家電量販店が保険代理店?ヤマダライフ保険が登場

さて家電量販店の本業としての動向について前回は触れてきましたが、ここからは金融業界と家電量販店の関係について見ていきます。

家電量販店の販売の方針は一見すると不思議な販売の仕組みの上に成り立っています。

何故ならメーカーから家電量販店は製品を卸し(購入し)、顧客はどこの店舗で買っても同じメーカーの同じ商品が手に入ります。メーカー保証もどこで加入しても同じです。販売店独自の延長保証を除けば、基本的に誰がどこで買っても同じサービスが受けられます。

それなのに家電製品はどこで買うかによって購入する価格が異なります。

会社が異なれば仕入れ値が異なるのは当然だし、売値が異なるのにも何の違和感もないと考えている人も多いかもしれませんが、私は違和感があります。

同じ○○電機でも駅前のA店と、郊外のB店で同じものを購入しても価格が異なることがあります。更に価格交渉をして更にその差が開くこともあります。

同じ店で同じ商品を購入したのに提示している価格で購入したCさんと価格交渉をしたDさんで値段が異なる仕組みです。

値段交渉なんて手間だと感じる多くの人がインターネット通販で買ってしまう…そんな人たちがかなり潜在的には多いのではないでしょうか。

顧客としては手に入る商品も同じ。サービスも同じ。家電量販店としては価格交渉をされても収益が出せる原価を維持して販売さえすれば価格交渉せずに買ってくれる顧客との差額はまるまる収益となっている面もあります。

 

買うまでのプロセスで、値幅が変わる家電製品はかつての日本の消費者にとってコミュニケーションの手段の一つだったのかもしれません。

しかし昨今はインターネット通販の登場によってそんな甘い状況でもなくなってきたのは前回も触れた通りです。

さてそんな家電量販店で、近年模索が続いている新たなビジネスが保険代理店事業です。

少し前にドコモショップ、マツモトキヨシ、日本調剤薬局、ニトリなどが参入して話題となりましたが、家電量販店も保険代理店としとの新しい間口となりつつあります。

 

保険は同じ保険会社の同じ商品、同じ内容・条件で加入するとしたら一律で同じという特徴があります。

保険会社の社員から加入しても、保険代理店から加入しても、通販で加入しても一律です。これを一物一価と呼びます。

 

一物二価も三価もある家電量販店が保険代理店のFPを紹介する大まかな仕組みはこうです。

家電量販店で買い物中の方に接客時に声をかけて、FPによる家計見直しを提案する。

興味がある顧客を保険募集資格のあるスタッフが引き継ぎ説明をして、顧客と提携保険代理店のFPのスケジュールをマッチングして、保険代理店のFPから案件紹介料を徴収するという仕組みです。

 

家電量販店で何故FPの家計相談を勧めるのかと言えば、家電を買いに来る顧客の中には新生活やライフステージの変化を迎えた方がいらっしゃいます。

デジカメやビデオカメラを購入する方ならお子様が生まれたり、お子様の入学が近い方もいます。

洗濯機や冷蔵庫を購入する方なら家を購入した。家族が増えたり、結婚をしたばかりの人がいる場合もあります。

生命保険の見直しのタイミングはいくつかありますが、その顕在化している節目がライフステージの変化です。

普段から相談をしている懇意のFPや保険募集人がいない場合、また加入中の契約や保険会社・担当者に対して不満や不安を感じている人にとっては保険代理店や家電量販店の保険事業担当者がチェックした基準をクリアしたFP・保険募集人を紹介してもらえるとして一定のスクーリング(選別)が担保されている安心感もあります。

試験運用から本格参入へ

保険相談ナビ(ニュートンフィナンシャル)がヤマダ電機のいくつかの店舗に「家計相談」を切り口に、保険募集資格のあるスタッフを派遣して提携保険代理店のFPと顧客のマッチングを行うサービスを開始してから約1年。

試行錯誤の成果としてこれまでのWebからの保険相談予約など以外に、提携保険代理店のFPへリーズと呼ばれる見込み客提供の仕組みを築いてきました。

これは新たな収益の柱になると踏んでヤマダ電機は子会社のヤマダライフ保険という保険代理店を2018年夏に設立しました。

 

ニュートンフィナンシャルとの提携を段階的にヤマダライフ保険へ切り替えて、原則はご自宅訪問での相談。また希望すればヤマダ電機の一部店舗では家計相談向けのテーブルを用意しておりそこで相談もできるそうです。

相談者の中には転勤が決まっており、新たな生活のための家電製品を買いに来ている人もいます。

全国47都道府県に約700店舗構えるヤマダ電機はこの店舗網を活かして、全国の保険代理店と提携して転居先でも顧客のフォローができると自信を持っています。

ヤマダライフ保険は保険募集の資格を持っていますが、殆どの場合において提携保険代理店のFPが家計相談を担当します。(案件を1件幾らでFPに買ってもらい、かつ手数料を共同募集として分け合う方が育成に時間を割かれないため)

そして提携先のニュートンフィナンシャルではなく、またヤマダ電機本体でもなく子会社を設立しての参入にはコンプライアンス上の様々な問題を避けることに役立ちます。

例えばヤマダ電機の社員やスタッフがもし直接保険募集をしようとすると保険募集資格者を育てたり、指導するために時間もコストも取られてしまいます。

またこれまでのように委託先からのスタッフによって勧誘をしていてトラブルが発生しても、ヤマダ電機側はスタッフへの直接指導ができません。派遣法という法律があるからです。

加えて保険業界には「特別利益の提供の禁止」という鉄の掟があります。家計相談の大きなウエイトを占めるのは日本人の人生で二番目に高い買い物の保険です。

家電製品を買う際の割引や価格交渉と相容れない性質のもので、万が一、家電製品を販売する際に「家計相談」を受ける代わりに値引きをしたと解釈されると実質的に保険を割引したことと判断されかねず上場企業としては金融犯罪を犯したのと同等の扱いを受けます。

これを子会社化を介することで家電量販店と保険代理店という関係性に線引きを持たせ、かつグループ会社ですから委託先よりもスタッフへの指導や教育を間接的とは言え行うことがしやすくなります。派遣法の問題をクリアしようという狙いです。

 

前回の家電量販店の歴史を振り返った際に大店法や大店立地法などの法律の変わる時に大きく業界の勢力図が変わったことに触れました。

保険代理店は銀行・証券・保険という三大金融機関に次ぐ第4の金融業態です。

またその参入障壁は1990年代後半に始まった金融ビッグバンによってかなり低くなっています。

電機メーカーだったソニーは1980年代に生命保険事業に参入し、その後の金融緩和を受けて銀行・損害保険などに参入しました。2010年代前半の経営が苦しい時期にソニーグループ全体を下支えしたのは金融部門でした。

またイトーヨーカドーやセブンイレブンなどの7&iホールディングスはセブン銀行や保険代理店を展開していますし、イオンにもイオン銀行や保険代理店がグループには存在しています。

企業にとって金融は在庫リスクを抱えることなく、究極は人件費とテナント代だけで収益を上げる投資効率の高い事業と言えます。(人材育成などが課題ですが、アウトソーシングしてしまえばこの点は回避できます)

近年は保険代理店も生命保険・損害保険だけでなく、株式や投資信託などの証券会社との提携による金融商品仲介業の資格を持ったり、住宅ローンの借り換えを取り次ぐことも増えており、一つの業態に捉われない柔軟な総合金融機関としての役割を担う会社も登場しています。

かつての護送船団方式で様々な業界が守られてきた時代は終わり、企業同士の生き残りをかけて自社の持っている資産や無形資産を如何に活用するソリューションへ転じられるか。

大手ならではの資本力を活かして登場した新たな保険代理店:ヤマダライフ保険。

まだ700店全てで活動を始めているわけではありませんが、国内最大の保険代理店(FC含む)ほけんの窓口(2017年決算によると609店舗)に一気に追いつく可能性を秘めています。

 

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