FPとIFAの歴史と変遷〜あなたの担当者はFPですか?IFAですか?

日本でFP(Financial Planner)という職業の名を目にする機会が近年増えてきています。

銀行や証券会社、保険会社など金融に携わる職業の人だけでなく税理士・会計士に司法書士・行政書士までFPの資格を保有している方々もいます。

ところであなたがお金のことを相談する上記のような職業の方はFPでしょうか?IFA(FA)でしょうか?それともIA(Investment Adviser)でしょうか?

何故、このような問いをするのかと言えばこの3つは厳密には異なる業務範囲を示しているからです。

FPとは住宅ローンや生命保険・損害保険などの既に完成された金融商品を組み合わせて顧客のライフプランの実現についての資金計画を提案する人のことです。投資についての助言は行えません。

FAとは、FPに加えて株式・投資信託などの運用リスクを伴う金融商品をどのように組み合わせて運用するかのアドバイスまで行える人のことです。

IAはFAからFP業務を除いた投資助言を行う人の事です。日本の証券外務員または投資顧問が近い職業と言えます。

お腹が痛くて歯医者に相談に行くでしょうか?

日本では消費者の金融リテラシーの向上が諸外国と比べて20〜30年は遅れており、ガラパコス化していると指摘されています。

自分の将来についての相談をする際に適切な職業の人に相談をすることが求められています。

 

ファイナンシャル・プランナーの誕生は米国保険業界からスタート

ファイナンシャルプランナー(以下、FP)は1960年代の半ば頃まで殆ど聞かれませんでした。富裕層を対象とした相続税の試算や対策、老後の年金計画を策定する担当者として生命保険や損害保険などを提案するセールスマンを1960年代後半に”ファイナンシャルプランナー(資金計画を立てる人)”と呼ぶ事が元々の起源とされています。

1969年に投資信託セールスマンのローレン・ダンカンが「商品を売るだけでなく、顧客に役立つサービスやアドバイスを提供したい」として有志11名と”International Association for Financial Planning”(現在の米国FP協会の前身)と教育養成機関”International College for Financial Counseling”を設立しました。

その後、FPを専門的な職業とする動きが加速していき、1973年に上級資格のCFP(Certified Financial Planner)の認定が始まります。当時はわずか43名の認定者しかいなかったCFPは2015年6月時点の全米で約7万2千人、世界では約15万7千人(2014年末時点)、日本ではその内約2万人(2015年2月時点)が認定されています。

 

ここまで見てきたようにFPという職業は米国で誕生して約50年、急速に職業として成長してきたと振り返る事が出来ます。

この背景には親の生き方を参考に生きてきた多くの人々が、19世紀型の生き方・働き方(子供の時代、働く時代)から20世紀型の生き方・働き方(学習の時代、働く時代、老後)への変遷の中でお金に関しての考え方や備え方の変化に個人では対応しきれないために専門知識を持つ客観的にアドバイスをする専門職へ時代のニーズがあったと捉える事ができます。

これは言い換えると現在においても21世紀型の働き方・生き方への変遷(ライフシフト)の中において、今もなお変化し続けている情報と個人とのギャップを補い顧客が安心して将来の夢や目的を達成できるよう導くことがFPに求められているとも言えます。

 

米国FPはFAへシフトしている?業務内容と報酬体系は?

現在の米国FPはFinancial Adviser(以下、FA)と呼ばれる事が増えています。

FAの主な業務について米国FP協会による2013年の調査結果”The Future of Practice Management”(複数回答)によると、89%のFA業務として「①老後所得への提案」、約80%が「②資産管理業務(ポートフォリオマネジメント)」、約60%が「③子供の大学進学への教育資金計画」や「④相続対策」となっており、日本のFP業務は①③④が中心ですから②投資に関して日本が後進国であることを如実に表しています。

ここでは日本が特に遅れている②資産運用の業務について少し詳しく見ていきたいと思います。

米国のFAが顧客の老後所得のためにどのような金融商品を提案しているかを表したものですが、一般的な投資信託(複数回答78%)とETF(81%)が肉薄しています。特に投資信託が衰退したというよりは2007年以降にETFのシェアが急速に拡大している一方で個別株への投資が少なくなっている事がグラフの推移からは読み取れます。

また次いで比較的安全資産とされる債券、それに次いでラップ投信がそれぞれ41%、英国では主流となっている変額個人年金が米国では38%と低迷しており、日本における個人年金保険料控除となる個人年金に相当する定額個人年金は28%に留まっています。

大きな利益を上げる事で話題となるヘッジファンドや未上場株ファンドは9〜8%程度しかなく、そもそもヘッジファンドには資産がある程度(最低100万ドル)ないと投資できないために実態として多くのアメリカ人でさえやっていないことになります。

これを小口で日本人向けに解禁している業者があります。金融庁が日本の金融機関保護のために認可をしてくれないなどを無認可、無届けの理由として販売している業者などが日本国内でも散見されます99.999%詐欺か良くて悪徳業者か、いずれかです。

 

またFAの報酬ですが、2014年の業界の平均年収は108,000ドル(日本円換算で約1,134万円相当)だそうです。

報酬の内訳を細かく見てみると次のような事が見えてきます。

収入の約40%はコミッション(販売手数料)で、生命保険・年金保険からの手数料収入が各9%、投資信託からの手数料収入が21%となっています。

日本で銀行や郵便局や証券会社が投資信託を売りたがる理由が垣間見れますね。積立投資を近年、顧客に進めている理由もここにあります。

一括で買う投資の良い悪いではなく、継続的に資金の流入があれば投資信託の市場が値下がりしにくくなり、販売会社は販売手数料を得ることが出来るから積立投資を勧めている面があります。

どこの世界に積立投資が安全だなんて誤解を招く説明をしている人たちがいるのでしょうか。

しかしこれらの手数料収入よりも更に米国FAが収入の柱としているのが対運用資産フィー46%です。日本にはまず根付いていない報酬の1つです。

フィーとは料金の事ですが、これはいわば成果報酬型の収入と言えます。

日本では投資家の負担する投資信託のコストと言えば購入時手数料(コミッションまたはロード)と信託報酬という2種類がありますが、これらは顧客が投資してくれたお金に対して同じ商品・同じ経路から購入するならどこの誰から契約をしても原則一律でかかるもので日本では証券外務員やIFAの収入の柱となっていますが、顧客からすれば運用成果に関わらず一定率で差し引かれるコストとなります。

日本の資産運用の世界には数多くの課題がありますが、第1の課題として挙げられるのがこの運用成果と連動した報酬体系の導入を資産運用会社が採用を実質的にしていないという事です。

(その代わりに購入時手数料や信託報酬が高く設定されている)

よく日本の投資信託は購入時手数料や信託報酬が欧米と比べて高いと言われていますが、欧米のこれらのコストが低いのは代わりに運用成果に基づいた成果報酬コストを証券外務員やIFAに還元する体系が存在するためです。

しかしこれは日本の証券外務員やIFAにとっての利害の一致でもあります。最初に手数料は多く入ってきた方が嬉しい…何故なら顧客と会うために様々なコストをかけ、資料を用意したり、郵送したり、時には会いに行くための交通費など資金が10年後に運用成果を得てから回収ではお話にならないからです。運用成果は上がるとも限らない、つまり受け取れないかもしれない収入と言えます。

また顧客も運用益は全て自分のものとして得られる利点を享受していることになります。

更に運用に対しての自信を持っているIFAが殆どいない点も日本のIFAの特徴です。日本で暮らしている以上は自国バイアスが発生するためどうしても日本株(日経平均株価やTOPIX)の方が顧客にとっては身近です。為替の影響を直接受けることもないため運用対象として選ばれやすいことも影響しています。25年以上、最高値を更新していない先進国唯一の代表株価指数が日本株です。

これでは積極的な成果報酬型よりも、先にもらえる手数料を重視する気持ちも分かります。

ちなみに時間当たりの相談料(フィー)はFA収入のうち7%、401(k)=確定拠出年金についてのフィーが4%…運用成果について日本では取次金融機関が利益をせしめている報酬をアドバイスをしたFAへ還元している様子も伺えます。

そしてこのフィーが生命保険・年金保険からの収入にかなり近いウエイトを占めていることが分かりますね。

 

米国投資信託の約80%はFA経由で相談して購入されている

米国人の投資信託購入の約半数に迫るのが401k(職域DC=企業型確定拠出年金)の43%です。

401k(確定拠出年金)の利用者が多い米国において、401kは個人の将来所得に対する準備方法の大切な選択肢です。(米国人が401kをやって資産を増やしたから日本人も確定拠出年金をやれば資産が増やせるかと言えば答えはNoと断言できる。理由は確定拠出年金としてのルール、仕組みがほぼ全く別物だから)

多くの方が職域DCで運用をしている一方でそれを上回る方々が行なっているのが、一般的な投資信託や職域DCとの併用です。

2つを合わせると56%と一般的な投資信託の重要性(職域DCのデメリット)を感じて投資をしている方が多いと伺えます。

日本人は自分の頭でこれらを考えることが出来ず『米国人は確定拠出年金で資産を増やした』を上辺だけ拾って理解したつもりになっています。

正しくは『米国人は確定拠出年金を一般の投資信託と組み合わせて投資をして資産を築いている人が多い』です。

確定拠出年金だけで資産を築いた人はむしろ少ないとさえ言えます。

 

さて、一般的な投資信託や職域DCとの併用による運用の相談先・購入経路を調べると約80%がFAを介していることが分かります。

その内の半数はFAのみ、半数はFAと証券外務員(直販)やディスカウントブローカー(日本におけるネット系証券と提携しているFA)を様々組み合わせて利用しているようです。

 

言い換えれば誰にも相談せず自力で運用をしている人の割合は投資家全体の20%に留まり、日本における投資の様子と随分異なることが伺えます。

米国FAの約80%は金融機関所属ではなく、RIA(独立投資顧問)やBD(ブローカー・ディーラー)、総合証券(日本における証券会社の5大業務全てを行なっている証券会社)に在籍または兼任をしています。

 

ある米国FA事情に詳しい日本のFP業界の第一人者の話では「米国FPはCFPを取得すると届出制でRIAなどに登録をするだけで登録したRIAの扱う証券・保険・年金を一元で扱うことが出来るようになる」と教えてくれました。

株式や投資信託での一任勘定も認められているなど、日本で近年支持を集めているラップ投信に近く、低コストでFAの腕による運用ができまさに顧問料を毎月支払うに値するサービスの提供が普及しています。(日本のラップ投信は手数料が高いだけの投信の合成に過ぎず、顧客の運用許容度に合わせたものとは程遠い)

 

それでも米国FAは日本よりも20年先を行っているとは一概には言えない

顧客サービスや手数料や成果報酬に様々な仕組みの整備がされているように見える米国FAですが、これらの整備が進められたのは2000年以降でした。

インターネットの普及に伴って個人がパソコンなどから投信の注文を自己判断で、低コストで行えるようになって投資の裾野は広がったかに見えました。

FAはこの時期にインターネット証券などに顧客を奪われていましたが、チャールズ・シュワブ証券(米国第一位のネット証券)はFA口座を開設(FA口座を開設すると購入時手数料などが高くなるが、FAからのアドバイスを受けられるようになる)などネットとFAの融合という選択肢を顧客が選べるようにしていきました。

米国FA業界において大きな転機となったのが2007年の世界同時金融危機、そして2008年のリーマンショックでした。

インターネットで自己判断で投資をしていた殆どの個人投資家が大暴落を前に損失を出したにもかかわらず、FAを顧問につけていた個人投資家の多くは下落局面でアドバイスに従って慌てずに行動をとることができました。結果的に資産を大きく増やすことに成功しました。

株価の回復を背景にFAの顧客らは、FAに相談をしておらず損失を出した人たちに自分のFAのアドバイスのお陰で損失を出さずに資産を増やしていることが聞こえるようになると、自分もFAを顧問につけて投資をしたいと考える個人投資家が一気に増えていったそうです。

では一見すると80%という盤石な地位を確立しているかに見える米国FAですが、あらゆる面で米国は日本よりも金融において先を行っているかと言えばそうでもありません。

実は米国では顧客からの預かり資産からのフィーという収入体系がFAにとっての1つのステータスになっていました。

私の預かり資産は1億ドルだ、私は5億ドルの資産を運用している…預かり資産の規模を争い、金融機関も出来るだけ若くて預かり資産を沢山持っているFAを囲い込もうと引き抜き合戦が始まっています。

結果的に顧客のライフプランではなくて、資産をどれだけ預かれるかが中心となってしまっている現状が近年は指摘されています。

この一方で日本のFPはライフプランニングの技術とスキル、顧客へのアドバイスを徹底して磨いてきました。

1980年代に日本で現在の日本FP協会や金財FP協会に統合され、そして約2万人のCFPが誕生する中でキャッシュフロー表の分析や保険を活用した資産形成では日本のFPは世界のトップを走っている一面も持っています。

これは販売報酬という本来的には顧客にとってはコストでしかない費用を、保険料または住宅ローンなどの金融商品を購入する際に間接的に負担することで、顧客がライフプラン相談や保険相談への敷居を低くすることに成功したためでもあります。

保険や住宅ローンは元来から契約期間が長期にわたるため、すぐには引き出せない資産として購入時手数料を販売会社も捻出しやすいといった相性の良さもありました。

そういえばこれとよく似た契約形態に携帯電話の2年縛りがありますね。

世界的にはAppleのiPhoneは高額で、なかなか購入することができない人も少なくない一方で日本では3人に1人くらいのかなりのシェアを維持しています。

これは2年縛りや3年縛りによる毎月の通信料や通話料から端末代を分割で負担している仕組みです。月々にすれば一度に負担するコストは少なくなり、顧客が手を出しやすくなります。近年ではMicrosoft OFFICE365やAdobe Photoshopなどは常に最新バージョンを利用できる代わりに一括購入ではなく月額払いをするサブスクリプションと呼ばれるビジネスを加速させていますが、これを更に超長期で、かつ契約内容は契約時のままにしているのが日本の金融商品販売の現場です。

顧客本位の業務運営(フィデューシャリー・デューティ)によって顧客資産への一層の責任が求められている米国FAの世界と、出遅れた資産形成を何としてでも進めたいと思いながらなかなか実情に合った報酬体系への移行が進まない日本のFPの世界。

特に日本は未だにテレビでもインターネットでも「情報は無料」という驚くべき感覚を持っています。

新聞だって購読料かかるし、自分の好きな衛星放送やケーブルテレビの番組を観るのには別途費用が必要です。

観たい映画や作品にはコストを支払う必要があります。

 

無料とは、何故それが無料で手に入れられる情報なのかということを考えることが大切です。

テレビが無料なのはCMなどのスポンサーが番組制作費を視聴者の代わりに支払っているからです。

その代わりに視聴者はスポンサーの意向を反映した情報を得ています。偏向報道と揶揄されることもありますが、情報は本質的に無料ではありません。

無料の情報とは、無料で提供してくれる側の意図が含まれている情報であると理解して、本当に正しい情報とは何かを客観的に捉える能力が求められています。

米国FAは現在、日本のFPのライフプランニングを参考に預かり資産重視から再び顧客の夢の実現に向けて進化の方向性を変えようとしています。

 

また日本のFPは米国FAに倣って、無料相談から有料相談へ切り替え始めているところも増え始めています。金融庁・財務局など縦割り行政によって足並みの揃わない日本の金融が本当の意味で「顧客本位の業務運営」を行えるようになるにはFPだけでなく、相談をする顧客の意識の変化も大切だと私は考えています。

 

参考:米国のフィナンシャル・プランナー
―その現況と新しい動き―
平成 27 年 9 月 18 日 杉田浩治 (日本証券経済研究所)http://www.jsri.or.jp/publish/topics/pdf/1509_01.pdf

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