策と言えるでしょうか。

家の価値は買った時よりもほぼ確実に老朽化に伴って下がっているというのに、支払う家の残債は買った時のままの負担を背負わされるというのに。

 

建築基準法の木造住宅の耐用年数は役所では30年、RC(コンクリート)37年とされています。

実際には早稲田大学の小松幸雄教授らによる調査によると木造は65年が推定寿命とされていますが、

https://www.itmedia.co.jp/makoto/articles/1310/10/news043.html

過半数の家は35年以内に建て替えか取り壊しをしています。

実用年数と推定寿命(理論値)は大きく異なるということを見落としてはいけません。

 

子ども部屋を子どもの人数に合わせて家を買っても、

ローンを支払い終えた頃に子どもたちが実家にいる可能性はどれほどでしょうか。

 

子どもたちが結婚をして、孫を連れて遊びに来る。

昔の子ども部屋に寝泊まりして一家団欒を過ごす。

ステキなことだと思います。

が、築年数が経てばそれだけ家の維持管理には費用も手間もかかります。

例えば水回りは10年ほどで順次修繕をしていく必要があります。

台所、お風呂場、洗面所、トイレ…どのくらいの規模で修繕をするかによりますが

数十万円から百万円単位まで要する場合もあります。

家はその他にも外壁や屋根などの修繕も必要になってきます。

 

70代半ば以降の高齢者になっても住み続けるのであれば廊下やお風呂場、トイレに手すりなどをつけたり、

部屋と部屋の間は段差の少ないバリアフリーを前提にリフォームが必要になってきます。

高齢になれば若い時には気にもならなかった小さな段差で躓くことも珍しくありません。

ドアも押したり引いたりのドアではなく、弱い力でもスライドできるドアにするなどの工夫が必要になります。

戸建の場合などは二階や三階などの高い家は階段をどうするかも考えなくてはなりません。

家が広いということはそれだけ掃除などの手間もかかることを意味しています。

玄関や廊下は車椅子が通れるようにスロープや幅が十分に確保されているでしょうか。

 

子どもたちが出て行った後の部屋はどうするのでしょうか。

物置にする予定でしょうか?

家は人が住まいないとあっという間に痛んで行きます。

住み慣れた広い家は居心地が良いかもしれませんが、

日頃から掃除もメンテナンスもしないのであればそれは身の丈に合わない家かもしれません。

 

『シニアシフト』という変化に合わせて暮らしを見直す

持ち家信仰は冒頭で既に触れましたが、高度経済成長期に大蔵省の官僚らによって描かれた国債を買い支えるための刷り込みに端を発しています。

「マイホームは一国一城の主人」

「男は家を買ってこそ一人前」

日本の経済が順調だった頃までは良かったものの、1980年代に入ってからの円高不況とそこで誤った経済政策によって弾き起きたバブル経済で勘違いをした日本人は土地神話、不動産神話を殊更持ち上げました。

結果、高い値段で土地や建物を購入して、高い金利に固定され、そして資産価値が下がってしまっても手放すに手放せなくなったのです。

退職金で家のローンを全て払い終えたと語る60代ご夫婦がいます。

それによって手元に現金がなく貧困老人まであと一歩となっている人も

最近は決して珍しくもないのです。

 

住宅というのは家計における支出の最も大きなウエイトを占めています。

ファイナンシャルプランナー的にモデルケースを示すのであれば収入のおよそ30%は住居費です。

これを掛け捨ての賃貸にするのか、

一定の年齢で払い終える持ち家にするのか…

まるで生命保険における定期保険と終身保険の考え方の違いのようですね(笑)

実際問題、住居費に対する考え方と保険に対する考え方はとてもよく似ている面があります。

全ての人がマイホームが良い選択かどうかは、収入や健康状態、家計における就労状況など様々な面から検討をする必要があります。

しかし現実的には独身、結婚、出産、子どもの独立…

これらライフステージの変化に合わせて住む場所は柔軟に見直しをするのが合理的であることは客観的に考えると誰もが理解できることです。

このように自分たち家族の年齢や状況などに合わせて住居や働き方などを変化させていくことを「シニアシフト」と呼びます。

 

しかし日本人はこの変化に対応するということに非常に弱い民族のようです。

江戸時代から明治時代への変化の中で、外国の文化や道具などをいち早く受け入れた人はどうだったでしょうか。

変化を受け入れず「俺は武士だぞ!」と刀を下げて歩いていたらどうなるでしょうか。

戦前と戦後、そしてバブル崩壊やその後など、社会に影響力を持ったのはいつでも変化に対応した人たちです。

 

 

20世紀、生物の進化についての方向性を決定づけたチャールズ・ダーウィン。

著書『種の起源』の中で彼は次のような言葉を残しています。

自分の人生における大きな変化である老後を迎えたのに、いつまでも現役時代のお金の使い方や生活の仕方に固執している日本人が多くいます。

生活習慣を変えることは大変なストレスを生みます。

しかし変化することができなければ預貯金は使い潰し、やがて首が回らなくなります。

シニアシフトは老後に多くの人々が健康で文化的な、自立可能な生活をしていくために必要な変化です。

 

住居、飲酒、喫煙、食習慣…体は確実に老いていく

この記事を何歳の方が読んでいるか分かりませんが、私と同年代(アラフォー)くらいだとすれば若い頃と同じような食事をしているのに体重が増えたとか、健康診断でBMIや肝臓の数値や視力やなんやと悪化した人もいらっしゃるのではないでしょうか。

人の身体は老います。

同じだけのカロリーを摂取しても、代謝が落ちれば同じような運動をしていてもカロリー消費が悪くなり体重が増えます。

アルコールも若い時なら次の日にはケロっとしていたものが、昼過ぎまで残り、一日中残り…ということも起こり得ます。

筋肉痛が翌日ではなく翌々日くらいに来たりすることと似ています。

 

自分だけは大丈夫…主観に弄ばれる日本人

冒頭でも紹介した早稲田大学の小松教授らによる調査では家の稼働率は子どもの独立後に急激に悪化することが分かっています。

しかし老いるとは、変化に対応しづらくなることの一面でもあります。

若い頃はそんなにでもなかったのに年老いると頑固になるとか、柔軟性がなくなるご年輩の方がいますね。

変化に対応していくべき時に「思い出の我が家を手放したくない」という人が過半数もいます。

思い出を軽視するつもりはありませんが、身の丈を知ること、合わせることも必要ではないのでしょうか。

思い出でご飯が食べられるのでもなければ、子どもたちが喜ぶわけでもありません。

むしろそれにしがみついて親の世話や援助をしなくてはならなくなることの方が余程迷惑です。

 

また実際に住み替えをする際の条件として病院や薬局、買い物の便が良い場所を挙げる人も大勢います。

75歳頃までは車を運転する方も大勢いますので郊外の住宅街で買い物や通院にもそれほどの不便さを感じなくても70代後半や80代などになると免許の返納などで生活への影響が出始めるケースも考えられます。

するとこのように顕在化していなかった問題が浮き彫りになりますが、この時には既に住み替えられるだけの預貯金が尽きていることも珍しくありません。

 

人口が減っていく日本の中で持ち家を維持できる人は一握りだけ

 

日本は既に人口減少社会です。全国の賃貸空室率は一位の山梨県34%を筆頭に、栃木県31%、群馬県・青森県30%…東京都19%、沖縄県13%となっています。

都道府県別の賃貸物件空室率一覧

日本では生まれる子どもの数よりも亡くなる方の数の方が多い時代が2050年頃まで今のままだと続きます。

2035年に団塊ジュニア世代が年金受給開始を迎えると年金支出と労働人口の急減で年金制度は瓦解します。(年金保険料ではまかないきれず、財源が枯渇)

2050年より先の未来は現在の働き方改革、子どもを産んで育てやすい社会にしようという動きがどの程度効果を発揮するか次第ですが。

 

退職を機に家を購入するシニアも増え始めている

私の顧客の中には60歳で退職金を受け取ってから家の購入を検討し始める人もいます。子どもたちも既に独立をしているので、夫婦2人が暮らす部屋とリビング・ダイニング・キッチンと客間だけ。

バリアフリーで、玄関やトイレ、お風呂場にも手すりなどが設置されている住宅を中心に検討しています。

仮に90歳を迎えても家は新築で買えばまだ築30年ですから、リフォームこそ必要でも建て替えや転居までは必要ないかもしれません。

現金一括で購入するので利息にお金を払う必要がありません。

退職金や年金収入から無理のない範囲で駅近くの利便性の良いマンションを選べば通院や買い物も便利です。

『シニアシフト』今回は住居を中心に書いてきましたが、これまで親世代や祖父母の世代を参考に自分もこういう生き方をしたいというのを参考に生きていこうとするだけでは今後の時代の変化には対応できないかもしれません。

そうした変化に応えるのもプロのファイナンシャルプランナーの役割だと思うのですが、あなたは自分の主観にこだわり続けますか?

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