就業不能保険の選び方〜給付スピードと長く受け取るなら障害手帳と公的介護保険の二択を選ぼう

「生命保険は亡くなった時に役立つもの」

未だに昭和初期の感覚のまま21世紀を生きている人たちがいます。

保険とは”多くの人たちでお金を出し合って作った巨大なお財布から、契約当初の事由が発生した際にこの巨大なお財布からお金を受け取れる仕組み”です。

亡くなった時というのは生命保険が誕生した初期から与えられた機能の1つではありますが、20世紀の近代生命保険(ペンシルベニア大学ヒューブナー博士が提唱)ではこれを4つの役割に分類しています。

①死亡

②就業不能

③一時的廃疾(病気など)

④長期資産形成(教育資金や老後資金)

ヒューブナー博士がこれを定義したのは第一次世界大戦の時代でした。

このうちの①が多くの方にとっての現在の生命保険に対するイメージとなっていますが、②は未だに十分に認識されていない向きがあります。③に至ってはこれが生命保険の一部であるというイメージを持っていない方も少なくありません。時には共済と混同されている方も未だに多いように見受けられます。

 

日本でも急速な高齢社会の到来によって④の普及が進められていますが、低金利時代においては保障性の確保が優先されており、資産性の保険はリスクを正しく認識しなければ、実質的にほぼ壊滅的とも言えます。

 

就業不能保障の位置付け

近年、日本人の死亡率が劇的に下がっているというニュースを聞いたことがある方もいると思いますが、日本人は勤労世代(15-64歳)ではかつてよりも死ににくくなってきています。

生まれた時の子供の数を100%とした場合に30歳を迎えられずに亡くなってしまう男性の数は1%です。99%の男性はその後も人生を生き続けます。65歳を迎える男性の割合は89%です。つまり現在30歳の方が年金受給の年齢まで生きている確率は90%で、言い換えれば10%の方は年金を受け取る前に天国へ旅立つことになります。

では男性の平均寿命81歳を将来の資産形成のゴールとして良いのかと問われれば答えはノーです。

90歳まで存命の男性は25%、つまり4人に1人は更に9年長生きする可能性があることになります。

女性は更に長生きで30歳を迎えられる確率は99.6%。65歳を迎える女性の数は96%ですので、100人の同学年の人たちが65歳になって同窓会をやったとすると4人は来たくても既に天国から見守るしかできません。

早くに亡くなることを「万が一」と呼びますが数字の上では30歳以上の男性は10が1のそこそこの高確率ですし、女性は100人の学年に4人くらいと決して少なくない確率ではないでしょうか。

これらの不規則な誰の身の上に起こるか起こらないか分からないがやがて誰もが死を迎える不規則な確率を「大数の法則」と名付け、後にハレー彗星に名前が遺ることとなったエドモンド・ハレーが英国に終身年金という存命中受け取り続けることのできる年金制度の基礎を提供し、また死亡率に基づく保険料を定めた近代生命保険への道筋(ドドソンの平準払い)をつけたことは少し前に紹介した通りです。

長生きという本来は喜ばしいことであるはずの人生の時間の長さの拡張を、近年は「長生きリスク」と呼ぶこともあります。

資本主義が発達した現代において経済的な資金が尽きることは経済活動上の死を意味し、また加齢とともに健康が衰えてくると収入は限られているのに介護という新たな支出の増大という問題に直面することから資産性と保障性のバランスは老後資金を考える上で不可欠な要素となっています。

私はこの「介護」リスクと、「就業不能」は同じカゴの上の問題だと考えています。

若くして働けない状態となった場合は、歳をとってから改善されることはかなり難しいと考えているからです。就労不能と介護は地続きな問題と考えるべきだと思います。

その一方で”加齢による介護”と”若くしての介護が必要”はその起因する原因が大きく異なるということをこの記事を読んでいる方には認識いただきたいと思います。

 

公的介護保険制度にみる若くして介護が必要になる多くは特定の病気が原因

日本では公的介護保険制度と呼ばれる社会保障制度があります。2000年に誕生した最も新しい制度で、高齢社会の到来に社会全体で支える仕組みとして40歳以上のすべての国民が加入(保険料を負担)することになっています。

所管はお住いの自治体となっており、全国共通のルールで運営はされていますが自治体の勤労世代と老齢世代のバランスや税収などによって月々の保険料はバラバラです。

2017年の介護保険料が安い自治体が多いのは北海道だそうですが、最安値の介護保険料で済んでいるのは鹿児島県三島村の2,800円だそうです。

一方で奈良県天川村は全国で最も介護保険料が高く8,686円だそうです。住む地域によって随分な差がありますね。

https://hoken-room.jp/nursing/831

上図を見ると一目で分かりますが、そもそも40歳未満は公的介護保険制度の対象となっていません。ここに後述する障害手帳認定による就業不能保障への備えが必要な理由があります。

また図から分かることは多くの方がイメージする介護とは、65歳以上の第1号被保険者を指していることです。介護を必要とする状態の如何を問わずに介護サービスを受けることができます。介護サービスを受けるためには所得により1割または2割負担となっており、この自己負担分が払えなければ介護サービスを利用できない事になります。

40歳以上64歳までの人は第2号被保険者として認定の基準が別個に設けられています。

仮面ライダーで言えば技の1号(グローブがシルバー=高齢者)、力の2号(赤いグローブ=血色が良い)です。

若くして介護が必要な状態とは大変な状態です。国は第2号被保険者の介護認定を特定16疾病が原因で介護が必要な状態となった場合に特別に認めています。※末期ガン、関節リウマチ、パーキンソン病、多系統萎縮症などの4疾病は2006年に追加された。

末期ガンなどで介護を必要とした場合にも公的介護サービスを受けられることは広く認知されて欲しい情報ですね。

 

働き盛りで介護になる人はそれほど多くないと思われる方もいらっしゃると思いますが、働く世代の日本人が死ななくなっていると冒頭で申し上げました。

健康である、また健常な状態で…とは一言も言っていません。死なずに一命を取り留めた代わりに40〜65歳までの方々の中には麻痺や言語障害などを抱えて生きていくことになった人がいます。

調査年度によって前後しますが、40〜65歳までに亡くなる方の人数よりも上回るくらいの人数が公的介護保険制度の要介護認定者となっています。

つまり先ほどの亡くなる男性の確率から言えば10%は亡くなり、10%は介護を必要とすることとなり、合計すると20%…つまり5人に1人というなかなかの人数がこの状態に直面することになります。かなりヤバイ確率です。くじ運が悪い人なら当たってしまいそうです。

しかし65歳以上の第1号被保険者の介護認定からすればはるかに少数派であることからかなり軽視されている問題が介護の問題と言えます。

 

では国は第2号被保険者の介護認定を何故、原因を特定16疾病に限定しているのかと言えばこの16疾病で介護を要する人が多いためです。

また事故や災害などによる怪我などに起因して介護を要する、働けない場合には社会保障として障害年金と障害手帳という2つの社会保障(生活福祉)と重複するという問題もあります。

そして根本的には財源が足りない、だから無視して良い問題ではないけれど自分でもなんとかしてねという自助努力が推奨されています。

当然ですが困った時には誰かが助けてくれるほどこの世の中は優しくありません。誰もが自分の人生のことで精一杯です。

なんでも困った時には誰かが助けてくれるという前提でいることは自分の人生に対しての無責任とあまり変わらないとも言えます。

自治体が認定して生活の負担を減らす障害手帳、国が認定して現金給付する障害年金

公的介護保険制度は国が主導して始めたものでしたが介護サービスの認定や提供は各自治体によって運営されています。

障害手帳も各自治体が認定をしている制度です。

認定までのスピードが今回取り上げた3つの社会保障制度(障害手帳は厳密には生活福祉の一環)の中では最も早く1〜2ヶ月ほどで認定を受けられます。

また障害手帳は障害の重さに応じて6級以上から手帳交付がされ、障害手帳認定を受けると住民税等の減免、光熱費や公共交通機関の割引などが受けられます。自治体の生活福祉課(最終的には市区町村長)などが交付を判断するため、これも比較的早く3〜4ヶ月で認定が取れます。

国が主導で認定基準を設けている国民年金や厚生年金に基づく障害年金は一定の加入要件と障害認定をされると現金が給付されます。

しかし現金給付のため認定までのハードルが相当に高く、特別な場合を除いて申請条件を満たすまでに早くとも1年半がかかる制度です

障害手帳と障害年金は全く別の制度ですが、名前が似ているために混同されていることも少なくありません。

また現金給付か、生活の負担を減免するかなどの考え方に大きな違いがあり、認定基準の簡便さから圧倒的に「障害手帳」の方が認定のハードルが相対的に低く、また認定までのスピードも早いことが挙げられます。

障害年金と障害手帳は認定者が重複している場合も少なくありませんが、完全に一致という訳でもありません。

下記は障害年金の認定に至った原因となった疾病の一例です。

障害年金で認定が認められていて、障害手帳で認められていない基準の1つが精神疾患です。また人工肛門などの造設手術を受けた場合には1年6ヶ月という待機期間がなくなり、その手術日から申請が可能となる点に障害年金の特徴はあります。

また重度の精神疾患は障害手帳では認定を受けることができませんが、障害年金では認定を受けることが出来ます。(認定までの時間の長さが最大のネックですが…)

障害手帳は認定をするかどうかは自治体の生活福祉課などによって委ねられています。

主な原因となる傷病は殆ど一緒ですが、個別判断が多い傾向にあると言えます。

20〜64歳までの障害年金認定者数は129万人、こちらは年金制度と連動するため65歳以降は老齢年金へ切り替わります。

一方の障害手帳は年齢区分が原則としてなく、全年齢が対象となります。全国に約514万人の認定者がおり、毎日約800名が新たに認定を受けているペースで増え続けています。

同世代での認定者数は正確な統計をまとめることができませんでしたが、現金給付を受けられる障害年金制度で不足している額を補うことよりも、大切ですが認定までの時間が短く、現金給付がない障害手帳や公的介護保険と連動している方が「就業不能保障」としての収入保障は必要性が高いというのが私の中での結論です。

 

障害年金、これで生活が回りますか?

まず国民年金(老齢基礎年金)と連動する障害基礎年金は独身または妻のみの場合には1級月額8.1万円(2級は6.5万円)が偶数月に2ヶ月分受け取れます。2級の障害年金月額は老齢基礎年金の受給額と連動しているとすれば生活に必要十分ではないことが想像できます。

申請の権利が発生するまでの1年6ヶ月、その後いつ認定されるか分からない中で、認定されない可能性を含めて預貯金を取り崩して生活をするということが現実的でしょうか?

国民年金のみの方はリスクに対する備えはサラリーマン以上に真剣に考えておく必要があります。一見すれば「まさかこんな事が自分の身に起こるとは…」と当人は考えるかもしれませんが、保険でカバーできるリスクは想定されうるリスクです。

想定されているリスクに対して無知で無防備であるとすれば、それは自己責任としか言いようがありません。

かと言って厚生年金(厚生障害年金)のあるサラリーマンが就業不能を考慮しなくて良いのかと言えば備えが自助努力がやはり必要です。

障害厚生年金は3級からありますが、報酬比例で最低年額585,100円(月額48,758円)〜となります。

障害基礎年金と合算して受け取れるのは2級からで月収40万円、家族構成が本人+65歳未満の妻の場合は年額175.3万円(月額14.6万円)となり元の収入の36%しか確保できません。

障害厚生年金1級は2級の1.25倍となり、家族構成が同じだとすれば年額194万円(月額16.2万円)で、元気に働いていた時の40.5%しか家計としての収入はありません。

18歳未満の子どもがいる場合は子ども1人につき年額224,500円円(月額1.8万円)が加算されます。

働けない状態になると支出は生活費に加えて治療費・療養費がかかるために支出が増大します。

その一方で収入は減少し、生活が破綻するリスクさえあります。

夫婦共働きで夫が倒れれば、妻はその介護や療養のために仕事を減らしたりする必要が出てきて更に家計は苦しくなることもあります。

独身だとしたら両親や兄弟に負担のしわ寄せがやってくることもあります。

しかし就業不能保障保険は現在、加入者全体のおよそ10%ほどと絶対的な加入率の低さに直面しています。

 

障害年金の認定はベリーハードモード

ちなみに私が就業不能保障保険を提案する際に重視している基準があります。

①精神疾患への備えが必要か?

(障害年金1級相当の備え)

②認定までの期間の長さ

(認定まで家計支出を耐えられる貯蓄が足りているか、キャッシュフロー分析に基づいた判断)

③加入者年齢(40歳以上か未満か)と必要保障額、保険料とのバランス

 

一般的には障害年金を基準に保障を考えましょうと社会保障制度を伝えるのがFP的なアドバイスと言えますが、給付額の不足、認定までの期間の長さ、認定基準の難易度という現実を考えると障害年金はゲームで言えばVERY HARDモードです。

これを選ぶときは保険にどんなことを期待して加入するかが肝となります。

①保険金は出来るだけハードルを低く受け取りやすさを重視したい→7日以上の就業不能(入院を含む)から1年間だけ給付金を受け取れれば十分だ→損害保険の所得補償保険

②60日以上の入院を含む就業不能で受け取れる→一部の生命保険会社の就業不能保障プラン(60歳または65歳までの年金受給年齢まで)

③保険金は困った状態が長引く時にこそ受け取れるものにしたい→40歳以上なら公的介護保険連動

④障害手帳認定の就業不能保険を選ぶ(保険金の受取満了は70歳まで、80歳までなど契約時に選べる)

⑤保険はあくまで社会保障の補完なのだから認定基準が難易度高くても年金受給年齢までカバーしていれば良い→生命保険会社の障害年金連動の就業不能プラン

⑥精神疾患で働けない状態が1年6ヶ月以上継続→精神疾患をカバーしているプランに加入するか、自己啓発セミナーに参加して前向きになるか、心理カウンセラーに相談しましょう。

 

⑦保険なんてお守りみたいなものだから→お近くの神社でお守りを買いましょう。

保険に加入しても何のご利益もありませんので、そう思うなら神社でお守りを買って下さい。

事故などが起こらないようにお祈りする願いを込めたものがお守りです。

それでも避けられない不慮の事故や病気で経済的に困った時の経済的な補填をするのが保険です。

健康とか交通安全とかのお守りを持っていて病気や怪我や事故に遭って、働けないや亡くなった時になんで守ってくれなかったって神社に文句を言いに行きますか?

文句を言いたい気持ちは分かりますが、文句を言ってその後の遺された家族や自身の生活費を神社が出してくれるわけではありません。

事故がなかった時に、または助かった時に「お守りが守ってくれた」「お守りが身代わりになってくれた」と感謝するのがお守りです。

経済的な保障などどこにもありません。

だから某保険会社のお守りという名前の付いている保険プランの契約を私は今のところ一件も預かっていません。だって保険に対する考え方が私と相いれないですから。

だって自分でお守りって言ってるくらいですから。気概が感じられないです。そういうのは提供している会社の自己満足です。保険を自らお守りとか言っちゃう精神が信じられません。さっさと名前変えて欲しいですね。

 

就業不能保障プランざっくり早見表

 

上記の説明とはナンバリングが異なります。

主要保険会社の就業不能プラン早見表

就業不能の給付要件

7日以上1年未満

60日以上65歳まで

公的介護保険

障害手帳連動

障害年金連動

精神疾患保障

SJNK(損保)

所得補償保険

(死亡保障なし)

チューリ

くらすプラス

(死亡保障なし、医療保障に特約で付加)

既定のストレス性疾患に起因

プル

就労不能障害保険

(同社死亡保障契約者のみに提供)

3級以上〜(給付金制限あり)

(3年だけ)

プル

米国ドル建終身介護保険(認知症加算型)

要介護2以上

年金給付タイプ

朝日

あんしん介護(死亡保障なし/年金タイプ・一時金タイプ加入時選択)

要介護1以上

年金給付タイプ

アヒル

給与サポート保険

(死亡保障なし)

都度請求

2級以上

NS

もしもの時の生活費(死亡保障なし)

都度請求

2級以上

ジブ

米国ドル建介護保障付終身保険

要介護2以上

あいおい

新総合収入保障保険II型

要介護2以上/会社所定

1級

特定疾病に起因/併合判定

あいおい

新総合収入保障保険Ⅲ型

要介護2以上

2級以上

特定疾病に起因

/併合判定

あんしん

カケホPLUS

五疾病に起因

(2/5年/全期間)

会社所定の重度介護状態

◯2級以上
あんしん

カケホ

五疾病に起因

(2/5年/全期間)

ひまわり

自分と家族

七大疾病(2/5年※)

◯2級以上

(2/5年※連動)

ネオ

ネオdeしゅうほ

三大疾病(一括受取可能)

3級以上

(一括受取可能)

ソニー

生活保障14特則付家族収入保険

要介護2以上/会社所定

3級以上

ソニー

リビング・ベネフィット(生活保障型)

三大疾病

◯要介護2以上

/会社所定

3級以上

FWD

FWD収入保障II

要介護1以上

4級以上

 

 

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